宇宙開発に貢献する!?触ると火傷する日本中にいる危険で小さな昆虫 アオバアリガタハネカクシ

アオバアリガタハネカクシ 地上の生き物
日本ではあまり有名ではありませんが、実は日本のほぼ全土に生息している毒を持った昆虫で、あなたの過去のケガももしかしたらアオバアリガタハネカクシが原因だったかもしれません。
今回はマイナーだけど実は超危険な昆虫、アオバアリガタハネカクシについて紹介していきます。

アオバアリガタハネカクシとは?

アオバアリガタハネカクシ
アオバアリガタハネカクシは漢字で「青翅蟻形隠翅虫」と書くように青い羽根を持ったアリのような形の羽を隠すのがうまい昆虫です。
体長は7mm程度と小さめで見た目は蟻というよりもハサミムシに近いですが、綺麗に折りたたまれた羽を広げると飛ぶこともできます。
羽をしまったアオバアリガタハネカクシ

羽をしまったアオバアリガタハネカクシ
Photograph by Licheng Shih

羽を出したアオバアリガタハネカクシ

羽を出したアオバアリガタハネカクシ
Photograph by Licheng Shih

頭部と腹部の両端が黒く、その間は橙赤色というわかりやすい見た目をしています。自然界でも目立つこの色合いは毒を持っていることをアピールするための警告色と考えられています。

オスは冬を超えられずに死んでしまいますが、メスは越冬するため1年を通してみることができます。もっとも個体数が増えるのは7,8月とされているので夏に虫取りなどしに行くときは、アオバアリガタハネカクシに会いやすいので猛毒の被害を受けないように注意しましょう。
危ない一面がある一方で、実は農業に被害を与えるウンカやヨコバイといった害虫を積極的に食べてくれるので、農業では益虫とされています。
また、人に対して攻撃してくることはあまりないので扱い方に注意すれば危険性を回避することは結構できます。

分布・生息地

世界中の暖かくて湿度の高い地域を中心に、北米を除いた世界各地に分布しています。
暖かく湿潤な環境を好むことから日本には北海道から沖縄までほぼ全土に生息していて、特に畑や田んぼ、山里の近くなどで見られることが多く、都市部では見かける機会は少なくなります。
その他にも水の多い環境で見られることが多いため、河原や池、沼などの近くでも見る機会が増えます。
雑食性ですが、農作物を害する害虫を好んで食べることから畑仕事や田んぼ仕事をしている人達は他の人たちと比べるとよく見かけている昆虫と言えます。
また、光に向かって飛ぶ習性があるため家屋にも浸入することもあり、いつの間にか小さい本種をつぶしてしまうといったこともあります。

持っている有毒成分

アオバアリガタハネカクシ
アオバアリガタハネカクシは体液に「ペデリン」という有毒成分が含まれているため、払いのけたり叩き潰してしまうと体液が皮膚に付着して火傷したような腫れや水泡を伴う痛みが生じます。
この毒は成虫だけでなく幼虫や卵にも含まれているので注意が必要です。
ペデリンの構造図

ペデリンの構造図

また、体液が目に入ってしまうと失明する可能性もあるほど強力な猛毒です。このような症状が現れることから「やけど虫」「デンキムシ」とも呼ばれています。

体液が付着してから症状が現れるまで多少時間がかかるため、症状の原因をアオバアリガタハネカクシであると判断することが難しく、症状が現れたときに驚かせてしまうこともよくあります。
体液の付き方が線状になるとミミズ腫れのようになりますが、一部の地域では原因がわからずいつの間にかミミズ腫れになっていることを「ヤモリのしょんべん」と呼ぶこともあります。
これは、ヤモリの尿が原因でミミズ腫れになってしまうという俗説(根拠のない噂)が出てしまったためと言われています。
ペデリンはアオバアリガタハネカクシから初めて見つかった有毒成分で、その含有量は1匹の体重の約0.025%とされています。つまり1gの個体が持っているペデリンの量は0.25mg程度です。
ちなみに、ペデリンはアオバアリガタハネカクシを代表にハネカクシ科の一部の昆虫が持っている有毒成分で、名前の由来も学名「Paederus」からとられています。(学名の「Paederus」は丘疹性皮膚炎(Paederus dermatitis)が由来となっています)

もしも体にくっついてしまったら?

手洗い
まずは慌てずに体液が皮膚に付着しないよう素手で触らずにタオルやハンカチなどで優しく払い落しましょう。
その後、体液がついてしまっている可能性がある場合は、他の場所に体液が移らないように水で綺麗に洗い落とすことが有効です。
数時間後にかゆみや痛みなどが生じた場合はペデリンによる症状が出ている可能性が高いため、皮膚科のある病院に行って痕になったり症状が長引かないようしたりしましょう。

宇宙開発に貢献する!?

人工衛星
カブトムシやクワガタと同じ甲虫に分類されていて、一番外側の固い羽の下にやわらかい羽を隠しています。羽を綺麗に隠していることが名前の由来になっていますが、その他にも羽をコンパクトに、しかも非常に素早く広げることが出来るという特徴も持っています。
研究の結果、羽の折りたたみ方が左右非対称であり、折りたたみ方を左右で入れ替えることができる(二つのパターンで折りたたむことができる)ことが分かりました。
この折りたたみ方は今まで人類が考えてきた折りたたみ方にはない革新的なアイディアだったため、この折りたたみ方を人工衛星用の太陽光発電パネルなどの宇宙開発に取り入れることが研究されています。
また、宇宙開発に限らず傘や扇子など折りたたんで使っている日用品などへの応用も期待されています。生物が長い時間かけて進化してきた結果は人間のアイディアを超えることもまだまだたくさん出てきそうですね。

まとめ

アオバアリガタハネカクシは体長1cmにも満たない小さな昆虫ですが、体液に猛毒成分のペデリンを有しているため触れてしまうと火傷したような症状が現れます。
日本各地にも分布しているため過去に原因不明のミミズ腫れや水ぶくれなどの症状が現れたことがある人はこの虫が原因だったのかもしれません。
毒を使って攻撃してくるわけではないので体液が付着しないように注意すればそこまで心配する必要はありませんが、もしも体液がついてしまったらすぐに水で洗い流しましょう。
羽の折りたたみ方にものすごい特徴があり、研究結果が宇宙開発や日用品に有効活用される日も近いはずです。

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