日本で最も危険な魚の一種!?天然の地雷と化す毒魚 オニダルマオコゼ

Photograph by Linie29 水中の生き物
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オニダルマオコゼとは?

オニダルマオコゼ
オニダルマオコゼはカサゴ目オニオコゼ科に属する魚の一種で、背びれのトゲには人の命に関わるような猛毒があり、日本にも生息している超危険な魚です。実際に日本でも数多くの事故が発生していて、中には死亡事故も発生しているので、どのような生き物なのか詳しく確認していきましょう。
オニダルマオコゼは体長40cm程の大きさになり、ずんぐりとした体形をしているため重さは2kgを超える個体もいる大型種です。
肉食性で小魚や甲殻類を狙って食べますが、岩の陰に隠れてじっと待って獲物が目の前に現れるまで全く動かないという特徴があります。あまりにも動かないため体には苔が生えたり、浅瀬にいるオニダルマオコゼを捕まえても死んでると勘違いするほどなので驚きです。
このように性格は攻撃的ではなく積極的に人を攻撃するようなことはありません。そのため、毒を持っていても問題ないと思うかもしれませんが、全く動かない性格と擬態能力の高さ、鋭い背びれと強力な毒という特徴から人間にとってものすごく危険な魚として認知されることになりました。
ちなみに、定期的に古い表皮が剥がれ落ちる脱皮を行う面白い生態をしています。海藻が体表につきすぎてしまったときの対処方法として身につけたのか…水族館などではフィルターを詰まらせたりするので脱皮直後は大変なんだそうです。

天然の地雷に注意

擬態の名人「オニダルマオコゼ」

Photograph by Christian Berg

危険だと言われる要因の一つにオニダルマオコゼは擬態の名人ということがあります。
オニダルマオコゼは全身がボコボコしたコブ状の突起で覆われていて、岩のゴツゴツ感によく似ている形をしています。形だけでなく体色は黒、褐色、黄色など様々で岩やサンゴなど海の底にある様々なものに紛れることがしています。
砂地のオニダルマオコゼ

Photograph by Valentin Moser

さらに擬態するだけでなく砂に体の大部分を埋めた状態で紛れ込むこともあるので、微動だにしないことと合わせてベテランのダイバーも気付けないほどの擬態能力を持っています。

鋭い背びれには強力な毒があるのでダイビングやシュノーケリングをしているときに誤って背びれに触ってしまったり、踏みつけてしまうことで事故が起きてしまいます。
海底にいるのであれば関係ないと思うかもしれませんが、海岸や干潟、海水浴場などの場所でも危険性があります。
実はオニダルマオコゼは5~10mほどの浅い海に住むことが多く、中には数十cm程度と海水浴が楽しめるくらいの浅瀬にいる場合もあります。
背びれは非常に鋭いのでビーチサンダルやダイビングで履くマリンブーツなどを貫通してしまい足に刺さってしまう可能性もあります。
優れた擬態能力と鋭い背びれに持つ毒のコンビネーションで天然の地雷と化す危険な魚なのです。

分布・生息域

オニダルマオコゼはインド洋から太平洋西部の熱帯地域を中心に分布しています。ちなみに、ハワイには生息していません。
日本では八丈島、小笠原諸島、屋久島、吐噶喇列島、琉球列島などの島々で主に確認されています。本州でも三重県熊野灘で水揚げされたことがあります。
深さ数十cm~10mほどのサンゴ礁や岩場の陰に潜んだり、砂地に潜ってじっと動かずにとどまっています。
本州の沿岸では出会う可能性はほぼないため心配する必要はありませんが、沖縄など暖かい地域に海水浴やシュノーケリングするときには注意しましょう。

オニダルマオコゼの毒

オニダルマオコゼ
オニダルマオコゼは背びれに13本、尻びれに3本、腹びれに1本毒腺につながったトゲを持っており、この毒腺には複数のタンパク質性の有毒成分が含まれています。
多くの毒ヘビと同じようにトゲが刺さると自動で毒が注入される仕組みになっているため、オニダルマオコゼが死んでしまった後でも刺さると毒が注入されるため非常に危険です。
この毒の中にはストナストキシンという非常に強力な神経毒が含まれており、半致死量は0.2~0.8mg/kgとされています。これは青酸カリの10倍以上もの強さを示しています。
オニダルマオコゼ1匹が持っている毒の量は、なんと成人男性3~4人ほどの致死量に匹敵するほどとも言われています。

ストナストキシンの構造図 © PDBj cc-by PDBID:4WVM

もしも刺されてしまうと、激しい痛み、腫れ、知覚麻痺、痙攣などの症状が現れて水泡を生じます。さらに症状が重くなると発熱、嘔吐、下痢、呼吸困難などの症状が発症し最悪の場合は心肺機能不全などにより死に至る危険性があります。
さらに、腫れが長時間続くと筋肉に酸素が十分に行きわたらずに壊死を起こす危険性もあるため放置することは非常に危険です。
また、刺された直後から激痛が現れるため、水中で刺されてしまうとパニックに陥るなど冷静な対応ができずに水難事故の原因になることもあります。生息域では注意喚起がされていますが、一人で行動せず刺されても冷静に対応することが重要です。

刺された時の対処法

手洗い
もしもトゲが刺さってしまっていたらまずは除去しましょう。トゲは太く刺さったときに折れて体に残ることはないので、トゲが残る可能性は低いです。
傷口を洗浄してから43℃~45℃程度の熱めのお湯に30~90分程度つけたりしておくことで痛みを和らげることが期待できます。これはオニダルマオコゼが持っている毒がタンパク質性であり熱に弱いためです。
症状が重い場合にはすぐに病院に行き、対症療法を行うとともに傷口から雑菌やウイルスが入ることによる感染症等の予防を行いましょう。

オニダルマオコゼは実は高級魚?

オニダルマオコゼ
取り扱い危険な魚ですが、肉はしっかりした歯ごたえが味わえる上質な白身で非常においしいと評価されています。食べ方は様々で刺身や天ぷら、から揚げ、お吸い物、鍋などどのような食べ方でもおいしく食べることが出来ます。
非常においしい魚ではありますが、分厚い皮に覆われているため身はあまり多くないこと、非常に強力な毒を持っており調理するのにリスクがあることなどから、時期によってはフグを超えるほど高値で取引される高級魚の一種です。

まとめ

オニダルマオコゼは日本に生息する魚の中でもトップクラスに危険な魚です。岩やサンゴ礁に擬態したり、砂地に潜って身を潜めるため、意図せず踏んだり触ったりしてしまい背びれなどにあるトゲが刺さることがあります。
このトゲが刺さると毒が自動で注入され、激しい痛みや水泡、発熱、呼吸困難などの症状が現れ、水難事故の原因になったり、適切な治療が出来ないと毒が原因で死に至る可能性があります。
危険な魚である一方で、身は美味なため高値で取引される高級魚として扱われています。から揚げや刺身、てんぷら、鍋など様々な方法で食べられています。

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