青酸カリとは?
製造方法
利用
青酸カリと聞くとまず最初に毒!と思う方も多いと思いますが、どのようなことに利用されているのか少しだけ紹介します。
電解メッキ法の一つに青化浴という青酸カリを使った方法があります。青酸カリを使わない方法もありますが、今なお主流の用です。
写真:
昔は現像などに使われていました。
漁業:
青酸カリは水生生物に対して非常に強い毒性を示すため、国によっては青酸カリ使った漁法が使われています。環境に悪いので当然日本ではNGです。
昆虫標本:戦前の話のようですが昆虫の標本をつくるセットの付属品に殺虫剤として同梱されていました。
※名作ゲーム「ぼくの夏休み」の時代背景は、1970年80年代なのでこのころにはすでに青酸カリからメタノール+水に置き換わっています。なのでぼく夏の昆虫採取セットには青酸カリは入ってなかったはずです。よかったよかった。
青酸カリの毒性
青酸カリを摂取してしまった時の症状
青酸カリを摂取してしまうと、胃液(胃酸)と青酸カリが反応して、シアン化水素という猛毒ガスが発生します。この猛毒ガスが胃から発生すると、肺を通して血液中に入っていきます。
血液に入ったシアン化物は、体の様々な細胞の呼吸(酸素の取り込み)を妨げる働きがあるため、様々な症状が現れます。重症な場合には細胞が壊死してまうことでさらに容体が悪化します。
摂取後、数秒から1,2分後に中毒の初期症状である、頭痛、めまい、心拍数の増加、息切れ、嘔吐といった症状が現れ現れます。その後重症な場合には、発作や低血圧、痙攣、心拍数の低下による意識消失がおき、最悪の場合、呼吸停止、そして心停止により死に至ります。
これらの中毒症状は、シアン化物中毒、シアン化合物中毒、シアン中毒、青酸中毒と呼ばれています。
血中シアン濃度
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症状
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0.5~1 mg/L
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軽度
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1~2 mg/L
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中度
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2~3 mg/L
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重度
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3 mg/L以上
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死亡
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致死量
ラットに対する致死量は食べた場合で、7.49mg/kgや10mg/kgといったデータがありますが、ヒトの致死量は200~300mg程度と考えられています。
ラットの皮膚に触れた時の致死量は22.3mg/kgというデータもあるため、食べずにいようともたくさん触れてしまうと命の危険があります。そのため、もし仕事などで取り扱う機会がある場合には、かなり注意しなければならない、ということがよくわかります。
ラット経口 LD50 5~10mg/kg
ラット経皮 LD50 22.3mg/kg
摂取してしまった時の対処方法
摂取した量が少ない場合には、肝臓の力で1時間当たり30~60mgのシアンを解毒できるとされていますが、摂取量が多い場合には、拮抗剤として、亜硝酸アミル、亜硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムを使用することで助かる可能性が高いです。特に亜硝酸アミルは注射などを使用せずに、吸入のみで対応できるのでよく使用されているようです。
海外には医療キットもあるようですが、日本では販売されていないためすぐに病院に駆け込む必要があります。
症状が重い場合には呼吸停止などの症状がでることがありますが、周りにいる人は患者の呼吸を吸ってはならず、人工呼吸も絶対にしてはいけないので注意しましょう。
実は間違い?凶器には向いていない青酸カリ
探偵ものの作品やサスペンスもので凶器としてよく使われている青酸カリですが、作品と現実では大きな違いがあるので実際はどんなものなのか見ていきましょう。
「青酸カリ=強力な毒物」というイメージも定着しているので、作品のイメージを崩したくないという方は閲覧注意です!
