日本在来種の中で最も強い毒を持つ毒グモは子グモへの愛が強すぎる!? カバキコマチグモ

カバキコマチグモ 地上の生き物
近年毒グモというと、セアカゴケグモなどの外来種が国内に定着し始めて話題になっていますが、実は国内にも危険な毒グモがいて咬傷事例もたくさんあります。
今回は、国内にもいる危険な有毒生物としてカバキコマチグモにフォーカスして紹介していきたいと思います。

カバキコマチグモとは?

カバキコマチグモ

Photograph by Se Lena

カバキコマチグモはフクログモ科コマチグモ属に属する毒グモで、国内在来種のクモの中で最も毒性が強い危険なクモです。
体長はオスのほうがメスよりも少し小さいですが大きな違いはなく、10~15mm程度と大型ではありません。
カバキコマチグモの巣

Photograph by Phonon.b

体色が黄色いコマチグモということで、カバキ(樺黄)コマチグモと名付けられましたが、大きな黒い顎を持っていることからクチグロとも呼ばれることがあります。

クモの巣は張らずにススキなどの植物の葉を糸を使って綺麗に巻いて巣にします。この巣は獲物を捕獲するためではなく、脱皮、交尾などを目的としています。
夜に草むらを徘徊して獲物となる昆虫を捕食しているため、積極的に獲物を探しに行くスタイルです。

分布・生息地

あぜ道
北海道、本州、四国、九州と日本全土に分布しています。また、朝鮮半島や中国などにも生息しています。
ススキや、葦などのイネ科の植物の葉っぱを使って巣をつくるため、イネ科の植物が生い茂る草原や河川敷、水田、山地など幅広い場所で見ることが出来ます。
日中は巣の中で身を潜めていることが多く、夕方~夜にかけて獲物を探しに出かけるため、特に注意が必要です。また、成虫は5~9月頃によく見られますが、特に活動が活発になるのは6~8月頃です。

子グモの栄養源は母グモ!?

カバキコマチグモ
カバキコマチグモは非常に興味深い生態をしています。オスはメスの巣に入り込んで交尾し、メスは夏に100個前後の卵を産みます。
卵は10日ほどで孵化しますが、その後1回脱皮を行うと子グモは母グモの体液を一斉に吸い始めます。
この時、母グモは身動きできないわけではなく、外敵が現れれば子グモを守るような行動をとりますが、子グモに対しては一切抵抗することなく絶命するまで子グモに自分を食べさせます。
母グモは抵抗することなく30分程度で死に至ってしまい、半日ほどで食べられない部分以外はなくなってしまいます。

カバキコマチグモの毒

クモの持っている毒は非常に複雑で様々な成分が含まれていますが、カバキコマチグモの毒には神経毒が含まれています。
もしも噛まれると針でえぐられるような激痛に襲われ、痛みが2日~2週間ほど持続します。重症化すると発熱、頭痛、呼吸困難、食欲減退。ショック症状などの症状が現れることがあります。
神経毒以外にも様々な成分が含まれていて、獲物を麻痺させる効果があるカテコールアミン、セロトニン、ヒスタミン、スペルミンなどの成分が含まれています。
致死量は0.005ng/kgと非常に強く、世界の猛毒を持つ生物界でTOP5に入るほどの超猛毒を持っていて、この強さは青酸カリの2000倍でモウドクフキヤガエルと同等の強さを示します。
非常に強力な毒ですが、カバキコマチグモは小さく持っている毒量が少ないため、死亡事例は報告されておらず命を脅かすほどの危険性はありません。

咬傷事例

草刈り中にカバキコマチグモに手の指を刺された男性は、噛まれてから4,5分で腫れと痛みが現れて、4時間後には微熱と倦怠感が現れました。痛みは1日、腫れと微熱は2日間持続したと報告されています。
その他にも畑の草刈り中や、巣を刺激したことによる咬傷事例が複数報告されており、いずれも数日で完治しています。

噛まれないようにするために

カバキコマチグモ

Photograph by Se Lena

カバキコマチグモのメスは産卵や育児の時期になると攻撃性が高くなり、巣を刺激されたり、近づいたりした相手を攻撃してきます。
産卵や育児の時期は主に夏で6~8月頃が中心です。また、夕方から夜にかけては獲物を捕食するために活動するため特に注意が必要です。
イネ科の植物が生い茂った場所や、イネ科の葉が丸まっているのを確認した場所にはできる限り近づかないようにしましょう。
また、黄色い体色のクモを見つけたら捕まえようとせずに離れ、体にくっついた場合は速やかに払いのけましょう。

もしも噛まれたら?

聴診器を首にかけた医者
命に関わる可能性は低く数日で快方に向かうことから、症状が軽い場合には消毒などを行ったうえで様子見しておけば問題ないことが多いです。
ただし、症状が重い場合や痛みだけでなく神経毒の効果が現れた場合には念のため医療機関を受診しましょう。
なお、麻酔によって痛みを軽減できた例が報告されていますが、一般的な鎮痛剤が効かないとされています。

まとめ

カバキコマチグモは日本全土に分布している毒グモで、日本在来種の毒グモの中で最も強い毒を持っているという特徴があります。

イネ科の植物に巣をつくり5~9月頃に成虫が姿を現すため、この時期の特に活動する夕方~夜に咬傷事故が発生する可能性が高くなります。

サイズは小さいため、幸いなことに死亡事故は報告されていませんが、もしも刺されると針でえぐられるような激痛が起きる場合もあるため、黄色い体色のクモには近づかないようにしましょう。

また、イネ科の葉を丸めて巣をつくるため、不思議に思っても刺激せずに様子を見守ってあげるようにしましょう。

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