スローロリスとは?
スローロリスは霊長目ロリス科スローロリス属に属するかわいい生き物の総称です。体長は25~40cm程度、体重は400g~2kgくらいのあまり大きくない中型の哺乳類です。
まん丸な目や退化したしっぽが分厚い毛皮に覆われているという特徴的な見た目の生き物ですが、実は現在発見されている霊長類の中で唯一毒を持っているという非常に珍しい特徴があります。
主な食べ物は樹液、花の蜜、果物ですが、その他にもたまに昆虫やクモ、マイマイなどの軟体生物、鳥の卵なども食べることがあります。
逆に天敵となる生き物には、アミメニシキヘビ、タカなどの大型の猛禽類、バチクソ威厳のあるボルネオオランウータンなどに捕食されることが報告されています。
夜行性で常緑樹の樹上で生活しているので、敵に見つからないよう身を潜めて生活しています。さらに、スローロリスは名前の通り、動きが非常にゆっくりで、枝から枝にわたる時もほとんど音を立てずに移動することができます。
ナマケモノと同じように代謝が非常に遅く、ゆっくり動いてなるべく敵に見つからないように動いて、消費カロリーを減らす(摂取する食べ物の量が少なくて済む)ような進化をして生存競争に勝ってきたと言えます。
非常に素早く動き鋭い牙で噛みつく行動もとるため、危険な一面も持っています。
ちなみに、1770年にはナマケモノの一種として記述されていたこともありました。しかし、別の一面として、驚いたり襲われたりした際にはナマケモノとは異なり、また、近年の追跡調査の結果、縄張りを守るために同種同士の激しい争いが行われていることも確認されており、なんと全体の約20%が他のスローロリスに噛まれた傷跡があったようです。その可愛らしい見た目とのギャップも併せ持っています。
分布
バングラデシュ、アッサムからベトナム、マレー半島、スマトラ、ジャワ島、ボルネオ島などの東南アジアに分布しています。
後代に広がる森林の中で生活しており、生涯のほとんどを樹上で過ごし、天敵に見つからないようにあまり動かずに生活しています。 その可愛らしい見た目からペットとしての需要が高いため、残念ながら密猟などにより個体数が減少してしまっています。種類
スローロリス属は現在5種に分けられています。分類は、体の大きさ、毛色、頭の模様などの見た目をもとに分類されていますが、その後の遺伝子検査で、系統が異なっていることも確認され、現在は5種とされています。その中でスンダスローロリスとベンガルスローロリスで遺伝子流動があったことも確認されています。
すべての種類に毒があることが確認されています。
スローロリスの毒性
毒の成分
スローロリスは肘の内側にある上腕線から刺激臭のする成分を出すことで仲間とコミュニケーションを取ったりすることが知られていますが、その成分には毒素が含まれており唾液と混ぜてグルーミング(毛づくろい)ることで体に毒を身にまとって寄生虫などから身を守るとともに、噛みついた時の威力を上げています。
哺乳類の毒はその特異性や入手性の悪さから詳しいことがあまり判明していないことも多いですが、2020年に入ってから徐々にその内容が明らかになってきています。
判明した成分の中に、猫のフケにあるアレルギー誘発性タンパク質と非常に似た成分が含まれていることがわかりました。猫アレルギーを持っている人も結構多く、欧州では26%もの人が受診しているというデータもあります。
進化の過程には大きな違いがありますが、収斂進化により有用な毒として選択されてきたことで、似た成分が全く別の種が持っているという意見もあります。
毒による症状は?
噛みつかれると、激痛、呼吸困難、血尿などの症状が確認されています。また、アレルギー性物質を含んでおり、ヒトによってはアナフィラキシーショックを起こしてしまう可能性もあります。
また、毒の成分のよるものと考えられていますが、噛まれた傷の治りが悪くなり長期間の痛みを伴うとも言われています。
人間に対しては、脅威ではあるものの死に至る可能性は比較的低いことなどから、従来は寄生虫などから身を守るためのあまり強くない毒成分であると考えられてきました。
しかし、近年の7,000時間にもおよぶ追跡調査の結果、その毒は噛みついた部分を溶かしてしまうほど強力で、中には脳みそが溶けてしまっている個体も発見されています。
かわいい見た目に侮ってはいけない非常に強力な毒を持っています。
噛まれた時の対処方法
詳しいことはわかっていないため、対症療法と自然治癒が基本になります。もしも噛まれた場合にはすぐに傷をよく洗って消毒し、病院に行きましょう。
また、アナフィラキシーショックが現れた場合には、早急にアドレナリン(エピネフリン)を筋肉注射することで症状を抑える対応が一般的です。ただ、一度アナフィラキシーを経験している人は携帯している可能性もありますが、初症状ですぐに対応できる可能性は低いので注意しましょう。
密猟による個体数の減少
その可愛らしい見た目からペットとしての需要があるため、悲しいことに密猟による被害で個体数が年々減少しています。
日本でも、スローロリス属全種は2007年以9月13日から国際希少野生動植物種に指定されており、あげる、売る、貸す、もらう、買う、借りることが原則禁止されており、違反すると懲役や罰金などの罰則があります。
国の許可を得られればペットとして飼うこともできます。ただし、寿命が20年あり、また、きちんとした環境を整えられる必要もありハードルは高いです。
一度飼われると野生に帰れなくなる
スローロリスは鋭い牙を持っているため海外などではペットとして飼う前に安全のために牙を抜かれてしまいます。一度牙を抜かれてしまうと二度と野生には戻れなくなってしまいます。
まとめ
スローロリスは東南アジアに生息する毒を持つ唯一の霊長類です。
毒については最近の研究で、猫のフケに含まれるアレルギー性タンパク質に非常に似た成分が含まれていることが判明しました。毒によって死に至る危険性は低いものの、アナフィラキシーショックによるリスクもあるため注意が必要です。
ペットとしての需要があることから、残念ながら密猟などによる個体数の減少が進んでいます。
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