マンチニールとは?
分布している地域が限られており、個体数の減少も進んでいますが、2011年にギネス世界記録に「最も危険な樹」に認定されており、現地の人からは非常に恐れられています。
大きさは高さ15mほどに成長する常緑樹で、樹皮は赤灰色できれいな緑色の葉をつけます。小さくて黄色い可愛らしい花を咲かせますが、その見た目からはとても毒があるとは想像できません。葉っぱは典型的な丸みを帯びた形をしていて、きれいな緑色をしています。縁の部分は細かい鋸歯状で、大きさは5~10cm程度でうっそうと茂っています。
分布
北アメリカ南部から南アメリカ北部が原産で、カリブ地方、フロリダ州、バハマ、メキシコ、中央アメリカ、そしてアフリカ大陸に西側沿岸部に一部分布しています。 沿岸部に育成していることと、リンゴのような実をつけることから「ビーチ・アップル」という名前でも知られていますが、スペイン語では「死の小林檎」という意味の名前でも呼ばれています。 幸いなことに日本にはないので、海外旅行に行かない限り出会うこともありません。ただ、もしも海外の特に北アメリカ南部や南アメリカ北部付近に行くことがあったら気を付けましょう。生えている場所
マンチニールは沿岸の砂浜や汽水域の沼地に群生しているマングローブの林の中に育成します。中には内陸に生えていることもありますが、そのほとんどは沿岸部に生えているので、海辺に遊びに行くときにはマンチニールに注意しましょう。 猛毒を持っていて非常に危険な樹ではありますが、沿岸部で育成することで天然の防風林になったり、根の力で砂を安定させて砂浜の浸食を防ぐのに役に立っています。マンチニールの毒性
毒の成分
マンチニールは樹皮、葉、樹液、果実など全身猛毒の植物で、様々な有害成分が含まれていますが、その毒成分については完全には解明されておらず、今なおわかっていないことも多いです。 その中でわかっている成分の一つに「ホルボール」があります。ホルボールはアレルギー性皮膚炎の原因になる毒性の強い成分ですが、これ以外にも毒性の強い様々な成分が含まれているため触れると様々な症状が現れてしまいます。 これだけ殺意の高い猛毒植物になった背景は現在も謎に包まれています。ホルボール以外にどのような成分が含まれているか見ていきましょう。- 12-デオキシ-5-ヒドロキシホルボール-6-ガンマ-7-アルファ-オキサイド (12-deoxy-5-hydroxyphorbol-6-gamma-7-alpha-oxide)
- ヒッポマニン (hippomanin)
- マンシネリン (mancinellin)
- サポゲニン (Sapogenin)
- ホルボール
- その他肌刺激物質
- フロールアセトフェノン-2,4-ジメチルエーテル (phloracetophenone-2,4-dimethylether)
- その他は樹と同じ
- フィゾスチグミン
- その他は樹と同じ
毒に触れた時の症状
食べてしまった時の症状
現地に人には非常に恐れられており、マンチニールの木の近くには危険さを示す看板が設置されていたり、赤いシールや✕印で注意喚起されたりしていますが、何も知らない人がおいしそうな匂いの果実に引き寄せられて食べてしまうという事故が発生しています。
今回は実際に食べてしまった人の体験談をもとに症状を紹介していきます。 実際に何が起こっていたかというと、出血、ショック、バクテリアによる重複感染を伴う胃腸炎を引き起こします。これにより、焼かれたり切り裂かれるような、まさに拷問のような痛みが現れます。 そして腫れによって気道が圧迫されることで喉が締め付けられるような感覚を引き起こし、固形物は一切喉を通らない状態に陥ります。 一口かじっただけでもこの症状なので一気に多量口にしてしまうと最悪の結果に至っていた可能性もあります。致死量
様々な毒が入っていることや、含まれている成分について詳しくはわかっていないことも多いため具体的な情報はありませんが、果実を1個食べただけでも命に関わるほど危険だと考えられます。マンチニールの毒が全く効かない生物
こんなに毒性の強い植物ですが、マンチニールの毒が全く効かない生き物がいます。体長1mにもなるツナギトゲオイグアナです。
雑食性ですが、植物が大好物のこのイグアナは、なんとマンチニールの猛毒果実をパクパク食べます。さらに全身猛毒のマンチニールの樹の上を住居として使うこともできます。 人間だけでなく多くの動物たちにとってマンチニールは猛毒なので、非常に優秀な天然の要塞となります。症状が出てしまったら?
もし触れてしまった場合はすぐに現地のヒトに相談し対処してもらうとともに病院に行きましょう。症状が酷くない場合はお酢をかけるなどで症状が緩和したこともあるようです。食べてしまったり症状が酷い場合はすぐに病院に向かいましょう。対処療法により、症状の緩和は症状が悪化した時の緊急対応ができます。
対処療法は受けられるようですが、短時間で症状が改善するような治療受けられるわけではないため、症状が和らぐまで頑張って耐えるしかありません。それでも痛みを和らげたり気道を確保したりできるので病院にすぐに駆け込むようにしましょう。マンチニールの利用方法
マンチニールは危険な植物として紹介されることが多いですが、一方で昔からいろいろなことに利用されていました。
武器として使う
危険すぎるマンチニールですが、今も昔も有効活用する人々は現れます。カリブ海沿岸地域に住んでいた先住民は、矢の先にマンチニールの毒を塗って殺傷力を高めていたと伝えられています。
その昔は狩猟のための武器として、時代が進むにつれて暗殺や拷問などの武器、道具として使われてきました。(マンチニールの木に縛り付けるなどの拷問にも使われていたようです・・・)
現代の発達した医療があれば適切な対処をすることで死に至るリスクは低いと言われていますが、その昔はこの毒を行けると致命傷になったと考えられています。
フロリダを発見したスペインの探検家であるファン・ポンセ・デ・レオンンは、1521年ネイディブアメリカンのカルーサ族の襲撃を受けた際に、マンチニールの毒矢で負傷しその影響で航海中に死亡したと伝えられています。
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