手に入れづらい
「毒物および劇物指定令」で毒物に指定されているため、「毒物及び劇物取締法」に基づいて、購入時に身元の確認や販売記録、保管方法や在庫量の記録が求められています。
また、販売側も一般消費者に販売することはなく、研究所や法人など限られた相手にのみ販売しているため、一般人が手に入れることは非常に難しく、もし手に入れて凶器として使用したとしてもすぐにばれてしまうことでしょう。
ただ、一昔前はずさんな管理体制のもと、紛失や流出が散見されていたことも事実なため、もしかしたら作品中の犯人は何かしらの裏ルートを使って手に入れていたのかもしれません。
致死量は意外と多い
青酸カリは毒性が非常に強い化学物質ではありますが、致死量を摂取させるにはそれなりの量が必要になります。
ヒトの致死量は200~300mg程度と考えられていますので、凶器として使うのであれば、400~500mgくらいは飲ませたいところです。この量をカプセルに詰め込むとすると大体高さ23mm×内径0.8mm程度の特大サイズのカプセル1個に詰め込むくらいの量が必要になります。
相手に一切気づかせずにこのカプセルを飲ませるのは至難の業といえるでしょう。
水に溶かしてもむずかしい
それでは水に溶かしたらどうでしょう。青酸カリは水にめちゃくちゃ溶けやすいという性質があり、25℃の100mLの水に71.6g(上述のカプセル143個分)もの青酸カリを溶かすことができます。
これならすぐに摂取させられそうと思うかもしれませんが、現実はそんなに甘くありません。
青酸カリを水に溶かすと、かなりの強アルカリ性を示します。一般的に強アルカリになればなるほど味は苦くなる、と言われているので青酸カリが溶けた水をペロッとなめると飲み込めないくらい苦いと考えられ、全く気が付かない、という可能性は非常に低いです。
ですが、たまたま被害者の鼻が詰まっていたり、コロナの後遺症のせいで味がわからなかったり、早食いをしていたり、混ぜられた食べもの/飲み物の味が強烈だった可能性も捨てきれません。
しかし、青酸カリを水に溶かした瞬間から、液体中の酸成分や大気中に含まれる二酸化炭素(CO2)と反応して、猛毒ガスのシアン化水素が発生し始めます。つまり、せっかくつくった青酸カリ水の毒はどんどん弱まっていくとともに毒ガスを常に発生させる源になるので、ターゲットを絞って狙うことが難しくなり、自らの命も危険にさらしながら凶器として使わなければいけなくなります。
青酸カリの即効性
作品中では、摂取した直後(数秒以内)に倒れて、すぐに死亡が確認されることがありますが、青酸カリによる中毒症状のメカニズムは、胃酸や大気中のCO2が反応すると発生する猛毒ガスのシアン化水素による中毒症状なので、とんでもない量を摂取しない限りは数秒で死に至ることはありません。
十分な量であったとしても、「摂取」→「胃酸と反応しガス発生」→「肺から血中に侵攻」→「細胞の活動低下/壊死」→「中毒症状発症」という順番になるので少なくとも数分~15分程度、長い場合には数時間は時間がかかるとされています。
その間に、できる限りの胃洗浄をする、清浄な空間に移動するなどの対策を実施し、適切な医療処置を受ければ十分に助かる可能性があります。
確かに他の毒と比べると即効性がありますが、それでも量によっては十分に対処できる時間は確保できる可能性が高いです。
アーモンド臭の勘違い
青酸カリはアーモンド臭がするとよく言われますが、実は青酸カリ自体は無臭で、青酸カリから出るシアン化水素からにおいがします。
しかも、普段食べている香ばしいアーモンドの香ばしい匂いではなく、収穫前のアーモンドの香りなんだそうです。収穫前のアーモンドの匂いといわれて、ピンとくる人は少ないかと思いますが杏仁豆腐に近い匂いのようです。
さらに、このシアン化水素の匂いに限っては遺伝子的に20~50%程度の人は感じ取ることができません。コナン君は感じ取ることができるみたいなのですぐにガスの発生を確認できるのですぐに気化付くことができますね。
ただ、この香りを感じるということは、猛毒ガスが発生していることを指しているので絶対に近づいてはいけません。
匂いを感じ取れる濃度は2~10ppm程度~に対して、270ppmで即死、110ppmで30分~1時間程度吸うと死亡、5,000ppmで1分間で死亡など様々なデータがあります。
作中で数秒で死に至るほどの猛毒ガスが出ている中で、推理や調査をし始めてる場合ではありません。すぐに避難しないと危ないです。
まとめ
胃液や大気中の二酸化炭素と反応することで猛毒ガスであるシアン化水素を発生し、様々な中毒症状を起こす原因となります。
最悪の場合、死に至る可能性はありますが、有効な拮抗剤や対処法が確立されているため、もし事故などで体内に入ったとしても適切な対応が取れれば助かる可能性が高いです。
実際に凶器として使うには様々なハードルがあり、うまくいったとしてもすぐに足がつくので現実世界の事件で使われる可能性は低いので安心してください。
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