小さなマンゴーにそっくりな南国の果実に要注意!実は毒がある有毒植物 ミフクラギ

植物

ミフクラギとは?

ミフクラギ(学名: Cerbera manghas)は、キョウチクトウ科(APG分類体系ではヒョウタンボク科)に属する常緑樹です。
美しい白い花と光沢のある鮮やかな緑色の葉が特徴的ですが、猛毒を持つキョウチクトウの仲間ということもあり、葉や枝、果実、種子、樹液など全身に有毒成分が含まれています。
この有毒成分に触れてから手を洗わずに目を擦ってしまうと目が腫れる(膨らむ)ことから目脹ら木(ミフクラギ)と呼ばれるようになりました。また、オキナワキョウチクトウという別名もあります。
高さ5~15メートルほどに成長し、樹皮は灰褐色で滑らかで長楕円形で光沢があり濃い緑色をした葉をつけます。
花は白色で中心部が淡い黄色やピンク色を帯びることがあり、花弁は5枚からなります。
果実の大きさは直径5~10センチメートルほどの楕円形で、熟していない果実は緑色ですが、熟すと赤紫色に変化するためミニマンゴーと勘違いされることもあります。そのため、英名ではSea Mangoとなっています。
ただし、種子が非常に大きく果実の実はほとんどないのでマンゴーと勘違いして食べてしまうことは基本的にはありません。

分布・生息環境

Photograph by Dinesh Valke

ミフクラギは、インド、台湾、マレーシアなどの熱帯・亜熱帯沿岸域に広く分布し、日当たりの良い沿岸部でよく見られます。
日本では主に沖縄県に分布していて、潮風や排気ガスなどの汚染に強く、有毒成分を含むことから害虫をあまり寄せ付けず、葉、花、果実の見た目がよいことから、公園や街路樹などに植栽されてきました。

果実の中は繊維質で軽い

ミフクラギは、湿潤な熱帯・亜熱帯気候を好むため分布としては日本の奄美大島が北限となっています。

果実(種)は非常に軽く水に浮くため、海流にのり海を渡って分布を広げる「海流分散」を行う戦略を取っています。
ギネス世界記録にも認定された世界最恐の有毒植物「マンチニール」も同じ戦略を取っています。

ミフクラギの毒

ミフクラギの全身に非常に強力な毒性成分であるケルベリン(cerberin)が含まれており、その他にもアルカロイド系の成分が含まれています。

ケルベリンの構造図

ケルベリンの致死量は犬は1.8 mg/kg、猫は3.1 mg/kgと報告されていますが、人に対する毒性は様々で個人差もあると報告されています。

ミフクラギを食べてしまうという例は2013年9月に1歳児が誤ってかじってしまい病院に搬送されるという事故が発生しています。
種子など毒性の強い部位を食べてしまうことを避ければ死に至るような危険性は高くないと言われていますが、葉や果実の樹液などにも有毒成分が含まれているため、もしも素手で触ってしまったらきちんと手を洗うようにするしましょう。
一方で、ミフクラギの近縁種でインドなどに多く自生するオオミフクラギ(別名:自殺の木)は特にケルベリンの含有量が多く、もしも摂取すると数時間~数十時間後に嘔吐などの症状が現れ、最悪の場合には死に至ります。過去には日本人が自ら種子を摂取し、約半日後に死に至ってしまった事例もあります。
このことから、ミフクラギを小さい子が摂取してしまったり、多量に摂取してしまうと命に関わる危険性があると考えられます。

ヤシガニによる中毒

沖縄県に生息するヤシガニはミフクラギを食べることが確認されており、ミフクラギを食べたヤシガニはその毒を体内に溜め込みます。
そのため、もしも有毒成分を溜めたヤシガニを人が捕獲し、食用とした場合に中毒症状を引き起こす危険性があります。実際に、ヤシガニを食べた後に中毒症状を発症した事例が報告されており、嘔吐、混乱、食欲不振、不整脈などの症状が現れる可能性があります。
もしも摂取量が多い場合には低カリウム血症、高カリウム血症などにより命に関わる危険性があるため注意が必要です。

利用方法

かつては果実の毒性を魚毒として利用した毒流し漁に用いられてきました。しかし、現在日本においては毒流し漁は法律で禁止されているため、現在は魚毒として使用されることはなくなりました。
その他、殺鼠剤として利用されたり、油脂が取れるため燃料や殺虫剤として用いられています。また、民間薬としてミフクラギから抽出したものを下剤や嘔吐剤として用いられてきた歴史があります。しかし、その強い毒性から、現代医学においてはほとんど利用されていません。
ミフクラギの美しい花や葉、独特の果実の形状から、観賞用として栽培されることがあります。

まとめ

ミフクラギ(Cerbera manghas)は、美しい白い花と鮮やかな緑葉を持つキョウチクトウ科の常緑樹ですが、葉、枝、果実、種子、樹液など全身に猛毒を含みます。有毒成分に触れた手で目を擦ると腫れることから「目脹ら木」と呼ばれます。沖縄県を中心に分布し、潮風や汚染に強く、観賞用としても植栽されます。熟した果実はミニマンゴーに似ることがありますが、種子が大きく可食部はほとんどありません。
全株に含まれるケルベリンなどの毒性により、犬や猫に対して致死性を示します。ヒトへの影響は様々ですが、幼児の誤食事例も報告されています。近縁種のオオミフクラギは特に毒性が強く、摂取すると重篤な症状を引き起こす可能性があります。
沖縄に生息するヤシガニがミフクラギを食べ、その毒を体内に蓄積することが知られており、有毒成分を持つヤシガニを人間が食べると中毒症状を引き起こす危険性があります。
かつては魚毒として利用されていましたが、現在は禁止されています。殺鼠剤や燃料、殺虫剤としての利用例や民間薬としての歴史もありますが、現代医学ではほとんど用いられません。観賞用として栽培される際は、誤食に注意が必要です。

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