ヒキガエルとは?
ヒキガエルは別名ガマガエル、イボガエルなどの名前で呼ばれることもある日本でもお馴染みのカエルです。
ヒキガエル科には現在約600種が世界に生息していますが、日本には「ニホンヒキガエル」「アズマヒキガエル」「ナガレヒキガエル」「ミヤコヒキガエル」の4種の在来種と、海外からやってきた外来種「オオヒキガエル」の合計5種が生息しています。
日本で最もメジャーなニホンヒキガエルは体長7cm程度から大きいと18cmほどの大きさになる日本の在来種では最大のカエルです。
他のカエルのように頻繁には跳ねずにのそのそと動きます。人の存在にも慣れるので人が近づいたりしても全く逃げずにその場でじっとしていることも多いので、雨が降った時は公園や林の脇道など人目の付きやすい場所にたくさん現れて驚かせることもあります。
カエルの天敵はヘビ、鳥、ネズミなどの様々な生き物がいますが、ヒキガエルがこんなにのんびり屋さんで動きも遅いのは、強力な毒を持つことで身を守っているからと考えられています。どのような毒なのかは後で詳しくご紹介します。
オタマジャクシの大きさは3cm程度と大きく、成長すると両生類の特徴の通り肺呼吸になり陸上に上がります。寿命は長いと10年以上とも言われていますが、自然環境では4,5年程度が多いと言われています。
ちなみに、ヒキガエルはアマガエルとは異なりすぐに変態して(オタマジャクシからカエルになって)小さい幼体のカエルになりますが、このカエルを飼育環境で育てることは非常に難しいため、飼育環境における繁殖例はほとんど知られてないようです。
自然界にはたくさんいるのに、まだまだ人の手で育てるのが難しい生き物身近にいるというのは面白いですよね。
分布
ヒキガエル科のカエルは北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、アフリカ大陸、ユーラシア大陸、日本、インドネシアなど世界中様々な場所に分布しています。
ヒキガエル科には50属に分類されていますが、その中のヒキガエル属(25種)は、アフリカ大陸、ユーラシア大陸、日本、台湾に分布しています。
水の近くでなくとも暮らすことができるので、川沿いや池の近くではない森や林の中、草原や公園、庭園、畑など様々な場所に生息しています。
環境汚染や変化にも強いため、都市部などでもよく確認されている身の回りにいる存在です。春の訪れとともに鳴き始めますが、その鳴き声はカエルというよりも鳥に近いです。
夜行性のため、昼間は石や倒木の下などで休んでいます。雨の日の夜は道路などでのんびりしているヒキガエルを踏まないように注意しましょう。
ヒキガエルの毒とは?
ヒキガエルの後頭部に大きな耳線(じせん)がありますが、ここから強力な毒液を出します。また、襲われたり刺激を受けたときに皮膚にあるイボから毒入りの白い乳液を分泌します。
この毒はブフォトキシン(ブホトキシン)と呼ばれる有毒成分が主ですが、他にも数種類のステロイドや神経伝達物質のセロトニンのような成分も含まれています。
この毒はヒキガエルの天敵となりうる生物や有害な細菌、寄生虫などから身を守るために使われていて、様々な生物に対して有害であることから逃げ足の遅いのんびり屋さんになったと考えられています。
人間に対しても有害で、もしもこの毒液を触ってしまうと炎症、かぶれなどの症状が現れる可能性があります。そのため、ヒキガエルは直接触らないようにしたり、もしも触ってしまった場合はすぐに水で洗い流すようにしましょう。もしも触った後にそのまま目を擦ってしまうと炎症を起こすリスクもあります。
また、もしも食べてしまうと、嘔吐、下痢、幻覚などの症状が現れ、最悪の場合には心臓発作などにより命を落としてしまう危険性があります。
人間だけでなく犬や猫に対しても非常に有害で、人よりも少量で重篤な症状が現れるため、ヒキガエルにちょっかいをかけないように注意する必要があります。
ちなみに、ヤマカガシはこの毒に対して耐性を持っているだけでなく、この毒を利用してしまうという非常に珍しいヘビで好んでヒキガエルを捕食します。
事故事例
実際に犬や猫などペットがヒキガエルを咥えてしまったり、ヒキガエルの耳線から勢いよく飛び出した毒液が口に入ってしまうことで中毒症状が現れるといった事例が発生しています。実際に動物病院からもヒキガエルに近づけないように注意喚起されています。
さらに恐ろしいことにヒキガエルの毒が原因で人が命を落としてしまったという事例も海外であります。
ベトナムの4歳、6歳、11歳の児童3人が自分たちで取ったヒキガエルを調理して食べたところ重篤な食中毒の症状が現れ、病院に救急搬送されました。懸命な治療が施された結果、1人は何とか一命をとりとめましたが、残念ながら2人は命を落としてしまいました。
現場の状況から、ヒキガエルの内臓含めて食べてしまったようですが、ヒキガエルの皮膚だけでなく肝臓や胆のうには濃度の高いブフォトキシンが含まれているため、それらを食べてしまったことによる中毒症状が現れたとされています。
もしも毒を触ったり口に入ったりしたら?
ペットがもしもヒキガエルの毒を口にしてしまった場合は、口の中を水で洗い流してすぐに病院に行きましょう。食後30分以内であれば吐かせる対応をするようですが、その他の対応としては治療薬や解毒薬はないため、現れた症状に対して適切な対処を行う対症療法を行い、体の力で解毒、回復するのを待ちます。
人間が毒を摂取してしまうことはないと思いますが、もしも口に入ってしまったら飲み込まずにすぐに吐き出してすぐに水でゆすぎましょう。触ってしまった場合にはすぐに水で洗い流すことで中毒や炎症を回避することが出来ます。
万が一飲み込んでしまうようなことがあればすぐにゆすいで病院に行きましょう。
ヒキガエルの毒を使った生薬がある!?
昔は「ガマの油」と称される薬を使ったと言われていますが、このガマの油がヒキガエルから出る乳液のことなのかははっきりしていません。馬油だったり、植物の「ガマ」から採取した油とも言われており、古い時代にヒキガエルの有毒な分泌液(油)が薬として使われていたかはわかっていません。
しかし、戦後になってヒキガエルの出す分泌液を小麦粉で練ったものを「蟾酥(せんそ)」と呼び、強心作用や抗炎症作用、血圧降下作用などがある生薬として使われてきました。
まとめ
ヒキガエルは日本でもお馴染みの大きなカエルで、日本には5種が生息しています。動きは鈍く泳ぐのも得意ではないので、人前に現れてもすぐに捕まえることが出来ますが、人体に対しても有害な毒を持っているので、触ったりするのは注意が必要です。
また、犬や猫などに対しても非常に有毒な成分なのでヒキガエルに近づかせないように注意が必要です。
雨の日には都心の公園などに現れたりと日本中あらゆる場所で見ることが出来る身近な存在です。カエルが苦手な人も結構いますが、近づいても逃げ足が遅いので踏んづけないように注意しましょう。
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