アシナガバチとは?

アシナガバチは、ハチ目スズメバチ上科アシナガバチ亜科に属するハチの総称で、世界には1,000種以上、日本には11種が生息しています。
その名前は「脚(あし)が長い」という特徴的な外見に由来しています。体長は種によって異なりますが、一般的に1.5cmから2.5cm程度でスズメバチよりは小型です。
体色は黒や褐色を基調に、黄色や橙色の縞模様を持つ種が多く、飛行時に後脚をだらりと垂らす独特の飛び方をします。
腹部の先端には、毒液を注入するための産卵管が変化した毒針(毒刺)を持っています。他のハチも同様に産卵管が毒針に変化しているため、毒針を持っているのはメスだけです。
アシナガバチは、ミツバチやスズメバチと同様に社会性の昆虫であり、女王バチを中心としたコロニー(巣)を形成して生活します。
開放的な皿状またはシャワーヘッド状の単層の巣をつくり、軒下、木の枝、ベランダ、物置といった雨風が避けられる場所が好まれます。

アシナガバチの巣
アシナガバチの巣は木材を噛み砕き、唾液(に含まれるタンパク質)と混ぜて作る和紙のような強靭な物質でつくられているため、スズメバチのつくる巣よりも強靭で頑丈です。
寿命は短く、女王バチ以外の働きバチは秋が深まる頃には寿命を終え、翌春に越冬を終えた新しい女王バチが単独で巣作りを始めます。
食性は肉食で、毛虫や芋虫など獲物として襲い肉団子にして巣に持ち帰り幼虫などに与えます。
ただし、同じく肉食性で攻撃的として恐れられるスズメバチと比べると性格はおとなしく、巣を強く刺激したり蜂を素手で触ったりしなければ刺してくることはほとんどありません。
日本に生息する代表的なアシナガバチ
日本に生息するアシナガバチには以下のような種類が確認されています。
| 日本に生息するアシナガバチ | |
|---|---|
| アシナガバチ属 |
|
| ホソアシナガバチ属 |
|
| チビアシナガバチ属 |
|
その中でも主に以下に紹介するアシナガバチが広く分布しているためよく見ることができます。
セグロアシナガバチ

体長20mm前後の大きさで腹部の黒い部分が多いという特徴があります。最も都市部に適応したアシナガバチで、人家の軒下などに巣を作る代表的な種です。
フタモンアシナガバチ

Photograph by Emily Langdon-Lassagne
体長15〜20mmの大きさで腹部の黄色い模様が目立ちます。比較的攻撃性が低くおとなしい性格とされています。
キアシナガバチ

体長20〜25mmとアシナガバチでは比較的大型の種で、腹部全体が黄色っぽく見えるのが特徴的です。都市部から山地まで広く生息しています。
コアシナガバチ

Photograph by りなべる
体長12〜18mmとアシナガバチの中では比較的小型の種で、比較的おとなしいとされています。低い場所や植え込みの中に巣を作ることが多いです。
分布・生息環境

アシナガバチはユーラシア大陸や北米など、アシナガバチ亜科全体では世界中に広く分布しています。また、日本では北海道から南西諸島まで、全国に幅広く分布しています。
巣を作る場所として、雨風を避けられ、安定した構造物がある場所を選ぶため、家屋の軒下、ベランダ、雨戸の戸袋、エアコンの室外機カバー内、物置、倉庫の内部などを選ぶことも多く、人里に近い環境でも見られることが多いです。
林などの自然物に対して巣をつくるときは木の枝、茂みの中、岩の隙間などが選ばれることが多いです。
活動期間は春から秋にかけてで、特に働きバチの数が増える夏から秋にかけて活動が活発になるため、夏休みの昆虫採取や秋のキノコ狩りなどで意図せず巣を刺激してしまうことがないように注意が必要です。
アシナガバチの毒

アシナガバチの持っている毒はスズメバチやミツバチの持っているハチ毒と似た成分で構成されています。
主な成分は活性アミンとして、ヒスタミン、セロトニン、ドバミン、ノルエピネフリンといった成分があり、低分子ペプチドとしてアシナガバチキニンが含まれ、酵素であるホスホリパーゼA,ホスホリパーゼB,ヒアルロニダーゼといった成分が含まれています。
もしも刺されると早ければ数分~15分程度、通常は4時間以内に激しい痛みを生じさせ、刺された部位の赤み、腫れ、熱感を引き起こします。
初めて刺された場合は重症になる可能性は低いですが、ハチに刺されるのが2度目以降の人は、刺されてから短時間のうちに重篤なアレルギー反応であるアナフィラキシーショックを引き起こす場合があります。
アナフィラキシーショックの症状には、蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下、意識障害などがあり、迅速な医療対応がなければ死に至る危険性があります。
もしも刺されてしまったら?

