スナバコノキ(サルノトウナス)とは?
スナバコノキはトウダイグサ科フラ属に属する高さ50mほどにまで成長する高木で、葉は緑色のハート型、花は200個ほど密集した深い紅色の面白い形状をしています。果実は3~5cmの小さいカボチャのような形をしています。
この木はあらゆる攻撃方法を備えていますが、まず目につくのは幹全体を覆うように付いている長さ2.5cmほどの大量のトゲです。
トゲを持つ植物は世にも恐ろしいマンチニールというギネス世界記録にも認定された恐ろしい植物があります。この植物ほどではありませんが、スナバコノキにも毒があるので注意する必要があります。
その他にも身近な植物ではサボテンやバラ、柑橘系など数多く知られていますが、ここまで大きく頑丈なトゲが幹をびっしり覆うような植物は他に例が見られないほどです。
スナバコノキ(砂箱の木)の由来は、18世紀初頭に羽ペンで文字を書いた後に砂をかけて素早く乾かしていたのですが、その砂を入れるためにこの植物の果実が利用されていたことから呼ばれ始めたと言われています。英名もSandbox treeです。
日本では別名サルノトウナスとも呼ばれていますが、スナバコノキがよく見られる地域では「サルの登れない木」「毒の木」そして「ダイナマイトツリー」などと呼ばれることもあります。
ダイナマイトツリーと呼ばれる理由
なぜこの植物がダイナマイトツリーという異名を持っているかというと、名前の通り爆発を起こすためです。植物なのに爆発するの?大した爆発じゃないでしょ!などと思うかもしれませんがそんなことは全くなく、もし人に当たってしまうと命に関わるほどの大爆発を見せます。
果実が熟した後に乾燥が始まると徐々に縮み始めます。カボチャのような形をしているため、凸の部分と凹んだ部分がありますが、乾燥が進むにつれて徐々に出っ張った部分と凹んだ部分の差が大きくなっていきます。
差が大きくなるにつれて張力が大きくなり、気温が高く乾燥しているという条件が揃うと突然大きな音を立てて大爆発を起こし種子をばらまきます。
爆発によって飛び出した種子は、なんと時速240km(秒速70m)以上の速度で飛んでいきます。最速300km/hになる新幹線には及ばないものの、日本最速のジェットコースターである富士急ハイランドにあった「ド・ドドンパ」の時速180kmよりも速く飛ぶことになります。
ちなみに、種子の形は遠くまで飛ぶように最適化されているため分布を広く広げるのに役立っています。
分布・原産地
熱帯アメリカ原産の植物ですが、海を渡り分布を広げていて、アフリカのガンビア、ギニア、ベナン、中央アフリカ共和国に帰化するほど広がっています。
また、北アメリカのフロリダ州にも帰化していて、他にも西インド諸島や東南アジア地域でも確認されています。
スナバコノキの毒
スナバコノキの乳白色の樹液や種子には「フラトキシン(huratoxin)」という有毒成分が含まれています。
この有毒成分は魚に対して24時間後の半致死濃度(LC50)が0.0024µMと非常に強い毒性を示すため、カリブ族はこの毒を使った毒矢などをつくり魚を取るための狩猟道具として使用していました。
フラトキシンはスナバコノキと同じトウダイグサ科に属する世界最恐の植物の一種「マンチニール」にも含まれていることが分かっています。
マンチニールほど凶悪な有毒成分は含まれておらず、覆い尽くすトゲや爆発する果実が人に与える影響は大きくないため、一風変わったおもしろい植物として見てあげてください。
まとめ
スナバコノキは樹高50mにもなる高木で、南アメリカ原産ですがアフリカや西インド、東南アジアなど熱帯/亜熱帯地域を中心に幅広く分布しています。
ダイナマイトツリーの異名を持ちますが、その理由は条件が揃うと果実が大きな音を立てて爆発し種子を周囲にばら撒くことが由来となっています。種子が飛び出す速さはなんと時速240kmにもなります。
遠目では普通の樹木に見えますが、近くで見ると樹木の表面には長さ2.5cmにもなる大きなトゲに覆われています。その出立ちからサルの登れない木とも呼ばれています。
さらに種子や樹液には魚に対して特に強い毒性を示す有毒成分が含まれているため、昔から毒矢を使った魚の狩猟に使われてきました。一度は見てみたい植物ですね。
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