トマトとは?
ナス科ナス属に属する緑黄色野菜の一つで、世界には1万品種があるとされ、日本にも300品種以上が登録されています。
日本には様々な別称があり、唐柿(とうし)、赤茄子(あかなす)、蕃茄(ばんか)、小金瓜(こがねうり)、珊瑚樹茄子(さんごじゅなす)などがあります。
南アメリカのアンデス山脈高原が原産ですが、現在では世界各国で栽培されています。
トマトに毒が含まれていることは意外と知られていないかもしれませんが、実は毒を持ってると思われてた時期も長かった歴史があり、一時トマトは「poison apple(毒リンゴ)」と呼ばれていました。
これは、当時貴族が使っていた食器に鉛が多く含まれていたのですが、トマトの酸味(酸成分)により鉛が溶けだしたことで鉛中毒の症状が現れたためトマトに毒があると勘違いされてしまいました。
その後、鉛が原因であったことがわかりましたが、毒草である「ベラドンナ」に似ていることから引き続きトマトに毒があると信じる人が多かったそうです。
このように「トマトには毒がある」→「トマトには毒がなかった」と浸透してきましたが、実はトマトには毒性のある成分が含まれているので食べる際には注意する必要があります。
トマトの毒性
トマトにはビタミンCをはじめ、β-カロテン、カリウム、ビタミンE、ルチンなど様々な栄養価が高いため、ヨーロッパでは「トマトが赤くなると医者が青くなる」という格言があるほどなんだとか。
そんなトマトにも実は有毒成分が含まれているので紹介していきます。
毒の成分
トマトには「トマチン」という有毒成分が含まれています。弱毒ではありますが、ある程度の量を摂取してしまうと、口やのどがヒリヒリしたり、多量に摂取してしまうと嘔吐や腹痛など食中毒に似た症状が1時間以内に一時的に現れます。
人間を死に至らせるにはかなりの量が必要になるため、あまり心配しなくても大丈夫ですが、小動物などは死に至ってしまう可能性もあります。
さらに、このトマチンは加熱したり加工したりしても含有量はほとんど変わらないことが研究の結果わかっています。つまり、ケチャップやトマトジュースにしてもトマチンは含まれているということになります。
ここまで聞くと「トマトは食べないほうがいいかも!」と思ってしまう方もいるかと思いますが、どこに毒があるのかきちんと知っていれば心配する必要は全くありません。
ちなみに、トマチンには殺菌作用もあるため微生物にとって厄介な成分でもありますが、一部の微生物はトマチンの殺菌作用をなくす「トマチナーゼ」という酵素を生成する種類もいます。
致死量
トマチンのマウスに対する致死量(LD50)は32mg/kgです。そのため、体重60㎏の人に換算すると1,920mg(1.92g)の量になります。
それではトマトにはどの程度の量がトマチンに含まれているかというと、完熟トマトには1kgあたりなんとたったの0.4mgしか入っていません。つまり完熟トマトを食べて致死量のトマチンを摂取するには、約4,800kg(約4.8トン)ものトマトを食べないといけないため、何も心配する必要ありません。
しかし、ここで注意しないといけないことがあります。それは完熟トマト以外には多量のトマチンが含まれており、花、葉、茎、未熟なトマトの順にトマチンが多いことです。
量は以下の通りで、葉や茎は食べないにしても、ヘタの部分や未熟な果実を食べてしまうと中毒症状が出る可能性もあります。
部位 | トマチン含有量[mg/kg] | 致死量(60kgのヒト) |
花 | 1,100 | 1.75kg |
葉 | 975 | 1.97kg |
茎 | 896 | 2.14kg |
未熟果実 | 465 | 4.13kg |
熟した青い果実 | 48 | 40kg |
完熟果実 | 0.4 | 4,800kg |
実際の中毒事例
トマトは低温環境で育つと通常よりもトマチンを多く生成すると言われており、2023年に韓国でミニトマトを食べた人に相次いで中毒症状が現れた事例も発生しています。
そのミニトマトを分析したところ通常よりも高濃度のトマチンが検出されたことから、トマチンが原因だと結論付けられています。
トマチンは苦みが強い成分でもあるため、トマトを食べたときに苦みを感じた場合は食べないようにすれば中毒のリスクも減らすことができるので覚えておきましょう。
もしも食べてしまったら?
もしも未熟で苦みのあるトマトを食べてしまっても量が少なければ心配する必要はあまりありません。
トマチンは弱毒性であり、中毒症状が出ても重症化するリスクが低く、比較的素早く回復するため緊急性は低いとされています。
一方で食べすぎたり、症状が重そうな場合には近くの病院に訪問して治療を受けるようにしましょう。ちなみに、中毒症状が起きたときに嘔吐抑制剤や下痢止めなどはあえて飲まずにトマチンを体外に出すようにするよう、呼びかけられています。
まとめ
トマトにはトマチンという有毒成分が含まれていますが、完熟トマトにはほとんど入っておらず、致死量を摂取するためには数トンものトマトを食べないといけないので心配する必要はほとんどありません。
ただし、花、葉、茎、未熟だったり青いトマトにはトマチンが多く含まれているので、トマトを食べるときはきちんとヘタを取り除いて完熟トマトのみを食べるようにしましょう。
コメント