新しいスーパーフードと注目されている毒のある美しい花 ルピナス

ルピナス 植物

ルピナスとは?

紫色のルピナス
ルピナスはマメ目マメ科ルピナス属(和名はハウチワマメ(葉団扇豆)属)に属する植物の総称で、日本でも園芸品種が親しまれています。
ルピナスという名前はラテン語の「ルプス[Lupus](オオカミの意)」が由来となっていて、これはルピナスが栄養のあまりない土地でも育つほど強い吸肥力がありどんな土地でも育つたくましさが狼を連想させたためと言われています。
背丈は50~180cm程度ほどになり、春から初夏にかけては総状花序(そうじょうかじょ)と呼ばれる特徴的で鮮やかな色の花を咲かせます。このような花を咲かせるのはルピナスの他にフジ、ヒヤシンス、スズランなどがあります。
藤の花

フジの花

ヒヤシンス

ヒヤシンスの花

スズラン

スズランの花

群生している場所では綺麗で壮大な景色を楽しむことが出来ますが、寒さに強く、暑さに弱い品種が多いため温暖・熱帯地域の気候はあまり合わず暖かい地域で園芸しても弱ってしまうことが多いという特徴があります。

分布

ルピナス

地中海沿岸地方、南アメリカ、北アメリカ、南アフリカなどの地域に200種以上が分布しています。日本には自生しておらず、日本で見られるルピナスは基本的に園芸用に品種改良されたルピナスです。
特定外来生物には指定されていませんが、北海道などルピナスにとって育成しやすい気候の地域ではそのたくましさから在来種への影響も懸念されており、定期的に防除活動が行われることもあります。
一方でルピナスを数千~数万本植栽したルピナス園が数は限られていますが、北海道を中心に全国各地にあり、初夏には綺麗な景色を楽しむことが出来ます。
関東近辺の名所としては埼玉県比企郡滑川町と熊谷市楊井にまたがる「国営武蔵丘陵森林公園」が有名で、約4万本ものルピナスが植えられています。

代表的な栽培種

ラッセルルピナス(Lupinus polyphyllus hybrid)

Photograph by Nobuhiro Suhara

ルピナス・ポリフィルス(Lupinus polyphyllus)と他種を交配させた品種群で、様々な花の色があり比較的大型になります。

キバナルピナス(Lupinus luteus

黄花ルピナス
南ヨーロッパ原産の黄色い花を咲かせる、背丈が50cmになるルピナスです。

ルピナス・テキセンシス(Lupinus texensis

Photograph by Emily Hogue

アメリカ・テキサス州原産で青花のブルーボンネット(Blue Bonnet)や赤花のテキサスマローン(Texas Malone)といった品種があります。背丈は30~40cmほどになる色鮮やかなルピナスです。

ピクシー・デライト

ルピナスは寒さに強く暑さに弱い品種が多い中でピクシーデライトは気温が高くても開花することが出来るため暖かい地域で春先から育てることもできます。

リリアン

リリアン
4月下旬に開花し始める早咲きの品種で背丈は50cmほどになります。

ルピナスの毒

ルピナス
ルピナスはとてもきれいで人気のある花ですが、品種改良された一部のルピナスを除きほとんどの種には苦みのある有毒成分(アルカロイド)が含まれているため、もしも口にしてしまうと場合によっては死に至ることもあると言われています。
様々な成分が含まれていますが、主な有毒成分の一つが「ルピニン(lupinine)」という成分で苦みのもとにもなっています。

ルピニンの構造図

ルピニンは名前の通りルピナス属の植物に多く含まれている成分で、摂取すると、めまい、協調運動障害(小脳に影響を与えて年齢相応の運動能力が発揮できず、例えば転んだ時に手を付けずに顔面から転ぶ、ボタンをかけられない、字がうまく書けない)などの症状が現れます。
羊や馬などが摂取してしまうと痙攣や呼吸困難などの症状が現れることが分かっており、人体に対しても摂取しすぎると命に関わる場合があり、人の致死量はルピナスの豆(ルパン豆)約10gと言われることもあります。
そんなルピナスですが、たんぱく質の含有量が非常に多く期待される食品と注目されています。

毒があるのに期待の食材!?

ルパン豆
ルピナスの種(ルパン豆)はオーストラリアで新しいスーパーフードとして注目されていて「ルーピン」という名で知られています。
ルピナス豆にはルピニンなどの有毒成分があるため、食べる前に茹でてから塩水に数日間つけて毒抜きをする必要があるため、昔から食べる習慣のある一部の地域を除き一般市場にはなかなか出回ることはありませんでした。
一方で栄養価が高いことで知られていたルピナス豆の品種改良を続けられた結果、苦み(有毒成分)を抑えて甘みを増した毒抜きすることなく食べられる品種が出来たことで海外ではルーピンが販売されることになりました。

ルーピンの栄養価

市販されているルーピンの大半がオーストラリア産ですが、その栄養素は目を見張るものがあります。
100gあたりのタンパク質の量はなんと45gほどもあり、これはスーパーフードとして注目されている穀物「キアヌ」の3倍以上でその他の豆類と比較しても40gを超えるものは見ないほどです。
食物繊維の量も優れていて100gあたり20gとオートミールの約2倍もの量があるため効率よくタンパク質と食物繊維が摂取できます。その他にもカリウム、鉄分、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルが豊富で様々な栄養素を補給することができます。
ポリフェノールなどの抗酸化成分も含まれているため、栄養素の優れた大豆と比べてもスーパーフードと言えるでしょう。

ダイエット食品としても注目!?

ダイエット
ルーピンの炭水化物は11g程度と大豆の約1/3と少なく、大豆よりも低GI食品となっていて食後の血糖値の上昇を抑えることが出来ます。また、悪玉コレステロールを低下させる効果が期待できます。
100gあたりのカロリーは約360kcal程度と白米と同程度ですが、タンパク質が多いため満腹感を得られやすく食欲のコントロールがしやすいためダイエット食品としても注目されています。

アレルギー食品の代用食品になる

大豆
大豆に対してアレルギー反応が出てしまう「大豆アレルギー」を持ってる人がいます。大豆アレルギーの症状は湿疹や口の中のかゆみなどがみられ、豆乳を飲んだ時には呼吸困難やアナフィラキシーショックが現れる場合もあるとされています。
ルーピンは大豆アレルギーを持っている人が食べてもアレルギー症状が現れないため代用食品になると注目されています。
日本の大豆食品の食品例としては、枝豆、納豆、きなこ、豆腐、厚揚げ、味噌、醤油、乳化剤、もやしなどがあります。すべてに対してアレルギー症状が現れない場合もあるようですが、ルーピンが代用食品になると期待されています。
ただし、ピーナッツアレルギーを持っている人は一部のルピナス豆に対してもアレルギー症状が現れる可能性があるため注意が必要とされています。

まとめ

ルピナスはルピナス属(ハウチワマメ属)に属する植物全般のことで、鮮やかな花を咲かせ、様々な場所で力強く成長するという特徴があるため、日本でも様々な場所で園芸品種が楽しまれています。
ほぼすべてにルピニンなどの有毒成分が含まれているため、毒抜きせずに食べてしまうと10g程度で死に至る可能性があります。
ただし、毒抜きしたり有毒成分を少なくした品種(スイートルピナス)にはタンパク質や食物繊維が豊富に含まれてるため新たなスーパーフードとして注目されています。

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