日本に上陸し始めている死の危険があるアメリカ由来の猛毒グモ クロゴケグモ

地上の生き物

クロゴケグモとは?

クロゴケグモ(黒後家蜘蛛、学名:Latrodectus mactans)は、ヒメグモ科ゴケグモ属に分類される有毒のクモで、英名では「ブラックウィドウ(Black Widow Spider)」と呼ばれています。
北米を原産とする代表的なゴケグモの一種として知られています。「後家蜘蛛(ごけぐも)」という名前は、交接後にメスがオスを捕食する例があることに由来していますが、この行動は常に起こるわけではなく、すべての交接で確認されるものではありません。
クロゴケグモは小型のクモで、メスの体長は約8~10mm、オスは約3~4mmと大きな雌雄差があります。メスは黒く光沢のある体を持ち、腹部下面には赤色または赤橙色の「砂時計型」の模様が見られることが特徴です。一方、オスは小型で褐色を帯びることが多く、体色や模様もメスとは異なります。

クロゴケグモの網

また、クロゴケグモは円形のクモの巣ではなく、不規則に糸を張り巡らせた網を作ります。巣には粘着性のある糸が多く、地表近くや物陰に設置されることが一般的です。

獲物が糸に触れると絡め取られ、その後糸で獲物を巻いてから毒牙で咬んで毒を注入します。毒が効くまで10分ほどかかるため、それまで噛み続けてから、消化液を注入して体液を吸収します。
多くの場合は昆虫を捕食しますが、ワラジムシやヤスデなどを捕食します。
繁殖能力が比較的高く、国立環境研究所によると、メスは一度受け取った精子を生涯にわたって利用して産卵できることが確認されています。また、1つの卵嚢には100~400個の卵が入るとされ、卵嚢は西洋ナシ形をしています。さらに、メスは子グモが孵化するまで卵嚢を保護する習性があります。
人が咬まれる事故の多くは、薪や資材を持ち上げた際や、巣のある場所に不用意に手を入れた際など、偶発的な接触による防御行動として発生しています。

分布・生息環境

クロゴケグモは南北アメリカ大陸を中心に分布し、ハワイ諸島にも定着しています。
人家周辺から自然環境まで幅広い場所で生息しており、日当たりの良い開放的な場所よりも、次のような暗く乾燥した隠れ場所を好むことが知られています。
  • 薪置き場
  • 石垣やブロック塀の隙間
  • 倉庫や物置
  • ガレージ
  • 農機具や資材の下
  • 屋外トイレや建物の基礎部分
これらの場所では不規則網を張り、獲物を待ち伏せします。
また、昼間は巣の奥に隠れていることが多く、夜間になると活動が活発になります。昼行性ではなく、主として夜間に採餌を行うクモです。

日本での定着状況

引用:https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/70140.html

クロゴケグモは、日本では外来種として扱われており、国立環境研究所の侵入生物データベースによると、国内移入分布として確認されているのは山口県で、米軍岩国基地で繁殖がたびたび報告されています。
また、2026年5月に広島県は福山港国際コンテナターミナルで県内で初めて見つかったと発表しています。
同属のセアカゴケグモとは異なり、全国各地での移入や定着は報告されていませんが、引き続き注意が必要です。
2015年10月からはゴケグモ属(Latrodectus属)全種が特定外来生物に指定されました。そのため、クロゴケグモについても、生きた個体の飼育・運搬・譲渡・輸入などは外来生物法によって規制されています。

クロゴケグモの毒

クロゴケグモの毒に含まれる主な成分はα-ラトロトキシン(α-latrotoxin)で、神経末端に作用し、神経伝達物質を大量に放出させることが知られています。
その他にも多数の小さなポリペプチド(有毒成分)やアデノシン、グアノシン、イノシンなどの成分が含まれていることが分かっています。
もしも噛まれてしまうと、全身にわたる痛み、筋肉の痙攣、発汗、不安、幻覚などの症状が現れたり、心拍数の増大・血圧上昇、呼吸困難、麻痺を生じたりします。
健康な成人が死に至る確率は低いとされていますが、呼吸系の筋肉の麻痺することで死に至る場合もあります。1950年から1959年にかけて、アメリカでは63人の死者が出ていると発表されているため決して侮っていはいけません。
症状は咬まれた直後よりも、その後数時間かけて強くなる場合があります。また、小児や高齢者、基礎疾患のある人では重症化する可能性があることが報告されています。
過去には海外で死亡例も報告されていますが、現在では医療体制の整備や抗毒素の使用などにより、死亡率は大きく低下しています。

もしも噛まれてしまったら?

クロゴケグモに咬まれた疑いがある場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
応急処置として一般的には、以下のような対応が求められます。
  • 傷口を流水で洗浄する
  • 患部を安静に保つ
  • 症状が悪化しないか観察する
  • できるだけ早く医療機関を受診する
また、可能であればクモの写真を撮影したり、安全に確保できる場合は種類が分かる資料として持参したりすると、診断の参考になる場合があります。ただし、再び咬まれる危険があるため、無理な捕獲はNGです。
自己判断で様子を見ることは避け、特に全身症状や激しい痛みがある場合は早急に医療機関を受診することが重要です。

まとめ

クロゴケグモ(Latrodectus mactans)は北米原産の有毒クモで、「ブラックウィドウ」の名で広く知られています。

メスは体長8~10mmほどの小型種ですが、α-ラトロトキシンという神経毒を持ち、咬まれると強い痛みや筋肉痛、発汗などの症状を引き起こすことがあります。

一方で、積極的に人を襲う性質は確認されておらず、多くの事故は偶発的な接触によるものです。日本では山口県で確認記録があり、2015年からはゴケグモ属全種が特定外来生物に指定されています。

ただし、セアカゴケグモのように全国へ広く定着していることはないと考えられており一部地域にとどまっています。万が一咬まれた場合は自己判断せず、速やかに医療機関を受診することが大切です。

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