過去10年で最も多くの人に誤食されている間違いやすい危険な有毒植物 スイセン

植物
Photograph by Serena De Santis

スイセンとは?

スイセン(水仙、学名:Narcissus spp.)は、ヒガンバナ科スイセン属に分類される多年草の植物です。地中海沿岸を原産とし、日本には古くから観賞用として導入され、現在では庭園や公園、道端などで広く見られます。
日本ではスイセン属に属する植物の総称として、「スイセン」と呼ぶことが多いですが、狭義にはニホンズイセンのことを「スイセン」と呼ぶこともあります。
高さは品種や環境にもよりますが15~50cm程で、冬から春(主に12月〜5月頃)にかけて開花し、白や黄色の花を咲かせます。細長い葉と独特の芳香を持つ花が特徴で、園芸植物として広く親しまれています。
日本では野生化している個体も多く、特に沿岸部や斜面などで群生している様子が見られます。
一方で、スイセンには全草に有毒成分が含まれており、見た目がおいしい野菜や山菜に似ていることから誤食による中毒事故が毎年のように発生しています。

分布・生息環境

スイセンは地中海沿岸地域を原産とし、ヨーロッパ南部から北アフリカにかけて自生しています。日本では観賞用として導入された後、各地に広がりました。
現在では北海道から沖縄まで広く分布しており、特に海岸沿い、道路脇、空き地、庭園や公園などの環境で見られます。
耐寒性があり日本の気候にも適応しているため、管理されていない場所でも自然に増殖することがあります。
このように、人の生活圏に非常に近い場所に生育することが、誤食事故の背景の一つとなっています。

スイセンの毒

スイセンは全草が有毒の植物です。特に球根部分に強い毒性があります。
主な有毒成分は以下の通りです。
  • リコリン(lycorine)
  • ガランタミン(galantamine)
  • タゼチン(tazettine)
これらはアルカロイドと呼ばれる成分で、人体に対して消化器系や神経系に影響を及ぼします。スイセンを誤食した場合に報告されている主な症状は以下の通りです。
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 腹痛
  • 発汗
  • 頭痛
重症例では、けいれんや意識障害が起こることもあり、件数は少ないものの過去には死亡事故も報告されています。また、加熱調理しても毒性は失われないことが確認されているため、加熱調理したとしても中毒症状を引き起こすことが知られています。
日本国内では、スイセンの誤食による食中毒が毎年報告されており、集団発生例も確認されています。

スイセンに似ている山菜

スイセンによる誤食事故の多くは、食用植物との取り違えによって発生しています。特に多いのが以下の植物です。
■ 葉が似ている植物
  • ニラ

スイセン
Photograph by Joseph Aubert

ニラ
Photograph by Noland Martin

■ 球根が似ている植物

  • ノビル
  • たまねぎ

スイセン

ノビル

タマネギ

これらはいずれも形状がスイセンと似ており、特に友人・知人からもらったもの、家庭菜園や野草採取の際に混入しそのまま調理・摂取されるケースが多く報告されています。

見分けるポイント

スイセンとニラなどを見分けるための明確な特徴として、以下が確認されています。
■ におい
  • ニラ・ノビル:特有の強いにおいがある
  • スイセン:においがほとんどない
■ 葉の質感
  • ニラ:やわらかい
  • スイセン:やや硬く厚みがある
また、スイセンは観賞用として植えられていることが多く、人工的に配置されている場合もありますが、野生化した個体で混生している場合には判断が難しい場合もあります。
そのため、厚生労働省では「確実に食用と判断できない植物は採取・摂取しない」ことを強く推奨しています。

過去10年の誤食件数

平成28年~令和7年の10年間に確認されている食中毒発生状況において、スイセンの誤食は事件数と患者数ともに1位となっており、様々な植物の中でも圧倒的な数を示しています。

幸いなことにイヌサフランなどと比べると毒性は低く、死に至る可能性は高くありませんが、それゆえに危機意識が低くなってしまっている可能性があります。

過去には死亡事故も発生しているため、もらったもの含めて食べられる種類の植物であることを自分で見極められない場合は絶対に食べないようにしましょう。

もしも誤食してしまったら?

スイセンを誤って食べてしまった場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります
スイセン中毒は摂取後比較的短時間で症状が現れることが多く、消化器症状を中心に進行し、数十分〜数時間以内に嘔吐・下痢が発生してその後、脱水や体調悪化といった経過が報告されています。
また、自己判断で様子を見ることは危険とされており、特に高齢者や子どもでは重症化のリスクがあります。

まとめ

スイセンは地中海沿岸原産の観賞用植物で、日本では広く栽培・野生化している身近な存在です。
しかし全草に有毒成分(リコリンなど)を含み、特に球根は強い毒性を持っています。ニラやノビルなどの食用植物と見た目が似ているため、誤食事故が毎年発生しており、嘔吐や下痢などの症状を引き起こします。
加熱しても毒性は失われません。見分けるポイントとして「におい」がありますが、完全な識別は難しいため、確実に安全と判断できない植物は採取・摂取しないことが重要です。
誤って食べた場合は速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

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