刺されて数分で命を落とす地球上で最も強い毒を持つクラゲ オーストラリアウンバチクラゲ

オーストラリアウンバチクラゲ 水中の生き物
Photograph by Shutterstock_Dewald Kirsten

オーストラリアウンバチクラゲ(キロネックス)とは?

Photograph by Kelvin Aitken

オーストラリアウンバチクラゲはネッタイアンドンクラゲ科ハブクラゲ属に属するクラゲです。今まで発見されてきたクラゲの中で最も毒性が強く危険な種として知られていて、現地では殺人クラゲと呼ばれ恐れられています。
キロネックスという別名でも呼ばれますが、これは学名のChironex fleckeriからとられた名前で、この学名(属名)の由来も恐ろしく、ギリシア語の cheiro(手)、nex(殺人者)という言葉を組み合わせたものとなっています。
また、その恐ろしい毒性から英語ではSea Wasp(海のスズメバチ)と呼ばれています。
アンドンクラゲの仲間

アンドンクラゲの仲間
Photograph by Susan Aide

本種は箱のような傘を持ったクラゲ「ハコクラゲ」の中では最も大きいクラゲで、傘の高さは30~50cmほどの大きさになり、傘から伸びる触手は最大15本程度生えていて最長で4.5mほどの長さになります。

この触手には触れてしまった小魚や甲殻類は毒の影響で瞬時に麻痺し死に至るため、触手を傷つける危険性を最小限に抑えて捕食することできます。

特殊能力と謎

クラゲのイラスト

オーストラリアウンバチクラゲには、他の多くのクラゲよりも優れた能力を2つ持っています。

優れた遊泳能力

多くのクラゲはただ風や波に身を任せて海中を漂うだけですが、本種はクラゲの中でも進化が進んだクラゲと言われており、優れた遊泳能力を持っています。
その泳ぐ速さはなんと1.5m/sでこれは5.4km/hという速さで、人間の歩く速さが時速約4km程度ということを考えると水中では結構な速さということがわかると思います。

優れた眼

クラゲの眼点
引用:https://kujukushima-visitorcenter.jp/pb/pb_5450/

クラゲには眼点と呼ばれる目の役割を担う器官を複数持っていますが、この眼点が識別できるのは明るさを感じるくらいで、周囲をきちんと認識することはできません。
しかし、オーストラリアウンバチクラゲの眼点には、虹彩、角膜、網膜が備わった非常に高度なものとなっています。その能力を明るさを感じるだけでなく、物体の動きや色といった情報を得られると考えられています。
ただし、この能力には大きな謎が残っています。

ヒトの中枢神経

本種を含めたクラゲには脳と呼べるような中枢神経系がないため、この優れた眼点で見た情報をどのように処理しているのかはわかっていません。

進化の過程でこのような優れた眼を獲得していることから、情報処理はできているはずです。この謎が解き明かされる時には今までの非常識が常識に変わることも出てくるかもしれません。

分布・生息地

キロネックスの生息域

キロネックスの生息域

オーストラリア北部の沿岸海域、インド洋、西太平洋に広く分布しています。
本種が出現する地域の海岸では防護ネットや金網などで侵入を防ぐように対策を行っていますが、比較的小さい個体などは侵入を許してしまうこともあり未だに刺傷事故は後を絶えません。

注意喚起の看板
Photograph by TydeNet

危険を知らせるための看板が設置されているなど注意も呼びかけられているためため、東南アジアやオーストラリア北部周辺でむやみやたらに海水浴を楽しむことは避けましょう。

また、日本には生息していないため日本国内で海水浴を楽しむ分には本種によって被害を受ける可能性はほぼありません。
ただし、近年オーストラリアウンバチクラゲの仲間に分類されたハブクラゲは沖縄や奄美大島周辺の海域に生息しており、その毒性が強いことから過去には死亡事例も報告されています。

