イヌサフランとは?

イヌサフラン(学名:Colchicum autumnale)は、イヌサフラン科に属する多年草で、以前はユリ科に分類されていました。
ヨーロッパ中南部から北アフリカにかけて自生し、日本では主に観賞用として栽培されており、園芸用に品種改良したものはコルチカムという別名で流通していることも多くあります。
このように園芸用に日本でも全国各地で栽培されている植物ですが、強力な有毒成分が含まれているため非常に危険な側面も持っています。
特徴的なのはその生育サイクルで、春に葉を伸ばした後、夏には地上部が枯れ、秋(9〜10月頃)になると花だけが地上に現れます。
花は淡い紫色が一般的で、アヤメ科のサフランによく似ていること、「サフラン」という名前が含まれることから、香辛料として用いられるサフラン(アヤメ科)と混同されることがありますが、分類上はまったく異なる植物です。
分布・生息環境

イヌサフランはもともとヨーロッパ中南部や北アフリカの湿った草原に群生する植物です。
日本では園芸用として全国各地で栽培されていますが、一部は山菜取りを楽しめるような場所で繁殖している場合があるため、誤食による事故を引き起こすことが問題となっています・
栽培環境としては、土や水がなくても一時的に開花する性質があるものの、開花後に葉を伸ばす段階では土壌や水分が必要とされています。
このように園芸植物として身近な環境に存在することが、後述する誤食事故の一因にもなっています。
イヌサフランの毒

イヌサフランは全草が有毒の植物で葉・花・球根すべてに毒性があり、主な有毒成分はアルカロイドの一種であるコルヒチン(colchicine)です。

コルヒチンの構造図
このコルヒチンは中枢性の知覚麻痺と末梢性血管麻痺の作用があり、痛風の鎮痛薬に用いられる一方で、誤って摂取すると重篤な中毒を引き起こします。
中毒症状として報告されているものは以下の通りです。
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- けいれん
- 呼吸困難
- 知覚異常
重症の場合は死亡することもあります。
コルヒチン、文献において「50%致死量は0.5mg/kg」とする報告があり、少量でも致死的になる可能性があることが指摘されています。
このように、イヌサフランは観賞用として身近でありながら、非常に強い毒性を持つ植物です。
イヌサフランと間違えやすい山菜
イヌサフランによる事故の多くは誤食で、特に山菜取りを楽しんでいる人がギョウジャニンニクと間違えてしまうという事例が頻発しています。
代表的な誤認例は以下の通りです。
葉の誤認
- ギョウジャニンニク

ギョウジャニンニク
球根の誤認
- ジャガイモ
- タマネギ
- ミョウガ
ギョウジャニンニクとの見分け方
見分け方として確認されている方法は、
- ギョウジャニンニクはニンニク臭がある
- イヌサフランはほぼ無臭
といった違いがあります。
また、根元の色にも違いがあり、
- ギョウジャニンニク:赤紫色
- イヌサフラン:緑色
とされています。
ただし、これらの違いを理解していても、混生している環境では見分けが難しいケースがあるため、採取・摂取は極めて危険とされています。
日本で発生した誤食事故
イヌサフランによる中毒事故は、日本国内で複数回発生しており、その多くが山菜との誤認によるものです。厚生労働省および自治体の資料でも、毎年のように注意喚起が行われています。
特に多いのが、ギョウジャニンニクとの誤認です。イヌサフランの若い葉は見た目がよく似ており、採取時に混入することで事故につながっています。
代表的な事例
■ 2026年(北海道)
札幌市は2026年4月21日、自宅の庭に生えていた有毒植物「イヌサフラン」を食べた70歳代女性が死亡したと発表しました。
近くにはギョウジャニンニクが生えており、取り違えた可能性があるとされています。
出典:読売新聞(2026年報道)
(https://www.yomiuri.co.jp/national/20260422-GYT1T00084/)
■ 2024年(北海道)
北海道内において、イヌサフランをギョウジャニンニクと誤認して摂取した事例が報道されています。この事故では、摂取後に体調不良を訴え、死亡者が発生したことが確認されています。
出典:朝日新聞(2024年報道)
(https://www.asahi.com/articles/ASS5K2T7FS5KIIPE00NM.html)
北海道内において、イヌサフランをギョウジャニンニクと誤認して摂取した事例が報道されています。この事故では、摂取後に体調不良を訴え、死亡者が発生したことが確認されています。
出典:朝日新聞(2024年報道)
(https://www.asahi.com/articles/ASS5K2T7FS5KIIPE00NM.html)
■ 過去10年の中毒事例
過去10年の食中毒発生状況を見ると、事件数はスイセンに次いで第2位となっています。驚くべきは死亡者数の割合が圧倒的に高いことです。
毎年のように食中毒が報告されていますが、重大事故につながる危険性が高い毒性を有しているため、特に注意が必要です。
出典:有毒植物による食中毒に注意しましょう|厚生労働省
もしも食べてしまったら?
イヌサフランを誤って食べた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
理由として、コルヒチン中毒は進行性であり、初期は軽い消化器症状でも、その後に重篤化するケースがあるためです。
具体的には、
- 初期:嘔吐・下痢・腹痛
- 進行:呼吸障害・多臓器障害
といった経過をたどることが知られています。
また、家庭での対処や様子見は危険とされており、少量でも重篤化する可能性があるため、早期対応が重要です。
まとめ
イヌサフランはヨーロッパ原産の観賞用植物で、日本でも広く栽培されていますが、全草に強い毒(コルヒチン)を含む危険な植物です。
葉や球根が山菜や野菜と非常によく似ているため、ギョウジャニンニクやジャガイモなどと誤認される事故が多数報告されています。
中毒症状は嘔吐や下痢から始まり、重症化すると死亡に至ることもあります。
少量でも危険であり、確実に食用と判断できない植物は採取・摂取しないことが最も重要です。万が一食べてしまった場合は、速やかに医療機関を受診してください。







コメント