日本の本州にも徐々に近づいている世界最強の猛毒ガニ ウモレオウギガニ

接写されたウモレオウギガニ 水中の生き物
引用:https://www.nat.museum.ibk.ed.jp/exhibits/special/1558

ウモレオウギガニとは?

真上から見たウモレオウギガニ
オウギガニ科に属するカニでスベスベマンジュウガニとツブヒラオウギガニと同じく日本に生息する猛毒ガニです。
甲羅の大きさは8~9cm程度にもなるため、他の2種よりも食べてみたくなるサイズ感をしています。
個体差もありますが体色は褐色で灰色の斑点模様が全身に入ります。また、ハサミの先が黒くなっているという特徴がありますが、何というカニか判断できない場合は食べてはいけません。

分布

日本には主に南西諸島に分布していますが、南西諸島以外に小笠原諸島や八丈島、伊豆大島でも分布が確認されています。
さらに2016年には和歌山県のすさみ町の沖合約300メートルほどでイセエビ漁の網にウモレオウギガニが引っかかっているのが発見されています。そのため、南西諸島や伊豆諸島以南の島以外にも本州の近くにいる可能性もあります。
サンゴ礁や岩礁のある浅い海に生息しているので、網ですくえるくらいの距離で見つかることもあり、誤って食べないように注意しましょう。

毒性

病室で吊り下げられている点滴
全身に麻痺性貝毒のサキシトキシンや、フグ毒のテトロドトキシンといった超猛毒が含まれています。体内に猛毒が含まれているだけなので、ハサミで挟んだ時に毒を注入したりするわけではないので、触るだけで中毒を起こすようなことはありません。
ただし、食べてしまうと中毒症状が起きてしまうので絶対に食べてはいけません。
また、どちらの毒も300℃程度に熱しても分解されないため、調理をしても絶対に食べてはいけません。

食べた時の中毒症状

テトロドトキシンもサキシトキシンも食べてしまうと似た症状が現れ、段階的に進行していきます。この症状は脳からの指令を妨げてしまう効果があり、摂取量が多いと無意識で行っている呼吸などの指令も止まってしまうためです。
第1段階
20分後~数時間後に口やくちびる、舌先、指先などが痺れてきます。その他頭痛や腹痛、めまいなどが発生します。
第2段階
麻痺が徐々に広がってきて思うように体が動かせなくなってきます。その他言語障害や血圧低下、呼吸困難などの症状が現れます。
第3段階
全身に痺れが広がり体が全く動かせなくなります。周りから見ると意識を失っているように見えますが実は意識ははっきりしているそうです。血圧低下と呼吸困難がさらに進行します。
第4段階
意識が完全になくなります。また、最悪の場合、呼吸が停止し死に至ります。 スベスベマンジュウガニの持っている毒は地域性がありますが、いずれも麻痺性貝毒なので同じような中毒症状が現れます。

致死量

含まれる毒の量は有毒ガニの中でも最多と言われており、脚を1本食べただけでも死に至ると言われるほどです。
テトロドトキシンもサキシトキシンもどちらも1~2mg程度摂取してしまうと命に関わると言われているため、個体差はありますが脚1本で数mg以上もの毒が含まれている可能性があります。

ちなみに、麻痺性貝毒やフグ毒の毒性の強さはマウスユニット(MU)という単位で表すこともでき、ヒトの致死量は3,000~20,000マウスユニットと言われています。

用語解説
MU(マウスユニット):Mouse Unit
体重20グラムのマウスに腹腔内投与(お腹に直接注射器で投与する方法)を行い、麻痺性貝毒は15分、フグ毒は30分、下痢性貝毒は24時間で死亡する物質(成分)の量を示しています。

サキシトキシン

  • マウス経口 LD50 0.01 mg/kg
サキシトキシンの構造図

サキシトキシンの構造図

テトロドトキシン

  • マウス経口 LD50 0.01 mg/kg
  • マウス皮下 LD50 0.0085 mg/kg
テトロドトキシンの構造図

テトロドトキシンの構造図

過去に会った事故事例

蟹の半身が入った味噌汁

過去には日本でも奄美大島で取ったウモレオウギガニをお味噌汁に入れて家族5人でカニ身を食べたり、お味噌汁を飲んだりしたところ2人が命を落としてしまい、食べ残しを食べた豚1匹と吐しゃ物をついばんだ鶏6羽が死んでしまったという事故が起きています。
また、1995年ハワイでもキャンプを楽しんでいた2人組が釣ったウモレオウギガニを調理して食べてしまったことで、1人はこの世を去ってしまったという事故が起きてしまっています。
助かった一人はスープを少し飲んだだけだったため助かったものの、それでも吐き気や倦怠感などの症状が出てしまったようです。一方、症状の重かったもう一人はスープだけでなくカニ身も食べてしまったことでより重篤な症状を引き起こしたとされています。

まとめ

近年本州近くの沿岸部でも確認され始めているウモレオウギガニですが、有毒ガニの中でも体が大きく毒の量も多い最強の猛毒ガニと言われています。
持っている毒はテトロドトキシンやサキシトキシンといった超猛毒で調理しても分解されないため、脚1本食べただけで死に至る危険性があります。
食べなければ毒による危害ははありませんが、過去には死亡事例も国内外で起きている危険なカニのため絶対に食べないようにしましょう。

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