ハブクラゲ

天敵

ウミガメ

クラゲは様々な毒を持っていますが、それらの毒を全く気にせず食べてしまう生き物がウミガメです。
オーストラリアウンバチクラゲの毒は他のクラゲと比べても極めて毒性が強く、大きいことから持っている刺胞の数や毒量も多いのですが、ウミガメにはこの毒も全く効かないため、もぐもぐと食べられてしまいます。
ウミガメが海水浴場の守り神になるかというと、残念ながら個体数が少なくクラゲによる刺傷事故を減らす対策にはなっていないようです。
ちなみに、クラゲを好んで捕食しているため流れてきたビニール袋を食べてしまうという問題が起きているため、環境汚染を進めないためにもポイ捨てはやめましょう!

オーストラリアウンバチクラゲの毒

オーストラリアウンバチクラゲは最大で15本程度の触手を持っていますが、触手1本あたり約5,000個もの刺胞(毒針)があり、直接触れた場合や、獲物から出る化学物質を感知すると毒針が発射され毒を送り込みます。
この毒は様々なタンパク質性の有毒成分が含まれていて、溶血性を示す成分や、皮膚壊死性、心臓毒性を示すものなどがあります。

キロネックスの刺胞
引用: (2012) Venom Proteome of the Box Jellyfish Chironex fleckeri

その中でも特に心臓毒性を示す有毒成分の効果が強いことが分かっていて、人間をも死に至らしめるほどの危険性がある要因となっています。

もしも刺されてしまうと、耐えられないほどの激痛に襲われるとほぼ同時に、刺された箇所の壊死、視力低下、呼吸困難、心停止などの症状が現れます。
刺された範囲にもよりますが、1~10分程と極短時間で死に至ります。また、水中で刺された場合、パニック状態に陥り水難事故を引き起こす要因にもなります。
刺された範囲が狭ければ一命を取り留めることもありますが、皮膚壊死性の毒も含まれていることから触手に触れた部分はミミズ腫れのように赤くなり、その後傷跡として長く残り続けます。

もしも刺されてしまったら?

もしも刺されてしまったら、落ち着いてすぐに陸にあがり、刺傷箇所にお酢をかけて刺胞を失活させてこれ以上毒針を刺されないようにします。
その後、体に貼りついた触手を取り除いて一刻も早く医療機関を受診し解毒剤を投与する必要があります。
また、刺された人が救護する場合もいきなり触手を取り除こうとはせずに、お酢によって完全に刺胞を失活させてから対処しないと被害を受けることになります。
本種の毒性があまりに強いため、解毒剤を打つのが間に合わない可能性も多いと言われているのが実情です。
ちなみに、同じクラゲでも種類によってはお酢をかけると逆効果になる場合があるため注意が必要です。

刺されないために

刺胞はヒトの皮膚に触れなければ毒針は発射されないため、ウェットスーツやラッシュガードなどの衣類を着用することで刺されるリスクを低減することが出来ます。
キロネックスの体は半透明のため、水中で見つけることは比較的難しく、気がついたら刺されてしまったということも少なくないため、海に入らないことや海岸を歩く際は裸足やサンダルで歩かないといったことが一番の予防策です。

まとめ

オーストラリアウンバチクラゲ(キロネックス)は、オーストラリア北部の沿岸海域、インド洋、西太平洋に広く分布している猛毒を持った非常に危険な毒クラゲです。

ハコクラゲの仲間の中で最大の種で、刺胞(毒針)が数千個ついている長さ4.5mにもなる触手が15本もついていて、もしも刺されてしまうと激痛に襲われるとともに、呼吸困難などの症状が現れ1~10分程度で命を落としてしまう可能性があります。

生息域には本種が海水浴場に入らないように防護ネットなどを設置し対策をしていますが、完全に防げるわけではないため今も刺傷事故が発生しています。

ウミガメには毒が効かないためキロネックスですらもぐもぐと食べてしまいますが、ウミガメの個体数が少ないため対策には残念ながらなりません。肌に直接触れなければ毒針が発射されないためラッシュガードやウェットスーツを着ていれば身を守ることが出来ます。

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