コロラドリバーヒキガエル(学名: Incilius alvarius)は、砂漠地帯に生息する大型のヒキガエルで、体長は15cmから19cmに達します。
外来種であるオオヒキガエル(20cmを超える)を除けば北米で最も大きなヒキガエルの一種です。
この大きさからサバイバル時にはいい食料になると思うかもしれませんが、このカエルは強力な幻覚作用がある有毒成分を分泌することが分かっているため手を出すべきではありません。
実際にナショナルジオグラフィックでお馴染みのエド・スタッフォード氏も以下の動画で食べるべきではないと語っています。(面白いのでおススメのシリーズです!)
皮膚は滑らかで光沢があり、オリーブグリーンや茶色、灰色など様々な色をしているため、砂漠地帯の水源のある場所でその環境に溶け込むことができます。
夜行性で、特に動きが活発になる時期は降水量が多くなる5~9月頃で、無脊椎動物、トカゲ、小型の哺乳類、両生類を餌としています。そして雨期に栄養を十分に補給し繁殖活動を行います。
日中や乾期は暑さを避けるために地面に掘った穴やげっ歯類の巣穴に潜り込んで生活しています。
特殊な水分補給方法

Photograph by rociojgo
私たち人間のを含めて陸上で生活している脊椎動物の多くは口から水分を補給しますが、コロラドリバーヒキガエル含めてヒキガエル科のカエルは「シートパッチ」と呼ばれる皮膚の領域があります。
シートパッチに水や水分を含んだ物質に触れると浸透圧により水分を迅速に取り込むことができます。そのため、水溜りなどがない場所でも泥などがあれば生命活動を維持できるという特徴があります。

浸透圧
分布・生息環境

コロラドリバーヒキガエルは主にアメリカ合衆国の南西部(アリゾナ州、カリフォルニア州南東部、ニューメキシコ州)とメキシコ北西部(ソノラ州、シナロア州)に分布しています。
コロラド川流域に特に多く見られることからその名前がつけられました。

コロラドリバーヒキガエルの分布
砂漠地帯や乾燥した草原、半砂漠地帯に生息しており、特に水辺(小川、川、池、泉、人工的な水路など)に近い場所を好みますが、繁殖期以外は水辺から離れた乾燥した場所で生活することが多いとされています。
日中の猛暑から身を守るために、自ら掘った穴や他の動物(げっ歯類など)が作った巣穴を利用し、ほとんどの時間を地中で過ごします。
夜行性のため、夜間の気温が下がるタイミングで地上に出てきて昆虫などを捕食し、繁殖期には夏の雨季に水たまりや小川に集まって産卵と受精を行います。
コロラドリバーヒキガエルの毒

コロラドリバーヒキガエルは、目の後ろにある耳腺、口の両端にあるイボ、足にある白い線それぞれから強力な毒を分泌します。
この毒液には、ブフォテニン(bufotenin)、そして特に強力な幻覚作用を持つことで知られる5-MeO-DMT(5-methoxy-N,N-dimethyltryptamine)といった有毒成分が含まれています。

これらの毒は非常に強力で、大型犬をも死に至らしめると言われています。一方で、アライグマは有毒成分を摂取しないように毒腺のないお腹側から食べると報告されています。
ブフォテニン
ブフォテニンは、ヒキガエル類の毒腺から分泌されるアルカロイドの一種で、吐き気、嘔吐、動悸、幻覚などの症状を引き起こすことが知られています。これは、セロトニン受容体に作用することで、中枢神経系に影響を与えます。
毒性は非常に強く即効性もあり、げっ歯類に対する致死量は200~300mg/kg程度と推測されていて、これは青酸カリの10分の1程度の毒性と言えます。
また、ブフォテニンは本種だけが持っている有毒成分ではなく、日本でもよく見かけるヒキガエルもこの強力な毒を持っているため、もしも食べる際はきちんと処理してから調理する必要があります。

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実際に、海外ではこの毒が原因と考えられる死亡事故が複数報告されています。
5-MeO-DMT
5-MeO-DMTは、セロトニンに類似した構造を持つ強力な精神作用物質で、セロトニン受容体に作用し、非常に強力な幻覚作用を引き起こします。
もしも人間が摂取すると、意識の変化、幻覚、強烈な多幸感や恍惚感、そして時に不快な精神的・身体的経験を引き起こす可能性があります。
一部の民族ではパイプでこの有毒成分の煙を吸うといった儀式が行われていますが、娯楽や利益目当てにコロラドリバーヒキガエルが密猟者に狙われるという危機に直面しています。
この毒は、様々な植物に含まれていることが知られていますが、この成分を持っている動物はコロラドリバーヒキガエルのみが知られています。
まとめ
コロラドリバーヒキガエルは、北米の砂漠地帯に生息する大型のヒキガエルで目の後ろや口の両端、足にある耳腺から分泌される毒液を分泌し身を守ります。
本種はシートパッチと呼ばれる浸透圧の作用により効率的に水分補給することができる能力を持っており、また、乾期や日中は穴の中で過ごすことで乾燥に適応しています。
分泌される毒液には、ブフォテニンや、特に強力な幻覚作用を持つ5-MeO-DMTといった幻覚や意識の変化、最悪の場合は呼吸不全や心停止を引き起こす成分が含まれています。一方で、5-MeO-DMTはその精神作用から、伝統的な薬と使用されてきました。
しかし、その毒性の強さから死亡事故を引き起こすなど、非常に危険な成分であることが知られており、悪ふざけで摂取しないよう注意喚起がされています。
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