哺乳類なのに毒を持っていて卵を産む不思議な生きた化石 カモノハシ

正面から見たカモノハシ 地上の生き物

カモノハシとは?

水槽を泳ぐカモノハシ
カモノハシは単孔目カモノハシ科カモノハシ属に分類される哺乳類です。カモノハシという名前は鴨のクチバシを持っているような見た目が由来になっています。英名でもDuck-billed platypus、PlatypusとDuckbill(鴨のクチバシ)という文字が入っています。
1798年に初めてヨーロッパ人に発見されて毛皮が持ち帰られましたが、哺乳類の特徴的な体に対して、鴨(鳥類)のようなクチバシがある姿に最初はその存在を信じてもらえまないほどでした。
カモノハシは哺乳類なのに毒をもっているめちゃくちゃ珍しい動物なので、今回はその不思議な生態に迫っていきたいと思います。

分布と生息地

カモノハシの分布図

Photograph by Tentotwo

オーストラリア東部(クイーンズランド州、タスマニア州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州)に生息しており、のちにカンガルー島に移入しています。

世界でもオーストラリアにのみ生息していますが、オーストラリアが陸の孤島ということもあり、外的要因による変化が少なかったのか、強豪となる生物が少なかったのか約1億2000万年前からあまり形態が変わっていないと考えられており「生きた化石」といわれています。

カモノハシの形態

オスで45~60cm程度でしっぽの長さは10~15cmです。メスで40~55cm程度でしっぽの長さは8.5~13cm程度と中型サイズの大きさです。

重さはオスで1~3kg、メスで0.7~1.8kgくらいです。

体は柔らかくて撥水性の良い毛で覆われていて背中側は茶色、お腹側は白い色をしています。

手足は短いですが、水かきが発達していて泳ぐのがと得意なので甲殻類や魚類の卵、両生類の幼生などを食べています。

寿命は最大で21年とけっこう長いです。絶滅危惧種には指定されていませんが、気候変動や都市/農地開発の影響で徐々に数が減ってきていると考えられています。

カモノハシの仲間

体長2mを超えるオブドゥロン(カモノハシの仲間)

Illustration by Peter

カモノハシ科の現生種はカモノハシ一種ですが、すでに絶滅してしまったカモノハシの仲間に「オブドゥロン」という種類もいました。

カモノハシとそっくりな見た目をしていますが、主な違いはクチバシの向きが上向きとなっていることと、歯がしっかりと生えている点にあります。これは食べるものが泳いでる魚から水底にいる生物を食べるように変化したということと、後述する特殊能力を得たためと考えられています。

オブドゥロンの中にはカモノハシよりも体長が2倍以上も大きい種類もいたことが最近の調査や研究でわかりました。肉食性が強いので結構恐ろしい見た目だったと考えられています。

カモノハシの持っている毒

テーブルの上に置かれた茶色い瓶

毒のある部位

展示されているカモノハシの蹴爪

Photograph by Pieter VanderLinden

カモノハシは毒をもっている非常に珍しい哺乳類です。後ろ足の裏側に蹴爪と呼ばれる爪が生えており、オスだけはここから毒を出して攻撃します。

メスは成長とともに蹴爪はなくなっていくのに対して、オスは太もも内部に毒袋が入っていてここから毒を出します。特に繁殖期には毒の量が増えるのでオス同士の戦いで優位性を示すため、と考えられています。

毒の成分

カモノハシの毒は、カモノハシの免疫機構で生産されるカモノハシ特有の毒です。

この毒は病原体から防御するために使われる「ディフェンシン」に似たタンパク質類で構成されていますが、これが体内に入ると様々な症状が出てくる恐ろしい毒に変貌します。

中毒症状

カモノハシの毒が体内に入ると、激痛、むくみ、ショック症状などの症状が現れます。特にこの痛みがかなり強烈で、大量のモルヒネ(超強力な鎮痛剤)を投与しても痛みを消せないほどの痛みに襲われます。

毒の症状として単純に痛いというだけでなく、痛みの感覚に対して過敏になる痛覚過敏症(同じ痛みでもより痛く感じるようになる)が数日から数か月間続いてしまうことが確認されています。

