ハブとは?
クサリヘビ科ハブ属に属するヘビで、大きさは100〜220cm程度と国内のヘビとしては最大級のサイズです。重さも1.3kgほどになりますが、大きい個体だと3kgを超えるような超重量級も見つかったことがあります。
ハブ属の中には台湾や中国に分布する種もいますが、ハブ(ホンハブ)、ヒメハブ、サキシマハブ、トカラハブの4種が日本固有種です。
非常に攻撃的な性格で、赤外線を感知するピット器官で感知した相手にすぐに飛び掛かるのでハブを見つけても攻撃範囲の1.5m以内には近づかないようにしましょう。
あらゆる脊椎動物(哺乳類、爬虫類、両生類、魚類、鳥類)を食べることが確認されていますが、食べてるものの82.5%はクマネズミ属だという報告もあります。
ネズミは農作物を荒らす害獣のため、ハブは農家にとって益獣という面もあります。
不思議な分布
ハブのいる島が飛び石状になっている不思議な分布をしています。
日本固有種のハブ類は南西諸島に分布していますが、分布が広がる時は隣の島に移っていくものですが、ハブのいる島といない島が交互に並ぶ飛び石状の分布はかなり変わっています。
なぜこのような分布になったのかははっきりはわかっていませんが、以下のような仮説がたてられています。
- 昔(氷河期)は地続きだったため分布が広かった
- その後(氷河期が終わり)海水面が上昇し標高の低い島が沈んでハブは全滅
- 現在の海水面高さになりハブのいる島といない島ができた
ハブのいない島は標高が低く、ハブ以外の日本固有種も少ないことがわかっているため、この説の後押しになっています。
生息場所と活動条件
直射日光を嫌う夜行性のため日中は穴の中や石垣の隙間、薮や木陰などに身を潜めています。
攻撃的な性格でもあるので無闇に林の中に入るのは危険なのでやめましょう。
気温が18〜30℃、湿度が70〜80%になると動きが活発になるので5,6月、10,11月頃は特に注意する必要があります。
毒性
毒の強さと種類
ハブの毒の強さはマムシと同じ毒量で比べると2/3〜1/2程度と弱いです。しかしハブの脅威は毒の強さよりも毒の量が多いことにあります。
マムシは1回の咬傷で0.1mL程度の毒を注入しますが、ハブは1回あたり1〜2mL程度とマムシの10倍近い量の毒を注入します。
ヘビの毒による症状の重さは毒の強さだけでなく体内に入った毒の量によるところが大きいため、強さだけで判断するのは非常に危険です。
ハブの毒は出血毒に分類され、もしも噛まれてしまうと非常に激しい痛みと共に腫れや壊死、機能障害を引き起こすだけでなく、血液凝固作用を持つたんぱく質を分解するため多量の出血を伴います。
また、その他として嘔吐、腹痛、下痢、血圧低下、意識障害などの症状が現れ、循環不全(血液を循環させる能力の低下)によるショック状態を引き起こすこともあります。
血液を凝固させる成分も多少含まれていますが、この成分による急性腎不全などが起きる可能性は少ないとされています。
また、一度刺されたことがある人がもう一度刺されてしまうと命に関わるようなアナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。
致死量
ハブ毒による致死量は体重1kgあたり乾燥重量で6mgとされているため、成人に対しては約2mL(約300mg)と考えられています。
ハブが1回あたり注入する毒の量にはバラツキがありますが、多い場合には1〜2mL出す場合もあるため場合によっては1回噛まれただけで致死量を注入される危険性もあります。
マウスに対する最小致死量(MLD)は60〜75μgという研究結果もあります。
噛まれた時の対処法
もしも噛まれてしまったときは冷静に対応することが重要です。
- まず、慌てずに、ハブかどうかを確かめます。ヘビの種類が分からなくても、ハブなら牙のあとが普通2本(1本あるいは3,4本の時も)あり、数分で腫れてきてすごく痛みます。
- 大声で助けを呼び、すぐに医療機関へ受診しましょう。走ると毒の回りが早くなるので、車で病院に運んでもらうか、ゆっくり歩いて行くようにしましょう。
- 病院まで時間がかかる場合は、包帯やネクタイなど、帯状の幅の広い布で、指が1本通る程度にゆるく縛ります。血の流れを減らす程度にゆるく縛り、15分に1回はゆるめましょう。決して細いヒモなどで強く縛ってはいけません。恐怖心から強く縛ると血流が止まり、逆効果になることもあります。
引用:https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/seikatsueisei/yakumu/habu.html
噛まれてしまうと冷静に対処できない可能性もあるため、林や藪の中などハブがいそうな場所に入るときにはひとりでは行動しないようにしましょう。
噛まれないようにするには?
