恐ろしいアリと言えば、近年日本でも話題になったヒアリが最初に思い浮かぶかもしれませんが、世界にはヒアリと同じか超えるほど恐ろしい特徴を持ったアリを紹介していきます。
サシハリアリとは?

Photograph by Anders Hastings
サシハリアリはアリ科サシハリアリ属のアリで、刺されると激烈な痛みに襲われることから、英語ではbullet ant(弾丸アリ)と呼ばれたり、痛みが一日中続くことからスペイン語ではhormiga veinticuatro(24時間アリ)と呼ばれたりしています。
また、学名Paraponera clavataからパラモネラと呼ばれることもあります。

サシハリアリの女王アリ
大型のアリで体長は18~30mm程度と大きく、赤黒い色と大きな顎を持つ肉食性の昆虫です。アリの仲間は女王アリが働きアリよりも大きくなる種類も多いですが、サシハリアリは女王バチも同じくらいの大きさです。
日本で最も大きいアリであるクロオオアリは最大でも18mmほどのため、サシハリアリの大きさが日本のアリよりもかなり大きいことがわかると思います。
最大の特徴は名前にもある通り、お尻にある針を使って攻撃してくることですが、意外にもその性格はあまり攻撃的ではなく臆病な一面も持っています。
単純に刺すだけでなく、有毒成分を持っているため非常に危険な存在です。
ちなみに、本種同士で戦いがよく起きるため負傷した個体が散見されますが、その負傷したサシハリアリを狙って寄生するハエが確認されています。
分布・生息地

中南米のニカラグア~パラグアイにかけての湿度が高くて高度が低い雨林に生息しています。
日本にはいないため日本にいる限り刺される危険性はほぼありませんが、実は日本でも数十万円で売られているため、日本の愛好家が飼っていることがあります。
危険なアリなら規制されてるんじゃないの?と思うかもしれませんが、サシハリアリは2025年2月現在、特定外来生物などの規制対象にはなっていません。
というのも、これらの規制は害虫になるかどうかが特に重視されているためで、サシハリアリは害虫になるリスクが高くないと判断されていると考えられます。
サシハリアリは卵を産む量が少なく、また成虫になるまでにとても時間がかかるため繁殖力は高くありません。また、中南米原産のため生きていける環境はおおよそ20~28℃程度となっているため四季のある日本はサシハリアリにとって生きていくのが困難な環境と言えます。
とはいえ、飼っている個体が逃げ出すなどして地域住民に被害を与えるなど事故が発生し、SNSやメディア露出により影響度が大きいと判断された場合には今後規制される可能性もあります。
巣をつくる場所

Photograph by Michael Lavery
サシハリアリの巣は樹木の根元に穴を掘ってつくられます。特定の樹木を選んでいるということはなく様々な樹木に巣があることが確認されています。
基本的に地上では活動せず、巣をつくった樹木を登って餌となる小さい昆虫や甘露(アブラムシなどがつくる糖を含むねばねばした液体)を手に入れます。
巣には数百~数千匹ほどが属していて、働きアリが餌をせっせと運んで外敵と戦ったり、子育てしたりと日々働いています。
サシハリアリの毒

ギ酸などの有毒成分を持つアリは少なくありませんが、サシハリアリも例に漏れず強力な毒を持っています。
その毒は神経毒のポネラトキシンという成分で、1匹あたり1µg(1mgの1000分の1)持っています。針を刺した時にこの毒を体内に入れることで、とてつもない痛みを引き起こし外敵から身を守ります。

ポネラトキシンの構造図
ポネラトキシンは神経細胞(ナトリウムチャネル)に作用して、麻痺を引き起こすだけでなく、痛みを伝えるための痛覚を司る神経を何度も刺激することで絶望的な痛みを引き起こします。
その効果はたったの1µgでも長く続き、数時間~24時間ほど持続するため、刺されてしまった日はうずくまったまま何もできないほどの苦痛が続きます。
この毒は人間に対してだけでなく、様々な脊椎動物、無脊椎動物に有効とされています。昆虫に対しても痛みを与え、少量でも死に至らしめることから将来殺虫剤の候補になると考えられています。
ちなみに、刺されたとしてもどこが刺されたかわからないほど腫れなどは起きず、他人にはこの痛みが分かりづらいという特徴があります。
痛みの度合いを示すシュミット指数とは?

イメージ画像です。シュミット指数とは異なります。
昆虫学者のジャスティン・シュミット氏は様々なハチやアリ(膜翅目の昆虫)に自ら刺されることによって痛みを評価してきました。
その痛みの度合いを評価したペインスケールで、痛みレベル1~4の4段階に分かれていますが、サシハリアリは最大レベルの4でその中でも堂々の1位として報告されています。
その痛みは「かかとに3インチの釘が刺さった状態で燃える炭の上を歩いているような痛み」と表現しました。
ちなみに、刺される昆虫にもよりますが、レベル1~4の痛みは以下のように表現されています。
レベル別の痛みの感想
レベル1
軽く、はかない、ほとんどフルーツのような感じ。小さな火花が腕の毛1本を焦がしたような感じ
レベル2
オーブンからクッキーを取り出すときにオーブンミットに穴が開いていたような感覚
レベル3
巻き爪にドリルで8時間も穴を開け続けた後、ドリルが足の指に食い込んでいるのを見つけるような感じ
レベル4
拷問だ。活火山の流れに鎖でつながれている。なぜこのリストを始めたのだろう?と考えるほど
通過儀礼に使う部族がいる!?

引用:https://pib.socioambiental.org/en/Povo:Sater%C3%A9_Maw%C3%A9
ブラジルの先住民族Satere-Maweは戦士になるための通過儀礼としてサシハリアリを使います。
あらかじめ麻酔効果のある植物を水に抽出しておき、捕まえてきたサシハリアリをその液体に入れます。その後、手袋状に編んだヤシの葉に眠っているアリを逃げられないように、針が手袋の内側を向くように編み込みます。
このアリ付き手袋に両手を入れて10分以上耐えるという儀式を20回、数か月~数年の時間をかけて行うことで通過儀礼が完了します。
針から手を保護するために炭を塗ることは認められていますが、儀式中にうめき声をあげたり泣いてしまった場合は1回にカウントされないため、戦士になろうとする若者は必死に痛みに耐えます。
まとめ
サシハリアリは中南米の雨林に生息する有毒アリで、もしもお尻の針で刺されてしまうと絶望的な痛みが24時間ほど続く非常に危険な昆虫です。
命を脅かす危険性は極めて低いですが、昆虫学者のシュミット氏によってつくられたハチやアリの痛みを評価したシュミット指数では堂々の1位を飾っています。
日本には生息できないため、刺される危険性は少ないですが現在は特に規制されていないため高いお金をかけることで国内でも飼育することが出来ます。
とてつもない痛みを与える恐ろしいアリですが、このアリを通過儀礼として使うブラジルの先住民族Satere-Maweはいます。100匹近くサシハリアリが入った手袋に10分以上、合計で20回も手を入れて耐える儀式を行っています。
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