地中の巣に注意!?国内最大最強のオオスズメバチが持つ毒が恐ろしすぎる

地上の生き物

オオスズメバチとは?

オオスズメバチ(学名: Vespa mandarinia)は、スズメバチ科スズメバチ属に分類されるハチの一種で、日本に生息するハチの中でも最大の大きさとなるハチとして知られています。
女王バチは体長が40〜55mm、働きバチでも27〜40mmにも達し、日本でもなじみ深いミツバチの働きバチの大きさが12~14mm程度であることを考えると非常に大型であることが分かります。

Photograph by Timur Kalininsky

非常に攻撃的な性格をしていて、巣に近づく者や自分たちを刺激する者に対して躊躇なく攻撃を仕掛けてくるだけでなく、巣の防衛本能が非常に強いため集団で相手を攻撃することもあります。

その大きさや獰猛な性格、そして強力な毒性から「日本最強のハチ」と称されることもあります。
頭部はオレンジ色、胸部は黒色、腹部は黒とオレンジ色の鮮やかな縞模様となっていて、鳥など昆虫を捕食する相手に毒を持つことを知らせるため警戒色をしています。
ただし、そんなオオスズメバチにも天敵は存在しており、クマやハチクマ(タカの一種)、オニヤンマ、カマキリなどはオオスズメバチを捕食します。

ハチクマ

オオスズメバチの生活

オオスズメバチは社会性昆虫として知られ、女王バチを中心に働きバチ、オスバチからなるコロニー(巣)を形成して生活します。
春になり冬眠から目覚めた女王バチは単独で巣を作り始め、産卵・育児を行います。夏にかけて働きバチが羽化し始めると、巣を拡大しながら幼虫の餌を確保するために活発に活動します。
秋になると新女王バチとオスバチが羽化し、交尾を行った後、新女王バチは冬眠に入り、それ以外のハチは死滅するという一年周期の生活環を送ります。
そのため、餌を特に求める夏から秋にかけては特に注意が必要となります。夏休みで自然を満喫する際にはオオスズメバチの生活圏になるべく立ち入らないようにしましょう。
主な食料源は、他の昆虫(カマキリ、バッタ、セミ、小型のハチなど)や、樹液、果実ですが、肉食性が強いためアシナガバチやミツバチなどの巣を襲って幼虫や蛹を捕食することもあります。
特にニホンミツバチにとっては天敵であり、集団でミツバチの巣を襲撃し壊滅的な被害を与えることがあります。

分布・生息環境

オオスズメバチは、朝鮮半島や中国、インドなど東アジアに広く分布しています。日本においては北海道から九州、対馬、屋久島など、日本列島のほぼ全域に生息していますが、沖縄本島やその周辺の島々には生息していません。
主に低山地から山地の森林や里山に生息していて、平地でも見られることがありますが、より自然豊かな環境を好む傾向があります。

Photograph by リバー

巣は主に土中に作られますが、木の根元、朽ちた木の洞、時には家屋の床下や屋根裏、洞窟などに作られることもあります。

巣の出入り口は地面に開いた穴や、木の根元の隙間などになっていることが多いため、巣の場所が分かりにくく、いつの間にか巣の近くに近づいてしまう、駆除がなかなか進まないといった影響があります。
都市部での目撃例は比較的少ないものの、活動範囲が広くて餌を求めて広範囲を飛び回るため、郊外や緑の多い公園などでは見かけることがあります。

海外への影響

オオスズメバチは、その原産地であるアジア圏以外にも、近年、侵略的外来種として拡散し、海外の生態系や養蜂業に深刻な影響を与えています。特に注目すべきは、北米太平洋岸への侵入です。

北米への侵入

2019年、カナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバー島で、初めてオオスズメバチの個体と巣が確認されました。その後、2020年にはアメリカ合衆国のワシントン州でも確認され、「キラーホーネット(Murder Hornet)」として広く報道され、大きな懸念を引き起こしました。
これらの侵入経路は、貨物船などに紛れ込んで運ばれた可能性が指摘されていますが、具体的な経緯は明確には特定されていません。

