日本で分布を広げている特定外来生物の猛毒グモ セアカゴケグモ

セアカゴケグモ 地上の生き物

セアカゴケグモとは?

セアカゴケグモ
セアカゴケグモはヒメグモ科ゴケグモ属に属する強力な毒を持った小型のクモです。赤い模様が入っていることが名前の由来にもなっています。
オスとメスで大きく生態が異なっているという特徴があります。
メスは体長10mm程度とオスよりも2~3倍大きく体型も丸々としていて、背中とお腹に特徴的な赤い模様が入っています。寿命も2~3年程度とオスより長く、寿命が尽きるまでに5000個ほどの卵を産むこともあります。
一方でオスは体長3~5mm程度と小さく、細長めの体型をしています。さらに背中には赤い模様がなく、お腹にしか赤い模様がないのでパッと見ただけでは見分けることが難しいことも多いです。寿命は6~7ヶ月程度で交尾を終えた後にメスに食べられてしまうという悲しい運命をたどる個体が多いです。
メスは強力な有毒成分を持っていますが、おとなしい性格で積極的に攻撃してくるようなことはありません。刺激が与えられると死んだふりしてやり過ごしますが、最終手段として噛みついてくるので見かけても刺激しないようにしましょう。
不規則で見方によっては不格好な巣を直射日光のあまり当たらない地面の近くにつくり、アリやワラジムシ、ハサミムシなどの昆虫を捕食しています。
ちなみに、同じく特定外来生物であるハイイロゴケグモも国内で徐々に分布を広げています。

特定外来生物

セアカゴケグモは特定外来生物に指定されており、生きたままの運搬、飼育、販売などは法律で禁止されています。もしも法律に違反してしまうと最大で3年以下もしくは300万円以下の罰金という罰則が科せられます。
また、日本の侵略的外来種ワースト100に選定されています。-0.5℃~46℃の環境でも生き残ることができるため越冬し繁殖して数を増やしています。
1匹あたりが生涯で産卵する数は最大で5000個ほどになるとされています。毒はありますが、クモに卵を産み付けて幼虫がそのクモを食べることで成虫になるというベッコウバチの1種である日本在来種のマエアカクモバチがセアカゴケグモを捕食していることが確認されています。
それでも1匹あたりが生む量のほうが天敵に捕食されるよりも多いため日本国内で数を増やしているのが現状です。

生息地と日本での確認地

2024年1月時点のセアカゴケグモ確認地

引用:https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/70020.html

セアカゴケグモはオーストラリア原産のクモですが、荷物に紛れ込むなどして日本以外にもニュージーランド、ヨーロッパ諸国、東南アジア、アメリカなどで生息が確認されています。

日本には1995年11月に大阪府高石市で初めて発見されたことを皮切りに、兵庫県神戸市などの港などで相次いで発見されました。2005年には群馬県高崎市でも見つけられ海なし県で初めて確認され、その後全国各地で発見されました。
2024年1月時点で青森と秋田を除く45都道府県で確認されています。その中でも特に広い地域で確認されているのは兵庫、大阪から愛知にかけての港湾都市で広く確認されています。
人の生活圏の近くに生息していて、直射日光があまり当たらない側溝やグレーチングの隙間、水抜きパイプの中、花壇のブロック内部、ベンチの下などでよく見られます。

セアカゴケグモの毒

セアカゴケグモ
セアカゴケグモのメスには神経毒であるα-ラトロトキシンを持っており、獲物や外敵を咬んだ時に牙を通して注入します。
この毒は哺乳類に対して特に効果を発揮し、もしも噛まれて毒が注入されると5~60分程度で噛まれた部分の痛みが現れて次第に痛みが増していきます。その後、30分~数時間かけて痛みが四肢全体に広がっていきます。
痛みに伴い筋肉の痙攣、血圧上昇、発汗、発熱、めまい、頭痛、呼吸不全などの症状が現れます。
日本では死亡例はありませんが、オーストラリアでは死亡事例も報告されています。ただし、抗毒素血清が開発された1956年以降の死亡例は報告されていないため、もし噛まれたとしてもきちんと治療を受ければ助かる可能性が高いです。
ただし、小児、高齢者、体質的に体が強くない人は重症化しやすい傾向にあり、もしも噛まれてしまったときには迅速に治療を受けるようにしましょう。

事故事例

大阪府では平成9年以降令和5年3月時点までに99例の咬傷事例が発生しています。日常生活で噛まれる事例も多いのでいくつか紹介します。
個人敷地内で噛まれることも多く、洗濯や庭先の掃除などで足が露出するサンダルを履くような場合には特に注意が必要です。
“サンダルを履いて外に出た後、自宅玄関内に入ってきた時に、左足のくるぶし付近を咬まれた。”
“自宅の裏口から外に出るため、スリッパを履いたときに、右足親指の付け根の内側を咬まれた。”
“自宅ベランダにおいてクモの巣が絡み、その後、室内にて右肩を咬まれた。”

もしも噛まれてしまったら?

血清
重症化することは少なく、自然に治癒することも多いようですが、重症化した場合や症状が長く続く場合、全身症状が現れた場合などは119番通報し救急車を要請、迅速に医療機関を受診することが重要とされています。
抗毒素血清があるため咬傷事例の多い地域の病院では用意されていることも多く、迅速に治療を受けることで重大事故が起きるリスクを下げることができます。

セアカゴケグモの駆除方法

スプレー
幼体と成体については市販のピレスロイド系の殺虫剤が有効です。セアカゴケグモが頻繁に確認されている地域では市販の殺虫剤を常備しておき、見かけたらあまり近づかずに殺虫剤で撃退するのがおすすめです。
ただし、卵は殺虫剤が効きにくいため、つぶしたり燃やす必要があります。卵に近づく際には幼体や成体がいないことを十分に確認するようにしましょう。

まとめ

セアカゴケグモは日本の侵略的外来種ワースト100に選ばれている特定外来生物で2024年1月時点で青森と秋田を除く45都道府県で確認されています。
おとなしい性格ではありますが、気付かないうちに体にくっついていたりサンダルや手袋、バケツなどを経由して触れてしまったりして噛まれることもあります。
持っている毒はα-ラトロトキシンは神経毒で、もしも注入されると痛み、筋肉の痙攣、血圧上昇、発汗、発熱、めまい、頭痛、呼吸不全などの症状が現れます。
市販の殺虫剤で幼体と成体は撃退できますが、卵はつぶすか燃やす必要があり、天敵も限られていることからなかなか駆除が進まないのが現状です。

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