スベスベマンジュウガニとは?
分布と生息地
スベスベマンジュウガニの毒性
スベスベマンジュウガニは体内に毒を持っていますが、ヘビやサソリのように毒を使った攻撃をしてくるわけではありません。
ふぐなどと同じように体内に猛毒を持っているので、食べなければ中毒を起こすことはないので磯遊びで捕まえたとしてもそこまで危険ではありません。一方でもしも食べてしまうと最悪の場合死に至る危険性もある猛毒が含まれています。 それではどのような毒をもっているの見てみましょう。
毒の成分
スベスベマンジュウガニの毒はフグ毒として有名な「テトロドトキシン(TTX)」や麻痺性貝毒(PSP)である「ゴニオトキシン」「サキシトキシン」「ネオサキシトキシン」が確認されています。
テトロドトキシンはフグ毒とも言われる猛毒で青酸カリの850倍ほどの毒性があります。また、サキシトキシンはテトロドトキシンと同程度の毒性がある猛毒です。
生息地や個体によって持っている毒の主成分や量が大きく異なっているため、体内で毒をつくっているのではなく、毒を持った貝などのエサから毒を取り込んでいると考えられています。
神奈川の三浦半島ではテトロドトキシン(フグ毒)が主成分で、沖縄ではサキシトキシンなどが主成分の個体とテトロドトキシンが主成分の個体の両方がいます。徳島では両方の毒を合わせ持っている個体もいるようです。
いずれの毒も熱に強いため加熱料理したとしても無毒化することはできません。
毒のある部位
毒は殻と脚やハサミの筋肉(カニ身)に含まれていますが、特にハサミの付け根の太い部分に毒がたくさん集まっています。
カニは身の危険を感じるとトカゲのしっぽと同じようにハサミを取っておとりにして逃げますが、猛毒入りのおとりを使うことで生存率をあげているのではないかと考えられています。対して調査されたスベスベマンジュウガニの胴体の身には毒が入っていないことが確認されているのでこの考えの後押しになっています。
とはいえ、胴体の身に毒を持っている個体もいるかもしれないため絶対に食べないようにしましょう。
食べた時の中毒症状
スベスベマンジュウガニを食べてしまうと段階的に症状が進んでいきます。
20分後~数時間後に口やくちびる、舌先、指先などが痺れてきます。その他頭痛や腹痛、めまいなどが発生します。
麻痺が徐々に広がってきて思うように体が動かせなくなってきます。その他言語障害や血圧低下、呼吸困難などの症状が現れます。
全身に痺れが広がり体が全く動かせなくなります。周りから見ると意識を失っているように見えますが実は意識ははっきりしているそうです。血圧低下と呼吸困難がさらに進行します。
意識が完全になくなります。また、最悪の場合、呼吸が停止し死に至ります。 スベスベマンジュウガニの持っている毒は地域性がありますが、いずれも麻痺性貝毒なので同じような中毒症状が現れます。
麻痺がおこるメカニズム
フグ毒や麻痺性貝毒は脳からの指令を妨害する働きがあります。例えば「指先を曲げなさい」という指令が脳から出されて初めて指先が曲がりますが、この指令が妨害されると痺れとなってうまく指を動かせなくなります。
この毒の恐ろしいところは、症状が重い場合には無意識に行っている「呼吸しなさい」という脳からの指令も妨害してしまうという点にあります。
致死量
スベスベマンジュウガニに含まれる毒の量は個体差が大きいですが、多い個体だとカニ身1グラムあたり1,000MU(マウスユニット)以上の毒が含まれている個体が確認されています。
スベスベマンジュウガニの小ささを考慮しても1匹食べてしまうだけで数千~数万MUを摂取する可能性があります。 ヒトの致死量は、体重60kgの人で約3,000~20,000MU(マウスユニット)とされているため、1匹食べてしまうだけで死に至る可能性があります。
ちなみに成分単体としては、テトロドトキシンもサキシトキシンも1~2mg程度を口から摂取してしまうと命に関わると考えられています。またLD50で示すと以下の通りです。
- マウス経口 LD50 0.01 mg/kg
-
マウス経口 LD50 0.01 mg/kg
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マウス皮下 LD50 0.0085 mg/kg
中毒症状が出てしまったら?
現在スベスベマンジュウガニの持っている主な毒(テトロドトキシン、サキシトキシン)に対する有効な解毒法や治療方法は確立されていないため、体内で無毒化されて体の外に排出されるまでひたすら待つしかありません。
死に至る理由は「呼吸しなさい」という脳からの指令が毒により遮られてしまい呼吸が止まってしまうことが原因のため、呼吸が止まった瞬間から毒が排出されるまで人工呼吸し続ければ理論上は助かります。ただ、止まった瞬間から対応すること自体非常に難しくあまり現実的ではないのが現状です。
症状が出たと思ったらすぐに対応処置をしてもらうために病院に行きましょう。
まとめ
スベスベマンジュウガニはかわいい名前をしていますが、1匹でも食べてしまうと最悪の場合死に至る猛毒を体内に蓄えている猛毒ガニです。
日本にも千葉県~沖縄県の太平洋岸に生息しており、磯遊びなどをしていると比較的簡単に見つけることができるのでむやみに取ったカニを食べないようにしましょう。
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