ドクウツギとは?

Photograph by Krzysztof Ziarnek, Kenraiz
ドクウツギはドクウツギ科ドクウツギ属の落葉樹で、日本最大有毒植物のひとつとして知られています。他の日本三大有毒植物は以下の記事で詳しく紹介しています。

ある毒と組み合わせるアリバイトリックになる!?日本でも身近な猛毒植物 トリカブト
トリカブトとは?トリカブトは、キンポウゲ科トリカブト属の総称で世界に約300種類、日本にも約30種類が自生する猛毒植物で...

皮膚からも毒が吸収される!?日本三大有毒植物の誤食に注意! ドクゼリ
ドクゼリとは?ドクゼリはセリ科ドクゼリ属に属する日本三大有毒植物の一つとされている植物です。毒を持っていてセリに多少似て...

ウツギの花
名前にウツギと入っているのはウツギに枝の様相が似ていて猛毒を持っていることが由来になっていますが、ウツギ(ミズキ目)とドクウツギ(ウリ目)は全く別系統の植物です。
有毒植物への危機意識が高くなかった時代に、小さい子供が猛毒が含まれるドクウツギの実を食べてしまい亡くなってしまう事故が頻発したため「一郎兵衛殺し(イチロベエゴロシ)」という別名もあります。
高さ1~2mほどの低木で、葉は6~8cmほどの長さで2列に並び対になる形でつけます。

引用:https://green-piece.com/dokuutugi/
4~6月頃に果実にも見えるような花を咲かせて、6月~8月には色鮮やかな果実をブドウのように房状に付けます。
実の色は鮮やかな赤色ですが、熟すと黒紫色になり一見食べられそうな見た目で、さらに実際に甘みを感じると言われているため食べてみたくなるかもしれませんが、死に至るような猛毒が含まれているため絶対に食べてはいけません。
分布・生息地

日本固有種で、本州の近畿地方から東側と北海道に広く分布していて、主に山や野原、林の中の日当たりの良い場所や、河川や海岸の礫地などで見ることができます。
ドクウツギの仲間は世界で10種程度確認されていますが、それぞれの分布域がかけ離れていて世界各地に点在するように分布しています。これを隔離分布と言います。

出典:ドクウツギの分布と古赤道,前川文夫(1960)
このような不思議な分布を説明するため「古赤道分布」という説が唱えられました。これはシンプルにまとめると以下のような内容です。
- 昔は今の赤道と位置が異なっており当時の赤道(古赤道)周辺に分布していた
- 地軸がずれて赤道の位置が変わったことで各地域の気候や気温が変化した
- 寒くなり過ぎた地域のドクウツギは絶滅して暖かい地域だけが残った
ドクウツギ以外にも隔離分布している植物はいくつもありますが、もっとも有名な代表例としてドクウツギが挙げられています。
勘違いしやすい果実

Photograph by harum.koh
見分けるのが難しい他の植物はあまりありませんが、同じ時期に同じような色の実がなることから昔は誤食が絶えませんでした。
同じ時期に生える植物をいくつか紹介します。ちなみに、同じような理由で誤食事故が起きているヨウシュヤマゴボウについては以下の記事で詳しく紹介しています。
キイチゴ(ラズベリー、ブラックベリー)

ラズベリーやブラックベリーが代表的な栽培種であるキイチゴ属の植物は、日本の山野などで生えているのが確認できます。
これらの実はドクウツギと同じように6~8月頃に赤や黒紫色の実をつけるため、同じような場所に生えているとドクウツギも食べられると勘違いしてしまう可能性があります。
ブルーベリー

ブルーベリーも収穫時期が6~9月頃であるように、野生化したブルーベリーが実をつけていた場合、黒っぽい実は食べられると誤解してしまう可能性があります。
ブルーベリーは2品種以上が近くに生えていないと実をつけにくくなるため、野生化したブルーベリーを見つける機会はあまり多くないかもしれません。
ドクウツギの毒

ドクウツギの株全体に神経毒を持っていますが、特に果実や種子に猛毒であるコリアミルチンやツチンなどの即効性のある有毒成分が含まれています。
もしも果実を食べてしまうと、吐き気や嘔吐、中枢神経が刺激されることによ痙攣や呼吸困難を引き起こし、最悪の場合には死に至る危険性があります。

コリアミルチンの構造図

ツチンの構造図
特にコリアミルチンの毒性が強く、その致死量は0.1mg/kgとも言われているため青酸カリの30倍以上もの毒性を持っていることになります。
ツチンの人に対する毒性は詳しくはわかっていませんが、過去の実験結果から健康な成人男性が1mg摂取すると吐き気や嘔吐を引き起こすことが分かっています。
中毒事例

過去にドクウツギの赤い実を使って果実酒をつくった人の中毒事例が紹介されています。
飲んで30分もしないうちにAさんはウオーという叫び声をあげるや、胃の中身をそっくり吐き出してしまった。口や舌がたまらなく痺れ、激しい痛みに腹をかかえて部屋中を転げまわった。近くの診療所にかつぎ込まれた時はすでに顔面蒼白、嘔吐を頻繁にくりかえし、やがて全身をケイレンさせたかと思うと意識を失ってしまった。大学病院に転送され集中治療室で治療をうけたものの大量の汗で全身がぐっしょり濡れ、ケイレンと意識不明をくりかえし、発作のたびにのたうちまわるという苦しみが四時間続いたのだった。 「毒草を食べてみた」(植松 黎)一部抜粋
もしも誤食してしまったら?

もしもドクウツギに似た実を食べて体調に異変を感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。
即効性があるため、もしも屋外で誤食してしまうと助けを求められない可能性もあるため、きちんと見分けられない実をむやみに食べないように十分に注意しましょう。
また、近くに生えていることが確認できた場合には、小さい子供にその危険性が及ばないように事前に対策しておくことが重要です。
まとめ
ドクウツギは日本三大有毒植物の一つで全身に即効性のある猛毒成分が含まれています。
日本固有種で、近畿地方から東側の本州と北海道に分布していて、河川や海岸、林の中や山地など様々な場所に生息しています。
6~8月頃になると一見おいしそうな果実をつけるため、ベリー系の食べ物と同じように食べられると勘違いして誤食してしまう事故が昔は起きていました。
近年の中毒事故は減少傾向にありますが、身近に生えている場合には小さい子供が誤って食べてしまわないように十分に注しましょう。
コメント