今回は最近話題になることも多いカエンタケについて紹介していきますが、秋が近づくと他にも食用キノコと間違いやすい毒キノコがたくさん生えてきます。誤食が多いキノコも紹介しているのでぜひチェックしてみてください!
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カエンタケとは?
カエンタケはボタンタケ科トリコデルマ属に属するキノコの一種で、キノコの中で唯一触ってはいけないと言われるほどの猛毒を持ちます。
猛毒があることが広まったのは近年のことで、以前のキノコ図鑑には「食毒不明」「食不適」という記載が多く猛毒があるとは記載されていないことが多かったようです。
オレンジ色を帯びた鮮やかで真っ赤な色をしていて、長さ3〜13cmほどの棒状の子実体が数本〜十数本に分かれて伸びているという特徴的な見た目をしています。1本しか伸びていないように見えることもあればまさに火炎のような形をしていることもあります。
初夏から秋にかけて雑木林などの枯れ木の近くに生えていることが多く、都心部や近所の小さい公園などで見かける機会はほとんどありません。
ただし、近年カシノナガキクイムシによりブナ科の木(特にナラ系)が枯らされてしまう「ナラ枯れ」の被害が増えており、枯れ木の増加によりカエンタケが生える量も増えてきているとも言われています。自然豊かな大きい公園などで目撃されて注意喚起の看板が設けられたりしているので、もし見つけても近づかないようにしましょう。
ナラ枯れを起こしてから2,3年経過している木の根元付近でよく見ることが出来ると言われています。ナラ枯れしている木は倒木の恐れもあるため、きちんと管理されているところでは伐採などの対応がされています。
分布・生息地
カエンタケは世界にも分布しており、日本だけでなく韓国や中国、ジャワ島などで確認されていますが、アジアから遠く離れたオーストラリアでも2019年に発見されたと報告されています。また、中央アメリカにあるコスタリカでもカエンタケもしくは極めて近い種類のキノコが見つかっています。
暖かい地域でよく見られるキノコですが、地球温暖化の影響で分布を広げているという指摘もあり、日本では沖縄から北海道まで全国各地で確認されています。以前まではカエンタケ自体が非常に珍しく山菜取りを楽しんでいるような人でも滅多に見られないようなので見かける機会が少なかったのですが、近年は発生量が増えているため出会う頻度が上がってます。
ブナやコナラなどのナラの仲間などの広葉樹林にある枯れ木の近くに群生して発生します。枯れ木などに直接生えることは少なく、基本的には地上から発生します。
カエンタケの恐ろしい毒性
カエンタケにはカビ毒として知られているトリコテセン系マイコトキシンという致死性の高い猛毒を含んでいるため、もしも食べてしまうと成人男性でも約3g程度で死に至るとされています。過去には実際に食べてしまい命を落としてしまうという事例も発生しています。
もしも食べてしまうと、摂取後30分程度で悪寒、嘔吐、下痢、腹痛、手足のしびれなどの症状が現れ、その後数時間~数日かけて症状が重くなり、呼吸困難、造血機能障害、血圧低下などの症状が現れます。最終的には、消化器(臓器)不全や小脳萎縮による運動障害や脳神経障害により死に至ります。
また、一命をとりとめたとしても脱毛といった症状や、歩行障害、言語障害などの後遺症に悩まされることもあります。
トリコテセン類は皮膚刺激性もあるため、食べるだけでなく触ってしまうことでも炎症などの症状が現れます。また、粘膜に触れてしまうと症状が重くなる可能性が高いため、小さい子が触った後に目を擦るなどの行動をとってしまうと非常に危険なため絶対に触らない・触らせないように注意しましょう。
事故事例
日本国内でも複数の事故事例が発生しているためいくつか紹介していきます。
事故事例①
1991年カエンタケを食用キノコと勘違いして数cmほどを天ぷらにして食べたところ、数日後に40度以上の熱が出て歩行障害、言語障害の症状が出ました。病院に行き診察を受けたところ小脳が委縮していることが分かり、何とか一命をとりとめましたが、歩行障害と言語障害の後遺症が残りました。
事故事例②
1999年旅館のロビーに飾ってあったカエンタケを薬用キノコと勘違いしてきのこ酒にして飲んだ後に酒に浸したカエンタケを食べた5人のうち1人が摂取してから2日後に循環器不全、腎不全により死亡してしまうという事故が発生しました。他の4名も摂取後30分後に腹痛や下痢などの症状が現れました。ちなみに、旅館側は珍しいキノコが採れたためロビーに飾っていたということです。
事故事例③
2000年カエンタケを似ているキノコと勘違いし、ナスと一緒に食べたところ、15分後に吐き気などの症状が現れたため、入院しましたが急性腎不全や肝不全等様々な症状が現れ、摂取から4日後に命を落とすことになりました。解剖の結果、食べたカエンタケの量は1g程度だったようです。
似ている菌類
ベニナギナタタケ
カエンタケに似ているキノコとして「ベニナギナタタケ」があります。夏から秋にかけて森や林の中に発生し、カエンタケと同じような見た目をしています。
毒はないとされているため食べることができますが、特に美味しいキノコではないとされていてサラダやマリネなどに彩を足すために使われることがあります。
名前の由来は薙刀に似ている朱色のキノコということから名づけられています。
見た目だけでカエンタケと区別することは非常に難しいですが、肉質の違いで見分けることができるとされており、カエンタケは硬く、ベニナギナタタケはやわらかいとされています。ただしカエンタケを直接触るのは控えましょう。
サナギタケ
サナギタケは冬虫夏草の一種で、蝶々や蛾などのチョウ目の幼虫やサナギから発生する菌で、オレンジ色の棍棒のような形をしているという特徴があります。
発生時期は地域差もありますが、初夏~秋にかけて発生するため見た目だけでなく発生時期もカエンタケと似ているため間違えやすい菌類の一種として注意が必要です。
サナギタケにはコルジセピンという薬効成分が含まれているため古くから漢方として使用されてきました。研究の結果からウイルスやがん細胞の増殖を抑制する効果を示すと報告されている成分であることが分かっており、サナギタケを量産する方法について研究されています。
もしも触ったり食べてしまったら?
カエンタケを触ったとしてもすぐにただれたり炎症を起こすようなことはありません。そのため、もしも触ってもすぐに石鹸で洗えば特に症状が現れるようなことはありません。ただし、カエンタケを触った手で目を擦ったりして粘膜に触れてしまうと重い症状が現れる可能性があるため、もしも触ってしまったらすぐに 手を洗うようにしましょう。
もしも食べてしまった場合は、残念ながら有効な解毒薬等はなく対症療法を受ける他ありません。、症状が現れるのも非常に早いため症状が現れたと思ったらすぐに病院に連絡するとともに食べたものを吐き出すことが可能であればできるだけ早く吐き出すようにしましょう。
まとめ
カエンタケは近年国内で大発生しているカシノナガキクイムシによるナラ枯れによって間接的に発生数が増えている猛毒キノコです。食べた場合の致死性がものすごく高く3g程度で死に至るトリコテセン系マイコトキシンを含んでいます。
皮膚刺激性のある有毒成分のため、触ってしまうと炎症などの症状を起こす可能性があるため見つけても近づかないようにすることが重要です。赤く珍しい形をしたキノコだからと言って触ったりしないようにすることが大切です。
似ているキノコにベニナギナタタケという食べられるキノコがありますが、万が一誤って食べてしまうと大惨事になるため、興味本位で食べたりしないようにしましょう。
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