アシナガバチに刺された腕
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安全な場所への移動:
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刺された直後、ハチは警戒しており巣の近くにいる場合は他のハチが集まってくる可能性があるため、速やかにその場(特に巣の近く)から離れ、安全な場所に移動する必要があります。
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毒針の除去:
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アシナガバチはミツバチと異なり、針を残すことは稀ですが、針が残っている場合は、指やピンセットで抜こうとせず、指の腹やクレジットカードなどの平らなもので皮膚をこするようにして払い飛ばします。これは、針の根元にある毒嚢(どくのう)を圧迫して、さらに毒液が注入されるのを防ぐためです。
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毒液の排出と洗浄:
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傷口の周辺を軽く押さえ、毒液を絞り出します。
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傷口を流水(水道水)で十分に洗い流します。これにより、毒液や傷口の汚れを洗い流し、痛みを軽減する効果が期待できます。
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冷却と鎮静:
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患部を氷や冷水で冷やします。冷却することで、毒の拡散を遅らせ、痛みや腫れを和らげる効果があります。
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抗ヒスタミン薬やステロイド系の軟膏があれば、患部に塗布します。
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万が一アナフィラキシーショックによる症状と思われる以下が現れた場合は直ちに救急車を呼んだり、医療機関を受診したりする必要があります。
| 症状の種類 | 具体的な症状の例 |
| 全身の皮膚症状 | 全身のじんましん、かゆみ、皮膚の赤み |
| 呼吸器症状 | 息苦しさ、声のかすれ、のどの締め付け感、せき、くしゃみ |
| 消化器症状 | 激しい吐き気、嘔吐、腹痛、下痢 |
| 循環器・意識症状 | 血圧低下、めまい、意識の混濁、意識の喪失、脈が速くなる |
刺されないようにするには?
スズメバチと比較すると、アシナガバチは攻撃性が低いとされています。そのため、巣に近づく外敵(人間など)から巣を守るために刺すことがほとんどで、巣から離れた場所で刺すことは稀です。
巣に近づいたり、振動を与えたり、手で払おうとしたりすると、防衛本能から集団で攻撃してくる危険性があるため、できる限り刺激しないように注意することが重要です。
アシナガバチは益虫!?

アシナガバチは、その毒性や巣の存在から危険視されがちですが、農業においては「益虫」としての重要な役割を果たしている側面があります。
アシナガバチの成虫は、幼虫の餌として、アオムシやケムシといった他の昆虫を捕獲します。これらの捕食対象である昆虫の中には、農作物を食い荒らす「農業害虫」が多く含まれており、アシナガバチはこれらの害虫を捕食することで、農作物の被害を軽減するという大きな益をもたらしています。
キャベツをはじめとした葉物の野菜を育てている農園ではモンシロチョウなどの幼虫による食害を受けることもよくありますが、初夏のころまでにアシナガバチの巣があると食害を大幅に軽減できるとされています。
このように、アシナガバチが人間に直接的な被害を及ぼさない限りはむやみに駆除せず、その益虫としての側面を考慮することが重要であるとされています。
まとめ
アシナガバチは、脚を垂らして飛ぶ姿が特徴的なスズメバチ上科の社会性昆虫です。
日本にはセグロアシナガバチやキアシナガバチなど11種が生息し、軒下やベランダといった人工物に、むき出しの巣を作ります。
アシナガバチは毒針を持っているため、もしも刺されると激しい痛みや腫れを引き起こします。特に、過去にハチに刺された経験のある人は、アナフィラキシーショックという命に関わる重篤なアレルギー反応を起こす危険性があるため注意が必要です。
ただし、アシナガバチはスズメバチほど攻撃的ではなく、巣に近づかなければ刺されるリスクは低いです。また、蛾の幼虫やハエなどの農業害虫を捕食し食害を抑えるという益虫としての側面も持っています。
人里近くに生息する益虫ですが、巣を見つけた場合は刺激せず、むやみに近づかないことが重要です。



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