繁殖力と食害の脅威!鮮やかなピンク色の卵に毒牙あるジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)の生態と影響

水中の生き物

ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)とは?

ジャンボタニシは南米原産の大型の淡水巻き貝で、正式名称はスクミリンゴガイ(学名: Pomacea canaliculata)といいます。
食用としての期待から1981年に台湾から日本に導入されましたが、その旺盛な食欲と高い繁殖力から、現在ではイネを中心に蓮やサトイモ(水上栽培)などを農作物に甚大な被害をもたらす侵略的外来種として広く認識されています。

ジャンボタニシの大きな殻

成貝は名前の通り大型で殻の高さは5~8cm程度にまで成長し、殻は右巻きの5段で色は黄褐色から暗褐色までと様々です。

身近な巻き貝のサザエと同じように蓋を持っているため、外敵から身を守ることができます。
また、エラ呼吸だけでなく肺呼吸もできるため乾燥にも強く雨の降らない日が続いている中、水場から離れたとしても容易には死に至りません。成貝になると水面から殻の一部を出して呼吸するための水管を伸ばすこともあります。

ジャンボタニシの卵

このように、対環境性に優れていることに加え、ジャンボタニシが産む鮮やかなピンク色の卵には神経毒が含まれているため、この卵を捕食する生き物はアリ以外には観察されていないことも定着を進めた一因と考えられます。

一方で、寒さに対する耐性は高くなく地中で越冬した場合、0℃で25日、-6℃で1日程度ですべての貝が死亡するという研究結果もあります。
夜行性で、主に水中の植物や有機物を食べますが、水稲の苗などの柔らかい植物質を好んで食害します。寿命は1~2年程度とされていますが、環境によってはそれ以上生きる個体もいます。

分布・原産地

ラプラタ川

ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)は、南米のラプラタ川流域でアルゼンチンやウルグアイに自然分布しています。
現在では温帯や熱帯のアジア諸国に移入分布しており、日本には1981年に食用目的で台湾から導入されました。
当初は「アップルスネイル」という名称で、安価なタンパク源として養殖が試みられましたが、市場のニーズに合わなかったこと、養殖個体が逸脱し野生化したこと、その除草能力の高さから積極的に水田などに放していたことから全国各地に分布を拡大していきました。
耐寒性には優れていないため、北海道や東北地方、北陸地方には定着しておらず、それ以外の地域の水田や用水路、ため池、河川などに生息が確認されています。
特に、温暖な気候を好むため、九州地方を中心に個体数が多く農作物への影響が大きい傾向にあります。

ジャンボタニシの卵が持つ毒

ジャンボタニシの鮮やかなピンク色の卵にはPcPV2(Pomacea canaliculata perivitelline fluid protein 2)と呼ばれるタンパク質性の神経毒が含まれています。
この毒性成分は、鳥類や魚類などの捕食者に対して忌避効果を発揮し、卵を捕食しようとした生物は、不快感や吐き気などを催し、結果的にジャンボタニシの卵を避けるようになると考えられています。
人間に対する影響については、直接的な皮膚への接触などでは特に問題は確認されていません。食べると苦味があると言われ、このことからナナホシテントウと同じように外敵から身を守っているものと考えられています。
この卵の毒性も、ジャンボタニシが日本国内で天敵が少なく、分布を拡大できた要因の一つと考えられており、鮮やかなピンク色の卵塊を見つけた際には、むやみに触らないように注意が必要です。

ジャンボタニシが日本にもたらした影響

ジャンボタニシが日本にもたらした影響は、主に農業分野において深刻です。

水稲への被害

ジャンボタニシは、特に水稲の幼苗期に柔らかい茎や葉を好んで食害します。これにより、植え付けたばかりの苗が食い尽くされ、再度の植え直しが必要になるなど、農家の労力とコストを増大させています。広範囲に被害が及ぶと、収穫量が大幅に減少する原因となります。

その他の農作物への被害

水稲だけでなく、レンコン、クワイ、セリなど、水田や湿地で栽培される他の農作物への食害も報告されています。これらの作物においても、品質の低下や収穫量の減少といった被害が生じています。

生態系への影響

ジャンボタニシは雑食性であり、水生植物だけでなく、藻類や小型の水生動物なども捕食します。そのため、在来の水生生物との競合や捕食を通じて、生態系のバランスを崩す可能性があります。特に、希少な水生植物が食害されることによる影響が懸念されています。

防除対策の必要性

ジャンボタニシによる農業被害を軽減するため、様々な防除対策が講じられています。物理的な防除としては、手作業による卵塊や成貝の除去、侵入防止のための柵の設置などが行われています。
化学的な防除としては、農薬の使用も一部で行われていますが、環境への影響も懸念されます。生物的な防除としては、ジャンボタニシを捕食する鳥類や魚類を活用する試みも行われています。しかし、現時点では決定的な防除方法は確立されておらず、各地で様々な対策が模索されています。

経済的な影響

農業被害による直接的な損失に加え、防除対策にかかるコストも農家の経済的な負担となっています。また、ジャンボタニシの分布拡大により、地域によっては水田の景観が損なわれるといった影響も指摘されています。
このように、ジャンボタニシは日本の農業や生態系に多岐にわたる負の影響を与えており、その対策が重要な課題となっています。

まとめ

ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)は、南米原産の大型淡水巻き貝であり、食用目的で日本に導入された後、高い繁殖力と食欲によって侵略的外来種として全国に分布を拡大しました。鮮やかなピンク色の卵塊は、捕食者に対する防御としての毒性を持つPcPV2というタンパク質を含んでいます。
日本にもたらした影響は深刻であり、特に水稲をはじめとする農作物への食害は甚大です。その他、在来の生態系への影響や、防除対策にかかる経済的な負担も無視できません。現在、様々な防除対策が試みられていますが、その根絶は容易ではありません。
ジャンボタニシは、その特異な生態と、農業や環境にもたらす影響の大きさから、注意すべき外来生物として、その動向が注視されています。

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