生態系への影響

北米にはオオスズメバチの天敵がほとんど存在しないため、来の昆虫類を捕食することで生態系のバランスを崩す可能性があります。

養蜂業への甚大な被害

ニホンミツバチ

北米の養蜂業にとって、オオスズメバチの侵入は壊滅的な脅威となっており、セイヨウミツバチの巣を襲撃し30分程度と非常に短時間で巣全体を壊滅させ、ミツバチの幼虫や蛹を餌として持ち去ってしまいます。

日本のニホンミツバチは、集団でオオスズメバチを取り囲み、筋肉の振動によって熱死させるという独自の防御機構を持っていますが、北米に生息するセイヨウミツバチはこのような防御機構を持っておらず脅威となります。

防除への取り組み

北米では、オオスズメバチの定着と拡散を防ぐため、トラップの設置、巣の探索と駆除、市民への情報提供と協力呼びかけなど、大規模な防除活動が展開されています。

その結果、根絶は困難を伴うことが予想されていましたが2024年12月18日にワシントン州農業局と米農務省がオオスズメバチの米国からの根絶に成功したと発表しました。

オオスズメバチの毒

オオスズメバチの毒は非常に強力で、その量も多いため、刺されると重篤な症状を引き起こします。以下にオオスズメバチが持っている主な有毒成分を紹介します。

主な成分と効果

オオスズメバチは特に様々な有毒成分を含んでいます。その中の一部の作用について紹介します。

低分子化合物(アミン類、キニン類など):

ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリン、キニン類といった成分が含まれており、刺された直後の激しい痛み、腫れ、発赤、痒みといった炎症反応や神経刺激に関与します。

特に、アセチルコリンは神経伝達物質であり、強い痛みを引き起こす要因の一つとされています。これらの成分は、速やかに痛みや炎症反応を誘発することで、捕食者に対する警告や忌避行動を促す役割を果たすと考えられています。

低分子ペプチド

スズメバチ毒に含まれる低分子ペプチドは、細胞膜を破壊したり、炎症反応を増強したりする様々な作用を持つことが知られています。

その中にはマスト細胞脱顆粒ペプチド(Mastoparanなど)の成分が含まれており、これらはアレルギー反応を増強し、血管から水分が漏れ出すことによる腫れや、平滑筋の収縮(気管支収縮による呼吸困難など)を引き起こす可能性があります。

酵素類

オオスズメバチの毒液には、生体組織を分解したり、生理機能を変化させたりする様々な酵素が含まれています。

その中のホスホリパーゼA1(Phospholipase A1)は細胞膜を破壊し、細胞の損傷を引き起こすことで、炎症反応を増強し、組織破壊に寄与します。また、アラキドン酸経路を活性化させ、炎症性物質の産生を促進する作用もあります。

また、ヒアルロニダーゼ(Hyaluronidase)には酵素が作用することで、毒液が組織内に効率よく拡散し、毒の効果が広範囲に及ぶことを助けます。

非酵素タンパク(マンダラトキシン:Mandaratoxin)

マンダラトキシンは、オオスズメバチの毒に特有の強力な神経毒性タンパク質であると考えられています。

この成分の中には神経伝達阻害作用があり、筋肉の麻痺、呼吸困難、心臓機能の異常といった重篤な症状を引き起こすと考えられています。大量に注入された場合に、呼吸中枢の麻痺などによって死に至る原因となりうると考えられています。

毒の量と症状

オオスズメバチは、その体格に見合うだけの大量の毒液を注入することができるだけでなく、毒針は返しがないため何度も刺すことができるため、1匹あたりが注入できる毒の量が非常に多く、重篤な状態に陥るリスクが高まります。