むくみの症状も軽いものではなく、体内に入った場所から急速に体全体に広がっていき、症状によっては腫れた部分が数か月間も麻痺したという事例もあります。

致死量

カモノハシの毒がカモノハシ特有であるという希少性などからまだ解明は進んでおらず具体的な致死量はわかっていません。

幸いなことに現在までにカモノハシの毒で死に至ってしまったという事例は確認されていませんが、犬などであれば、呼吸や心機能の阻害により死に至ることもあるとされています。

カモノハシの不思議すぎる特徴

上から見た川を泳いでいるカモノハシ

カモノハシは哺乳類なのに爬虫類や両生類のように毒を持っていて、鳥類のようなクチバシを持っているだけでも十分不思議ですが、その生態はさらに不思議に包まれています。

哺乳類なのに卵を産む

掌に載せた小さな2つの卵

小さな卵を1~3個産みます

カモノハシは哺乳類ですが、卵を産みます!繁殖期は8月~10月で、水辺に穴を掘ってつくった巣穴で1回に1~3個の卵を産みます。卵の大きさは約17mmと非常に小さいです。

卵も産むし、見た目もカモのようなクチバシを持っているので、哺乳類じゃないんじゃないの?と思うかもしれませんが、卵から孵った赤ちゃんを母乳で育てることが分かったため哺乳類に分類されました。

ちなみに、乳首はないため肌から母乳が滲み出るように出てきます。

大人の4分の3くらいの大きさになるまでに離乳して大人と同じものを食べるようになり、生まれてから約4ヶ月で独立します。

単孔目の分類

現生の単孔目の分類

さらに卵は排泄物を排出する場所(孔)と同じ場所から出てきます。この特徴は魚類、両生類、爬虫類、鳥類の特徴であり、哺乳類でこのようになっているのは、カモノハシ以外には同じ単孔目のハリモグラのみと非常に珍しいです。また、この特徴が「単孔目」という分類名の由来になっています。

特徴的な感覚器官

カモノハシは水中では目を閉じて泳いでしまうことが確認されていて、目もあまりよくないためエサを取るときには視力ほとんど頼っていません。

耳は外耳が付いておらず、聞こえる範囲は500Hz~20,000Hz(そのうち4,000~5,000Hzがメイン)と人間の20Hz~20,000Hzと比べると範囲も狭く、耳もあまりよくありません。

嗅覚も人間よりも悪くかぎ分ける力も強くありませんが、肩から首にかけてにおいを出す腺があり、それを使ってコミュニケーションを取っています。

歯はなく、味覚は苦みを感じにくいことがわかっています。

苦手なことも多いカモノハシですが、クチバシに特殊能力ともいえるスゴイ能力が隠されていて、見た目とは裏腹にゴムのように柔らかいクチバシには神経が密集していて獲物の生態電流を感知できるセンサーの役割を果たしています。

このセンサーを使うことで獲物の位置や動きを正確に察知してエサを食べることができるというわけです。

ブラックライトを当てると蛍光色に光る

シアン色に蛍光発光しているカモノハシ(お腹側)

引用:Anich et al., Mammalia, 2020

サソリや一部のカエルはブラックライトを当てると蛍光色に光る(蛍光発光)することが知られていますが、哺乳類に分類されたカモノハシもキレイなシアン色に蛍光発光することが発見されました。

哺乳類ではモモンガやフクロネズミでは光ることが確認されてしましたが、非常に珍しいと考えられていました。その後カモノハシが光ることが発見されてから次々に発見され、ウォンバットやハリネズミ、ヤマアラシなどの針が光ることも確認されました。

それでも珍しいことには変わりない不思議な特徴をカモノハシはたくさん持っていることがよくわかりますね。

まとめ

カモノハシは哺乳類でありながら、毒を持っていて、魚類・爬虫類・両生類・鳥類と同じように排泄物と同じ場所から卵を産みます。

毒が体内に入ると死に至ることはないと考えられますが、数か月間激痛に耐える必要がある恐ろしい症状が現れることがあります。

オーストラリアの一部に生息しており、生きた化石とも言われていますが、かわいい見た目とは裏腹に恐ろしい毒を持っているのでもし見かけても近づかないようにしましょう。

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