市場で買うことができる危険すぎる猛毒キノコ シャグマアミガサタケ

地面に生えているシャグマアミガサタケ きのこ
Photograph by nitsuga74

シャグマアミガサタケとは?

複数のシャグマアミガサタケ
カサの部分が脳みそのような見た目をしている猛毒きのこです。大きさは5~8cm程度ですが大きいものだと10cmを超えることもあります。
猛毒ですがきちんと毒抜きをすることで美味しく食べることもできるため、フィンランドなど北欧では食べる文化が根付いており、市場や店頭でも販売されたり缶詰も販売されています。
シャグマアミガサタケの仲間にヒグマアミガサタケやオオカサノボリリュウもありますが、カサのひだがあまりなかったり、発生する場所の違いなどから見分けることは比較的簡単です。

分布と生息地

ヨーロッパ地域にしかないと思った人もあるかもしれませんが、実はシャグマアミガサタケは日本にも北海道や本州各地に分布しています!
見つかることは少ないですが、青森県、石川県、山梨県、長野県、福島県、千葉県、栃木県、大阪府、兵庫県など幅広い地域で確認されています。
主に春ごろに見ることができ、スギやヒノキなどの針葉樹下の地上に現れます。数は少ないようなので出会う確率は高くありませんが、地面に生えている脳みそのような形をしたきのこには近づかないようにしましょう。

シャグマアミガサタケの毒性

机の上にある毒瓶

毒の成分

ギロミトリンの構造式

毒成分ギロミトリンの構造

シャグマアミガサタケに含まれる有毒成分に「ギロミトリン(Gyromitrin)」があります。ギロミトリンは水と反応(加水分解)して「モノメチルヒドラジン」という超猛毒になり、これが人体にとって超猛毒なため様々な中毒症状を引き起こします。

ちなみに、シャグマアミガサタケ100gあたり120~160mg程度のギロミトリンが含まれています。

モノメチルヒドラジンは、人工衛星などに搭載されるロケットエンジンや軍事用のミサイルの燃料として使われるヒドラジンの一種で、引火性、発火性、発がん性を持っている猛毒の物質です。

ロケットエンジンの燃料の素が入っているきのことも言える不思議なきのこです。

食べた/吸った時の中毒症状

生で食べてしまうと体内の水分とギロミトリンが反応してモノメチルヒドラジンになるので、生で食べてしまうと食後7~10時間ほどで、吐き気、嘔吐、激しい下痢と腹痛、痙攣などを起こし、重症な場合には肝障害を引き起こします。

肝障害が起きると黄疸(肌や目が黄色くなる)、発熱、めまい、血圧降下とともに、脳浮腫(脳が一時的に大きくなる)による意識障害や昏睡を引き起こします。また、腸、腹膜、腎臓、胃、十二指腸などの内臓から出血を起こす可能性があり、最悪の場合は2~4日で死に至ることがあります。
 

さらに恐ろしいことに、シャグマアミガサタケを茹でた時にでる湯気にモノメチルヒドラジンが含まれているため、食べなくても湯気を吸っただけでも中毒になります。これはモノメチルヒドラジンの沸点は87.5℃のため熱湯に入れると気化してしまうためです。

そのため、十分に換気ができる場所や屋外などで調理しないと非常に危険です。

致死量

モノメチルヒドラジンの半致死量(LD50)は1.24mg/kgです。体重1kgの動物10匹それぞれに1.24mgのモノメチルヒドラジンを投与すると、5匹が死んでしまうという意味です。

ヒトに対する致死量ははっきりはわかりませんが、体重60kgのヒトの致死量は74.4mg(1.24mg×60kg)程度と推測することができます。シャグマアミガサタケには100gあたり120~160mgのギロミトリンが入っていることを考えると、非常に強力で恐ろしい毒をもっていることがわかります。
用語解説
LD50(50%致死量、半致死量):Lethal Dose 50
ある一定の条件で動物にある物質(成分)を投与した場合に、動物の半数を死亡させる物質(成分)の量を示しています。LD50を使うことでその物質(成分)の毒性を比較することができます。一般的にはLD50 1500mg/kg以上の物質(成分)が安全とみなされています。

中毒症状が出てしまったら?

書類の上に置かれた聴診器

誤って食べたり、吸ってしまったら個人的に対処することはできないため速やかに病院に向かいましょう。

モノメチルヒドラジンと結合し赤血球をつくるのを助けてくれるピリドキシン」をゆっくりと投与する方法が有効とされています。ただし、肝臓にダメージが入ってしまった場合、効果はほとんどなく別の対処療法を行う必要があり決して油断することはできません。

美味しい食べ方

市場で売られているシャグマアミガサタケ
北欧などで行われている調理方法をご紹介していきます。正しく処理すれば無毒化することもできますが、周囲も巻き込む危険性があるため調理する場合は周りにも十分に配慮したうえで自己責任で行いましょう。
 

シャグマアミガサタケはどこで買える?

フィンランドではKorvasieniという名前で親しまれている食材のようで毒性と調理方法をきちんと示すことを条件に販売が許可されています。

もしフィンランドに行った際には店頭や市場で普通に買えます。よくわからない食材を買うのはとっても注意が必要なので気を付けましょう。

缶詰でも売られているので個人輸入して買っている猛者もいます、商品代よりも輸送費の方が高かったようです。また、缶詰は煮沸処理(無毒化)されているものと、処理されていないもの(有毒)があるので注意が必要です。

毒抜き調理方法①生きのこ

茹でることで無毒化することができますが、上述したように沸騰して出てくる湯気に猛毒が含まれているため屋外で行うのが望ましいです。
 
  1. 大量の水(きのこ1:水3以上)で5分以上ゆでる
  2. ゆで汁を捨てて大量の水で煮汁を十分に洗い落とす
  3. もう一度5分以上ゆでる
  4. 2と同じ
  5. 水気を切ったら完了(10分間の煮沸で99~100%の毒が分解するとされています)

※シャグマアミガサタケの調理方法のため、他のきのこにこの方法は有効でない可能性があります。

毒抜き調理方法②乾燥

生シャグマアミガサタケをパリパリになるまで乾燥させることで90%程度の毒を分解することができます。

  1. 日陰で10日ほどかけてパリパリになるまで乾燥させる
  2. きのこ100gに対して水2リットルに柔らかくなるまで浸す
  3. 生きのこと同じ方法で調理する

一度乾燥させた方が生よりも安全性が高いようです。

食べ方と味は?

フィンランド料理ではオムレツに入れたりやバターソテーにしたり、肉料理に使うベシャメルソースに使ったりしています。

クセがなく独特な香りもないが旨みが強いので、単体で食べるよりも煮物や香りのよいものと合わせると相乗効果が期待できるよう味の用です。

シイタケの独特な香りが苦手な人も食べられるような感じなんだとか。

まとめ

シャグマアミガサタケは日本の北海道や本州各地に生息している猛毒きのこです。

毒の成分はジェットエンジンの燃料にもなる引火性、発がん性もある猛毒で、最悪の場合には命を落とす可能性もあります。

煮沸することで美味しく食べられますが、煮沸時の湯気に猛毒が含まれるので注意する必要があります。

春先に脳みそのような形をしたきのこを見ても近づかないようにしましょう。

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