綺麗だけど不思議で危険な猛毒を持った漂着物 カツオノエボシ

砂浜に打ち上げられたカツオノエボシ 水中の生き物

カツオノエボシとは?

砂浜のカツオノエボシ

 

カツオノエボシはクラゲやサンゴ、イソギンチャクが属する刺胞動物の一種で、強力な毒針を使って獲物を仕留める生き物です。その毒は非常に強力で刺されるとものすごく痛むことから電気クラゲとも呼ばれています。

ヒドロ虫の仲間で、クラゲのように1個体に見えますが、実は数多くのヒドロ虫が集まって形成された群体です。ちなみに群体というとどのように集まってでできたのか想像できないと思いますが、1匹の幼体(プロトゾイド)が成長の過程で複数のヒドロ虫に分化(毒針を持つヒドロ虫や消化を担当するヒドロ虫など)して1つの群体を形成します。つまり、1匹からものすごい数の生き物に分かれてカツオノエボシになります。

このカツオノエボシになるまで過程は現在でもわかっておらず未だ謎に包まれています。

名前の由来は鰹(カツオ)が日本にやってくる時期に重なってやってくること、浮袋の形が烏帽子(えぼし)に似ていることからカツオノエボシと呼ばれるようになりました。

浮袋の大きさは10cm程度で中には窒素や一酸化炭素が入っています。対して触手の長さは10mから長いと50mにもなり水中を泳ぐ小魚や甲殻類など捕食します。

ちなみに、カツオノカンムリやギンカクラゲという近縁種がいます。

分布・時期

海に浮かんだカツオノエボシ

Photograph by Mahomed Desai

世界中に広く分布していて、太平洋、大西洋、インド洋でよく見られます。日本では黒潮や南風に乗ってやってくるので本州の太平洋側でよく見られます。

遊泳力はほとんどなく、浮袋を帆にして風を受けて移動するため、砂浜に打ち上げられることもよくあり、関東では神奈川県の江の島 湘南などでも大量に打ち上げられてることもあります。

時期としては5月~8月の南風が強く吹いた時によく太平洋側の沿岸に漂着してしまうので、特にこの時期の海水浴などは注意しましょう。

打ち上げられて死んでしまった後も毒はなくならないため、海岸を子供と散歩するときなどは綺麗で不思議な見た目から触ってしまわないように注意する必要があります。

カツオノエボシの毒

触手の伸びたカツオノエボシ

カツオノエボシの触手には無数の刺胞があり、触れたりするなどの刺激を受けると自動的に毒針が発射され獲物に刺さります。そのため、カツオノエボシが岸に打ち上げられて干からびかけていたとしても毒が残っているため、砂浜を裸足で歩いて踏んだり、触ってしまい刺されてしまうこともあるので注意が必要です。

カツオノエボシの毒にはヒプノトキシン以外の有毒成分も含まれているため、もしも刺されてしまうと痺れるような激痛が現れて痛みが数日間続きます。また、心拍数の上昇、くしゃみなどの症状が現れ、症状が重い場合には呼吸困難の症状が現れます。

泳いでいるときなどに刺されてしまうと、激しい痛みよるパニックに陥りうまく泳げなくなり、水難事故を引き起こすこともあります。

さらに、2回以上刺されるとアナフィラキシーショックにより死に至る危険性があります。

カツオノエボシの持っている毒はタンパク質性の毒です。様々なペプチド(たんぱく質)が含まれていますが、その中の一つに「ヒプノトキシン」という成分が含まれています。

ヒプノトキシンが体内に入ると、不活動、しびれ、麻痺、昏睡などを引き起こすことが知られています。

刺された時の応急処置

海水と手

刺された場合は、海水で洗い流すようにしましょう。また、刺さった刺胞を取り除く場合は素手で触らずにタオルなどを使って除去します。

たんぱく質毒は熱すると分解され毒性がなくなるので、熱いお湯で火傷しない程度に温め、その後炎症を抑えるために氷や冷水で冷やします。その後すぐに病院に行って治療を受けましょう。

絶対にしてはいけない対応

クラゲの一部の毒などと同じように対応してしまうと、むしろ悪化させてしまう可能性があるので以下のような対応は絶対にしないようにしましょう。

  • 真水で洗い流す:浸透圧の関係で刺胞がさらに刺さる
  • お酢で洗い流す:浸透圧の関係で刺胞がさらに刺さる
  • 砂で擦る:さらに毒針が深く突き刺さる

※ハコクラゲ類の毒には酢が有効とされているため要注意

カツオノエボシの毒に耐性のある生き物

砂浜に打ち上げられたカツオノエボシを食べる貝

カツオノエボシの強力な毒に耐性のある生き物は数多くいるため、様々な生き物に捕食されてしまいます。一例として以下の生き物たちに食べられてしまいます。

  • アオミノウミウシ
  • アサガオガイ
  • アカウミガメ
  • カルエボシガイ
  • シロカジキ など

また、ムラサキダコの雄はカツオノエボシの触手を自分の身を守るために短く切って吸盤に張り付けることが知られています。

まとめ

カツオノエボシは5~8月の南風が強く吹いた時に太平洋側沿岸に漂着するヒドロ虫の一種で、触手には有毒の刺胞が無数にあるため、触ってしまうと毒針が刺さり激しい激痛を含む様々な症状が現れます。

水難事故の原因になったり、複数回されるとアナフィラキシーショックを起こしたりと死の危険もある非常に危険な生き物です。

砂浜に打ち上げられた後も有毒成分が残っているので素手や素足で触れたりしないように細心の注意を払うようにしましょう。もしも刺されてしまった場合は適切な対処をして、間違った対処をしないように注意しましょう。

ちなみに、熱すると毒は分解するので食べることもできます。

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