アオミノウミウシとは?

Photograph by Ben Jobson
アオミノウミウシはアオミノウミウシ科アオミノウミウシ属に属するウミウシの仲間(2024年時点で5種)全体を指すか、そのうちの1種のことを指します。

ウミウシの一種
海のナメクジと言われるウミウシと同じように、鮮やかな青色をしていますが、形はウミウシの仲間とは思えないほど特徴的な見た目をしています。
こんな見た目をした生き物が近くに来たらびっくりしてしまうと思いますが、実は大きさ2cm~5cm程度と非常に小さいため海中でその存在に気付くことは少ないです。
片面は青い鮮やかな色をしていて反対側は白い色をしていますが、青い面は空から見た海の色に、白い面は海中から空を見たときの色と同じ色になっているため、鳥からも魚などからも見つかりにくくするための保護色(カウンターシェーディング)になっています。

アオミノウミウシの背中側
青い面が背中、白い面がお腹だと思うかもしれませんが、実は逆で青い面がお腹、白い面が背中になっているため、常に背泳ぎしている不思議な生き物です。残念ながらなぜ常に背泳ぎするように進化したのかは謎に包まれています。
この不思議な見た目から、英語では「ウミツバメ (Sea Swallow)」、「青い天使 (Blue Angel)」、「青い竜 (Blue Dragon) 」などと呼ばれています。
肉食性で他の生き物を食べますが、その主食はなんと猛毒を持っているカツオノエボシやギンカクラゲといった刺胞動物にくっついて捕食します。
アオミノウミウシには毒が全く効かないだけでなく、なんと毒針(刺胞)を盗んで自らを守るための武器として活用します。もしも見つけたとしても素手で触ったりすることは避けましょう。
残念ながら外敵も多いため、確実に子孫を残せるように雌雄同体となっており、3000個以上の卵を放流します。
生息地・分布
熱帯・亜熱帯の大西洋、インド洋、太平洋に広く分布しています。
水面を浮遊して波や海の流れに乗って漂っていますが、クラゲ類などにくっついて移動することも多いため特定の場所にたくさんいるということはありませんが、日本でも台風が通り過ぎた後には浜辺にたくさん打ち上げられていることがよく確認できます。
浜に打ち上げられてしまうとそのうち干からびて息絶えてしまいますが、打ち上げられた直後はまだ元気なため海水を入れたバケツに入れることで楽しく観察することができます。
アオミノウミウシの毒

Photograph by Ben Jobson
アオミノウミウシ自身が毒をつくったりすることはありませんが、主食であるカツオノエボシやカツオノカンムリ、ギンカクラゲなどが持っている有毒の刺胞を体に蓄えることが出来ます。
カツオノカンムリやギンカクラゲの持っている毒は比較的弱いのですが、カツオノエボシが持っているタンパク質性の有毒成分には痺れるような激痛を引き起こすため、もしも刺されてしまうとパニックに陥る危険性があります。
アオミノウミウシは体も小さく、刺されたとしても刺胞の数が多くないため命に関わるような危険性は高くありませんが、カツオノエボシなどの毒は2回以上刺されることでアナフィラキシーショックを引き起こす危険性もあるため注意が必要です。
ただし、実際には素手で触ったとしてもすぐさま刺されることは少ないようで触ってしまったからと言って必ずしも害をなすことはないと言われています。
事故事例
2017年2月14日にオーストラリアを46℃の熱波が来た影響でタイヘイヨウアオミノウミウシが大量発生し、サーファーや海水浴客の63名がタイヘイヨウアオミノウミウシによる毒の被害にあったと報道されました。
実際にアオミノウミウシに刺された可能性もありますが、実際にはアオミノウミウシの主食であるカツオノエボシ、カツオノカンムリ、ギンカクラゲなどの刺胞動物も大量発生していて、これらの生き物による被害のほうがいいのではないか、という意見も出ています。
いずれにせよアオミノウミウシが大量発生しているときは非常に危険なため、記録的な熱波が来た時などは海に行くのは避けた方がいいのかもしれません。
刺され過ぎると納豆が食べられなくなる!?

クラゲ類の持っている有毒成分にはポリグルタミン酸(PGA)という成分が含まれているため、何度も刺されると皮膚からPGAが入ってしまい蓄積されアレルギー反応が起こる状態になります。
納豆にはPGAが含まれているため、もしクラゲに何度も刺されてアレルギー反応が起こる状態で納豆を食べてしまうと、のどのかゆみ、蕁麻疹、、腹痛、下痢、呼吸困難、意識低下などのアレルギー症状が現れます。
納豆によるアレルギーの特徴として食べてから約半日後(5~14時程度後)に症状が現れる遅発性アナフィラキシー性を有しています。これはPGAが分解されている過程でアレルギー性を示すためと考えられています。
アオミノウミウシが持っている刺胞と有毒成分にもPGAが含まれている可能性があるため、納豆が好きな人は特に刺されないように注意した方が安全です。
まとめ
アオミノウミウシはアオミノウミウシ科アオミノウミウシ属の生き物で、名前にもある通りウミウシの仲間です。
体長2~5cm程度と非常に小さいため、海中にいるときに見つけることは難しいですが、よく台風が通った後の砂浜に打ち上げられています。
独特な見た目と綺麗な色をしていますが、有毒な刺胞を持っているカツオノエボシやギンカクラゲなどを捕食し、その刺胞を盗んで身を守るために活用しているため素手で触るのは控えましょう。
コメント