マダラサソリとは?
Photograph by Ythier E
サソリ目ウシコロシサソリ科のサソリで別名マダラナミハカリサソリとも呼ばれます。
体長は5cm程度、大きい個体だと8cm程度にもなる中型のサソリで、オスとメスで特徴の違いが少しあり、オスは後腹部と触肢が長く、メスよりも大きくなります。
黄色っぽい体色は黒色の斑模様があることが名前の由来になっています。
分布
マダラサソリは八重山諸島と小笠原諸島の一部に生息しています。日本以外にも世界中の熱帯や温帯地域に広く分布していて日本にも自然に移入して繁殖したと考えられています。
マダラサソリの属するウシコロシサソリ科は別名キョクトウサソリ科とも呼ばれていますが、名前とは裏腹に極東地域以外にも分布しています。
通常は樹皮や倒木、石の下などに潜んでいますが家屋に浸入することもよくあります。
マダラサソリは特定外来種!?
日本に定着してしまった外来種
マダラサソリは人の手を介さずに古くから日本にも生息していて、人の手を介さずに自然に分布を広げてきたサソリなので在来種なのですが、残念ながら特定外来生物に指定されているので、飼育、販売、運搬などは禁止されてしまっています。
それではなぜ在来種であるはずのマダラサソリが特定外来生物に指定されているのでしょうか?
まず、マダラサソリが属するウシコロシサソリ科(キョクトウサソリ科)はサソリの分類の中でも最も大きな科で、2022年現在96属、840種ものサソリが含まれています。
その中には毒性が弱く刺されても重篤な症状の出ない種もいれば、非常に毒性が強く人間の命も奪ってしまうような超危険なサソリもいます。
ただ、厄介なことに見た目で何というサソリなのか判断することが難しいことも多く、危険なサソリなのか危険でないサソリなのか判断できないことがあります。そのため、種類ごとに規制することも難しいという問題があります。
そんな中、ある事件が起きてしまいました。「イエローファットテールスコーピオン脱走事件」です。
イエローファットテールスコーピオン
分類
サソリ目ウシコロシサソリ科(キョクトウサソリ科)
毒の種類
ヘモトキシンなどを含む混合毒(神経毒、心毒素、筋毒)
致死量
LD50:0.32 mg/kg
イエローファットテールスコーピオン
2003年10月岡山市内のアパートからこの超猛毒サソリが脱走してしまうという事件が起き、地域住民のみならず報道により全国的にペットとして飼育されているサソリへの不安が募りました。
これがきっかけの一つとなったと言われていますが、ウシコロシサソリ科に属する全てサソリ(もちろんマダラサソリも含まれます)が「人の生命・身体に被害を及ぼすおそれがある」という理由から特定外来生物に指定されました。
マダラサソリの毒性
マダラサソリの持っている毒はヒトを含む哺乳類に対しては非常に弱く、もし刺されてしまったとしても赤く腫れて、多少の痛みや不快感が出る場合もありますが、なんの症状も現れないこともあるくらいです。
もしも症状が出てしまったとしても数時間以内には症状も収まり、後遺症なども全くないため治療を要した事例もありません。
ヒトが刺されてしまうといった事例もあまりなく、自ら刺されに行かないと刺さらないくらいの毒針の強さです。
昆虫に対しては絶大な効果がある?
マダラサソリの毒に含まれている成分のうち、数種類の毒素が同定されていますが、その中の3種類は強い殺虫作用があることが分かっています。
つまり、哺乳類に対してはあまり効果がない毒ですが、昆虫に対しては絶大な効果があるため獲物を捕らえることに役立っていると考えられています。
サソリは毒を活用する目的として、獲物を簡単に捕らえるために毒を使うことと、天敵から身を守るため天敵に対して有効な毒をもつことの2つに分けられますが、マダラサソリは獲物を捕らえるための毒を身につけたサソリと言えます。
まとめ
マダラサソリはウシコロシサソリ科(キョクトウサソリ科)に属する南西諸島や小笠原諸島の一部に生息するサソリです。
毒は哺乳類に対しては弱いですが、昆虫に対して特異的に作用するため捕食するのに役立っています。
ウシコロシサソリ科はサソリの科の中でも大きなまとまりで1000種近いサソリが属し、毒性の強い種や弱い種など様々なサリがいます。それらの見分けがつかないほど似た種もいるため、全体を特定外来生物に指定されてしまいました。
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