オオスズメバチに刺された場合の症状は、主に以下の二つのタイプに分けられます。

  • 局所症状・全身症状(非アレルギー性):
    • 激しい痛み: 刺された瞬間に電撃が走るような激しい痛みが生じます。
    • 腫れと発赤: 刺された部位を中心に、広範囲にわたって腫れ上がり赤くなります。
    • 発熱、倦怠感、頭痛、吐き気、嘔吐: 注入された毒の量が多い場合や、体質によってはアレルギー反応がなくてもこれらの全身症状が現れることがあります。
  • アナフィラキシーショック(アレルギー性):
    • 過去にハチに刺された経験がある人が、再度刺された場合に発症する可能性のある、生命を脅かす重篤な全身性アレルギー反応です。
    • じんましん、全身の痒み、顔面や口唇の腫れ(血管性浮腫)、喉の違和感、呼吸困難(喘鳴、息苦しさ)、血圧低下、めまい、意識消失、ショック症状などが急速に進行します。
    • 数分から数十分以内に発症し、適切な処置が遅れると死に至る危険性が非常に高い状態です。
オオスズメバチの毒はその物理的な痛みだけでなく、アレルギー反応を引き起こすリスクも高いため非常に危険です。

もしも刺されてしまったら?

手洗い
もしもオオスズメバチに刺されてしまった場合は、迅速かつ適切な対処が非常に重要です。
  1. その場からすぐに離れる:
    • ハチは毒液に特定のニオイ成分(集合フェロモン)が含まれており、仲間を呼び寄せる習性があります。刺されたら、すぐにその場から20メートル以上離れましょう。
    • 手でハチを払ったり、大きな声を出したりすると、ハチを刺激してさらに攻撃される可能性があるため、頭を抱えるようにして姿勢を低くし、静かに後ずさりしながら速やかにその場を離れましょう。
  2. 毒針を除去する:
    • オオスズメバチの針には返しがないため、体内に残ることは少ないですが、もし残っているようであれば、ピンセットなどで速やかに抜き取りましょう。無理に毒嚢を圧迫すると、かえって毒液が注入される可能性があります。
  3. 刺された部位を洗浄する:
    • 流水で刺された部位をよく洗い流しましょう。これにより、毒液を薄め、患部を清潔に保つことができます。
  4. 冷やす:
    • 冷たいタオルや氷嚢などで刺された部位を冷やしましょう。これにより、痛みや腫れを軽減することができます。
  5. 抗ヒスタミン剤・ステロイド外用薬を塗る:
    • 市販の虫刺され薬(抗ヒスタミン剤やステロイド成分を含むもの)を塗ると、痒みや炎症を抑えるのに役立ちます。
  6. 全身症状に注意し、医療機関を受診する:
    • 最も重要です。 刺されてから数分〜数十分以内に、呼吸困難、全身のじんましん、唇や顔の腫れ、めまい、意識消失、血圧低下などのアナフィラキシーショックの症状が現れた場合は、ためらわずに救急車を呼び、直ちに医療機関を受診してください。
    • 過去にハチに刺されたことがある人は、特にアナフィラキシーショックを起こすリスクが高いため、症状の有無にかかわらず、念のため医療機関を受診することが重要です。
    • 症状が軽度であっても、数カ所刺された場合や、体調がすぐれない場合は、念のため医師の診察を受けましょう。

ハチに遭遇しないために

  • 不用意に藪や木の近くに近づかない。
  • 香水やヘアスプレー、黒い服など、ハチを刺激する可能性のあるものを避ける。
  • ジュースの空き缶や食べ残しなどを放置しない。
  • ハチの巣を見つけたら、近づかずに専門業者や自治体に連絡する。

まとめ

オオスズメバチは日本最大級のハチであり、その体格と攻撃的な性格と強力な毒性から「日本最強のハチ」と呼ばれます。
土中などに巣を作り、主に他の昆虫を捕食して生活する一方でミツバチの天敵でもあります。近年、北米へ侵入し「キラーホーネット」として養蜂業や生態系に甚大な被害を与えてきました。
オオスズメバチの毒は、激しい痛みや腫れを引き起こすだけでなく、アナフィラキシーショックという重篤なアレルギー反応を誘発し、命に関わる危険性があります。
もし刺されてしまった場合は、すぐにその場を離れて患部を洗い流し、冷やしながら全身症状が現れたら迷わず医療機関を受診することが極めて重要です。その危険性を理解し、適切な予防策を講じることが大切です。

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