実は毒を持っている日本でもお馴染みの益虫 ナナホシテントウ

菜の花にくっつくナナホシテントウ 地上の生き物

ナナホシテントウとは?

花先に乗るナナホシテントウ

コウチュウ目テントウムシ科のてんとう虫です。体長は5〜9mm程度で円に近い楕円形をしています。

派手な赤い鞘翅に、名前の由来になっている七つの黒い斑紋がある非常に特徴的な見た目をしています。日本でもなじみ深く、よく見られるてんとう虫の一種です。

羽化直後のナナホシテントウ

Photograph by Eran Finkle

基本的には赤色ですが、羽化したては黄色い色をしています。また、中には羽化直後でなくとも黄色っぽい見た目のナナホシテントウもいます。

変異個体を除けば7つの斑紋は安定して同じ場所に現れるので簡単に見分けることができます。ちなみに、日本産は斑紋が大きくて、ヨーロッパ産は斑紋が小さい傾向にあります。

孵化から羽化までは20日程度で、成虫の寿命は活動期間で約2ヶ月となっています。「活動期間で」というのは寒い冬や暑い夏では休眠状態に入ってしまい活動しなくなるからです。
ナナホシテントウは二化性といって1年間で2世代生まれるという特徴があります。つまり、春頃に生まれた成虫が夏前に卵を産んで、そこから成長した成虫が今度は秋口に卵を産みます。

そしてその卵から成長した個体が今度は春頃に卵を産むというのを繰り返しているわけです。そのため、秋口に生まれたら冬眠し、春過ぎに生まれたら夏眠するという面白い性質があります。

ちなみに、休眠に入る際はススキの株をよく使うということもわかっています。

食性

いらすとやのナナホシテントウとアブラムシ

ナナホシテントウはアブラムシが大好物

てんとう虫には他の昆虫などを食べる肉食性と、植物を食べる草食性、うどんこ病菌などを食べる菌食性の3種類がいます。ナナホシテントウは肉食性で、野菜などを食べてしまう害虫「アブラムシ」を積極的に食べてくれるので益虫とされています。

逆に草食性のマダラテントウ亜科のてんとう虫は野菜などを食べてしまうため害虫として扱われています。

分布

日本には北海道から本州、四国九州、南西諸島、小笠原諸島と全土に分布しています。

また、世界にもユーラシア大陸ほぼ全域とその近隣諸島、アフリカ北部に生息しています。

農作物に被害を与えるアブラムシを駆除するため、日本から欧米に人工移入されています。

日当たりのいい場所を好むため、草原や畑周辺などでよく見かけることができます。

ちなみに、日本で非常に馴染み深い昆虫の一種ですが、日本のてんとう虫では、ナナホシテントウよりもナミテントウの方が個体数が多いと考えられています。

持っている毒

掌で死んだふりをして毒を出すナナホシテントウ

ナナホシテントウは天敵に狙われたりすると死んだふりをして襲われないようにします。ただそれだけだと構わず食べられてしまう可能性もあるので、毒液を分泌して天敵に食べられないように頑張ります。

持っている毒はコシネリンという成分で、独特な匂いを発するだけでなく、味も苦いため、天敵にとっては全く美味しくない獲物となるわけです。

ただ、毒性自体が強いわけではないため、食べた獲物を死に至らしめたりするようなことはありません。

あくまで獲物に食べられないように自分が不味くなるような毒を持っているということです。そのため、もし天敵となる鳥などがこの毒を持つてんとう虫を食べた場合には、あまりの不味さに二度とてんとう虫を食べることがなくなるとされています。

ちなみに、この毒がワインの原料になるブドウに大量につくと味が苦くなってしまいます。この現象は「テントウムシ汚染」といわれています。

天敵がたくさんいるのに目立って大丈夫?

ナナホシテントウは自然界でもかなり目立つ見た目をしています。昆虫を食べる鳥や爬虫類、両生類などから見れば一目瞭然の格好の的になってしまいます。

ではなぜこのような見た目をしているかというと「警告色」といって、私には毒があるので食べない方がいいですよ〜と外敵に伝えるために、あえて目立つ見た目に進化してきました。

この見た目であれば「二度とてんとう虫は食べない」と心に誓った生き物も覚えやすくていいですよね。

ちなみに、同じように警告色を持つ身近な生き物だと「アカハライモリ」「ヒョウモンダコ」、有名な生き物だと「ヤドクガエル」などがいます。

黄色い毒液の正体

黄色い血液を出すナナホシテントウ

Photograph by Chris Schuster

皆さんも経験あるかもしれませんが、てんとう虫を捕まえると黄色くて臭い液体をつけられたことがあると思います。

あの液体がコシネリンを含む毒液なのですが、実はあの液体はナナホシテントウの血液なんです!

身の危険を感じると血圧をあげて関節にある薄い膜から毒入りの血液を出すことで身を守っています。

面白い餌の探し方

花に乗るアブラムシ

ナナホシテントウは獲物となるアブラムシを効率よく見つけるため、「広域型」「地域集中型」の2つの探索行動を使い分けて探します。

広域型は餌となるアブラムシが見つかるまでひたすらまっすぐ進んで、広い範囲を探索するような行動をとります。

もし探索先でアブラムシを見つけると、今度は「地域集中型」に変わります。地域集中型ではアブラムシを見つけた場所の近辺をくまなく探索するようになり、アブラムシを見つけるとそのまま地域集中型の行動を続けます。

一定期間アブラムシが見つからないと「広域型」に戻り、また広い範囲を直線的に移動してアブラムシを探すことになります。

ナナホシテントウはアブラムシ以外を食べることもありますが基本的にはアブラムシを主に食べ、アブラムシの有無でのみ「広域型」と「地域集中型」が切り替わります。この時、アブラムシを食べずとも見つけただけで切り替わります。

このような行動をするようになった背景として、アブラムシは雌親がいる場所で単為生殖を行うため、近い場所で集中的に増殖して個体数が増えていく特徴があるためと考えられています。

まとめ

ナナホシテントウはコウチュウ目テントウムシ科に属する1cm弱のてんとう虫で、日本全土と世界各国に分布しています。アブラムシを食べてくれる益虫ですが、血液中にコシネリンと呼ばれる毒が含まれているので独特な嫌な臭いを発して味も苦くなっていて、天敵に襲われると擬死しながら毒液(血液)を出して身をまります。

鳥などはもし一度でも食べてしまうと、あまりの不味さにトラウマを植え付けられ二度とてんとう虫を食べなくなると言われています。ちなみに赤くて目立つ見た目は警告色といって、毒を持っていることをアピールしています。

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