食品衛生法で販売が禁止されている肝臓を食べてはいけない魚 イシナギ

水槽にいるイシナギ 水中の生き物
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イシナギとは?

海遊館HPに掲載されているオオクチイシナギ

引用:海遊館(https://www.kaiyukan.com/area/exhibition/)

イシナギは漢字で「石投」と書く、スズキ目スズキ科イシナギ属の海水魚です。体長は最大1.8m、重さ114kgというものすごい大きさになるので、大物を狙う釣り師の間では人気の対象魚になっています。

イシナギ属には「コクチイシナギ」「オオクチイシナギ」の2種が分類されていますが、日本でイシナギと言うと普通は日本各地に生息しているオオクチイシナギのことを言います。

様々な地方名がありますが、中には「ウリボウ(静岡県伊豆網代)」「カラス(山口県下関市)」など面白い名前で呼ばれることもあります。また、モロコとも呼ばれますが、ハタ科のクエもモロコと呼ばれることがあるので、混同されてしまうこともしばしばあります。

イシナギはおいしく食べられている魚ではありますが、体の一部に毒をたっぷり蓄えているので、もしもクエと間違ってしまうと恐ろしいことが起きてしまうので注意しましょう。

分布

オオクチイシナギは北海道周辺の生息数が多いため、北海道のすべての沿岸で見ることが出来ます。北海道~屋久島にかけて幅広く分布しているので、北海道に限らず様々な地域に生息しています。

普段は水深400~600mの岩礁などに身を潜めていますが、5~6月の産卵期には水深150mほどまで上がってくるので釣りをする人はこの時期を狙うようです。

コクチイシナギは北太平洋に幅広く生息していて日本の近くにも分布していますが、日本で釣りあげられるイシナギのほとんどはオオクチイシナギとされています。

イシナギの食べ方

イシナギの刺身

イシナギの刺身
Photograph by __U___

イシナギはあまり市場には流通していませんが、一部の地域では幻の魚と言われていて、高級魚として取り扱われることもあるおいしい魚です。

時期にもよりますが、脂ののった綺麗な白身で、主な食べ方としては鍋、煮つけ、しゃぶしゃぶ、刺身、ムニエル、フライなど幅広い食べ方で楽しまれています。

ただし、肝臓には毒が含まれているので肝は食べないようにして、身だけを食べるようにしましょう。

毒性

泳いでいるイシナギ

Photograph by donalddavesne

イシナギの肝臓には超高濃度のビタミンAが含まれています。ビタミンAは体に必要な栄養素なので摂取しなさ過ぎると体に異常が現れてしまいますが、一方で摂取しすぎてしまうと体に害を与える成分でもあります。

厚生労働省の1日あたりの摂取上限を示していて、年齢や状況にもよりますが男性は最大でも2,700μgRAE、女性は2,800μgとされています。これを超える量のビタミンAを長期的に摂取してしまうことでも過剰症の症状が現れてしまいますが、1回の食事で約30万μgRAEを摂取してしまうとすぐに中毒症状が現れることになります。

ビタミンAを豊富に含んでいる人参で100gあたり730μgRAE程度、豚レバー(生)が100gあたり13,000μgRAE、鶏レバー(生)が100gあたり14,000μgRAEとされています。対してイシナギのレバーには100gあたり300万~600万μgRAEものビタミンAが含まれているので、5~10g程(ウィンナー1/2本くらい)食べてしまうと中毒症状が現れる可能性があります。

ちなみに、イシナギ以外にホッキョクグマの肝臓にも高濃度のビタミンAが含まれています。詳しくは以下の記事で紹介しています。

実は毒を持っていて食べてしまうと危険な地上最大の肉食動物 ホッキョクグマ
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中毒症状

いらすとや_食中毒

とてつもなく激しい頭痛に襲われます

もしもたくさん食べてしまうと摂取して30分~12時間後に今まで経験したことのないような激しい頭痛が現れ、さらに嘔吐や発熱などの症状が現れる場合もあります。その後これらの症状は短期間で回復することが多いですが、摂取しすぎると頭痛が長期間続く場合もあります。また、1~6日後に顔や頭皮の皮膚がぽろぽろとはがれてしまう落屑(らくせつ)の症状が現れます。

さらに症状が重い場合には、その症状が全身に広がり、1か月ほどで全身の皮膚がはがれてしまいます。落屑の症状自体には自覚がないなど、痛みなどは伴わないことがほとんどですが、中には水泡を伴うこともあるので注意が必要です。

また、回復には20~30日程かかってしまうため、日常生活にも長期間影響を与えることになります。

2006年~2015年の10年間で3件、患者数は26人にもなっています。肝臓は販売が法律で禁止されているので気を付けないといけないのは釣りをする人だけなので、釣りをしない人はそこまで心配する必要はありません。

ただし、釣り人から「モロコ」をもらったらイシナギなのかクエなのか確認して肝が食べられるかきちんと判断するようにしましょう。

食品衛生法で販売が禁止されてる

イシナギの肝臓は1960年に食品衛生法で食用禁止措置が取られていて、販売が禁止されているので現在はイシナギの肝臓を買ってしまう心配はありません。

イシナギ自体の販売は許可されているので、肝臓を取り除けば販売はしてもいいとされています。そのため、イシナギの身を食べたい場合は釣る必要はなくスーパーなどで買うことができます。

ちなみに、イシナギ以外にも有毒な魚や人間が消化できない成分を含む魚は食品衛生法で販売が禁止されています。

まとめ

イシナギの肝臓には超高濃度のビタミンAが含まれているので、5~10gほど食べてしまうと中毒症状が現れるので絶対に食べないようにしましょう。

現在は食品衛生法で販売が禁止されているため、販売されているイシナギには内臓が取り除かれたものしかなく自分で釣りをする、もしくは釣られた魚をもらう以外には食べる機会はほとんどないのでそこまで心配する必要はありません。

日本各地に分布していますが、特に北海道の生息数が多いので北海道では食べる機会も出てくるかもしれません。身はとてもおいしいので様々な方法で食べられています。釣り人にも人気の対象魚で大物を狙いたい人は5,6月に挑戦してみるといいかもしれません。

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