ホタルには毒がある!?日本にいるホタルの種類と光る理由とは?

ホタル 地上の生き物

ホタルとは?

蛍
ホタル科に属する昆虫の総称で、極地や砂漠を除き世界中に分布していて2000種以上が生息するとされています。
ホタルの幼虫の生態は大きく二つに分かれていて、一つは陸上の湿地で生活する陸上ホタル、もう一つは水中で生活する水生ホタルです。
水生ホタルは圧倒的少数派で2000種以上存在するホタルの中でも10種類ほどしか確認されていませんが、日本でもおなじみのゲンジボタルとヘイケボタルはどちらも水生ホタルです。
体長は種類にもよりますが、数mm~3cmほどの大きさで細長めの体型をしていて、全体的に黒く胸部だけが赤い種類が多いです。
最大の特徴はお尻の近くに発光器があり光る種類がいることで、日本にはゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルがよく知られています。
成虫になるまでは1年ほどかかりますが、成虫の寿命は1,2週間程度と短いのも大きな特徴の一つです。これは成虫の口器が退化しておりほとんどの種類が水を飲むことしかできないので、幼虫時代に蓄えた栄養を使うことしかできないためです。この短い間に子孫を残します。
幼虫時代は水生ホタルも陸上ホタルも肉食性で巻貝やミミズ、タニシやカワニナなどを食べて成長します。

日本に生息するホタル

日本には50種類以上のホタルが生息していますが、実はその多くは南西諸島に生息していて、本州、四国、九州で見られるホタルは9種程度とされています。
また、成虫になると光らなくなるホタルも多く、成虫でも光るホタルは本州で確認されているホタルのうち3種類のみです。今回はこの3種類を紹介していきます。

ゲンジボタル

ゲンジボタル

ゲンジボタル
Photograph by りなべる

日本でホタルというとゲンジボタルを指すほど日本で親しまれている日本固有種の水生ホタルです。主に渓流など流れが速く綺麗な川に生息しています。

ホタルの中では大きく15mmほどの大きさをしており、赤い胸部に十字型の黒い模様が入っているという特徴があります。
幼虫はカワニナを食べるので、カワニナが生息している地域にのみ生息しています。

ヘイケボタル

ヘイケボタル

ヘイケボタル

日本固有種ではなく東シベリアや朝鮮半島の水田や湿原に生息する水生ホタルです。

ゲンジボタルよりも小さく1cm程度の大きさです。最近では水田での農薬散布や護岸工事などによる環境変化により生息数が減少しています。
ゲンジボタルよりも点滅するスピードが速く星が瞬くように光るという特徴があります。

ヒメボタル

ヒメボタル

ヒメボタル
Photograph by Jonathan Häßler

体長7mm程度で歯切れよく点滅するのが特徴的な陸上ホタルです。

陸上ホタルのため川辺など開けた場所ではなく、森の中などあまり人の目に触れる機会が少ない場所に生息するのであまり知名度がない光るホタルです。
ゲンジボタル同様に日本固有種の光るホタルで一眼レフカメラなどで撮影すると素敵な写真に仕上がります。

ホタルが光るのはなぜ?

ヒメボタル
ホタルと言えば光るというイメージを持っている人が圧倒的に多いと思いますが、実は光るホタルの方が少数派で光らないホタルの方が多いです。
ホタルが光る理由は求愛のためと説明されることが多いですが、ホタルは成虫だけでなく求愛行動をしない幼虫やサナギも光る能力を持っています。
幼虫やサナギも光る理由はとしては敵を驚かせるため、襲われる前に危険な存在であることを示すための警告色であるという説が唱えられています。
実際にホタルは強力な有毒成分を持っており、相手によっては食べた生物を死に至らしめるほど強力です。

ホタルの持つ毒

ホタルの仲間には強心性ステロイドの「ブファジエノライド(bufadienolide)」という有毒成分を体内に持っており、外敵から身を守るために有効活用しています。
このブファジエノライドは実はヒキガエルが持っている猛毒「ブフォトキシン」と同類の毒性ステロイドです。見た目からもわかるように進化の過程は大きく異なり系統も全く違いますが、同じような種類の毒を進化の過程で手に入れていたのです。
ホタルの毒は捕食者に対して有効であり、噛みついて毒を注入したりするわけではないため、人に対する危険性はありません。また、もしも摂取したとしても人に対して毒性を示すほどの量は持っていないため特に気にする必要はありません。
ただし、ホタルのような昆虫を餌にしているトカゲなどの爬虫類やカエルなどの両生類では有毒成分による危害を受ける可能性があります。

【新発見】ホタルの毒を利用する生き物

イツウロコヤマカガシ

イツウロコヤマカガシ

ヤマカガシはヒキガエルから毒を獲得して身を守るために使用していますが、中国に生息するヤマカガシの仲間「イツウロコヤマカガシ」は、なんとホタルから毒を獲得していることがわかりました。

ヘビから見ればホタルの幼虫はかなり小さく、エネルギー補給のための捕食対象としてはあまりにも小さいのですが、イツウロコヤマカガシは積極的にホタルの幼虫を食べていることが研究によりわかりました。
今までホタルから有毒成分を獲得するヘビの報告はされておらず、世界初の発見であったことから2020年に国際学術誌「PNAS (米国科学アカデミー紀要) 」のオンライン版にも掲載されました。

まとめ

ホタルは日本でもお馴染みの夏の風物詩で、河原で光姿が印象的ですが、実は世界中には2000種類以上のホタルが存在していてその多くは陸上で生活し、光らない種類のホタルもたくさんいます。
かわいらしい見た目ですが、寿命が1,2週間程度という儚い一面もありますが、実は強力な有毒成分を持っている昆虫であり、外敵から身を守るために毒を活用しています。
光る理由も求愛行動のためとイメージしている方も多いかもしれませんが、相手に自分が毒を持っていることを知らせるための警告色の役割を持っているという説もあります。これは成虫だけでなく幼虫やサナギも光る能力を持っていることから考えられています。

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