ハブは夜行性なので夜中に活発に動きます。道路に出てきたりすることもあるので攻撃範囲の1.5m以内に近づかないように夜歩くときは懐中電灯などで周囲を明るく照らすようにしましょう。
ハブは飛び掛かってきたり毒液を飛ばしたりすることはないため、近づかなければ毒を注入されるリスクを大きく下げることができます。
日中は穴の中や石垣の隙間などにいることが多く、畑や墓地などで噛まれることが多いので注意しましょう。
ネズミを追って住居近くにも出没することがあるため、環境を整えておくことも重要です。
1.隠れ場所をなくす
- 石積みなどの穴を埋める。
- 不要な木材、産業廃棄物などは野積みせず片付ける。
2.侵入を防ぐ
- 屋敷や畑の周りをナイロン網のフェンスで囲む。
- 家の周りを高さ150cm以上の塀で囲む。
3.ゴミなどを放置しない
- ハブの餌となるネズミやビーチャーが集まらないようにする。
4.空き地の適正管理
- 空き地やお墓などを所有、または管理をしている方は、雑草が伸びすぎないように、こまめに草刈りや清掃をお願いします。
引用:https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/seikatsueisei/yakumu/habu.html
【新発見】ハブの毒がアルツハイマー病治療の開発につながる!?
2023年8月に東北大学と東京大学のチームはハブ毒から精製したたんぱく質分解酵素がアルツハイマー病の原因物質と考えられている「アミロイドβ」の生産を抑制し、さらには無毒なたんぱく質に分解することを発見したと発表しました。
アルツハイマー病の原因は、脳内でつくられるアミロイドβが出す毒素が脳内の神経細胞を死滅させると考えられています。通常のアミロイドβであれば、脳内にある分解酵素で分解できるのですが、アミロイドβが結合してできた異常なアミロイドβを分解することはできません。さらに脳内に蓄積して毒素を出し続けることで徐々に進行していきます。
実験ではアミロイドβを生産する培養細胞に、ハブ毒から精製したたんぱく質分解酵素を入れたところ、アミロイドβの生産量が大幅に減少することが分かりました。さらにこの酵素にアミロイドβをつなげることで無毒なたんぱく質に分解できることも発見しました。
今後さらに研究が続けられることでアルツハイマー病の治療法開発に貢献できると期待されています。
まとめ
ハブは国内最大級の体長2.4m超え、3kg程度になる個体も出る大きさです。南西諸島に飛び石状に分布している日本固有種で強力な毒を持っている特徴があります。
以前は年間数百件の咬傷事故が発生し、血清開発後も死者が出ていましたが、近年では死者も出ておらず咬傷事故数も数十件にとどまっています。
毒はマムシよりも弱いですが、毒の量は10倍以上とめちゃくちゃ量が多いのでマムシよりも重症になることも少なくありません。
夜行性のため、夜中や日中の木陰、畑や公園にも出没するため1.5m以内に近づかないようにしましょう。
ハブ毒から精製したたんぱく質分解酵素はアルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ」の生産を抑制、分解することが発見され、2023年8月に発表されました。今後の開発に期待が寄せられています。
ちなみに、ハブ毒はアルコールで無毒化されるので毒を心配する必要はありません。
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